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放置自動車の迅速処理等に関する提言(全国市長会)(平成19年1月12日)

 放置自動車問題対策会議(座長 土屋・大和市長)において取りまとめた本提言については、経済委員会の了承を得た後、全国会議員、国土交通省、経済産業省、環境省、総務省、警察庁の各省庁の幹部、日本自動車工業会、自動車リサイクル促進センター、日本経済団体連合会等各方面に提出しました。
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放置自動車の迅速処理等に関する提言  

平成19年1月
全 国 市 長 会
放置自動車問題対策会議

 

 放置自動車は、自動車リサイクル法の施行により減少傾向にあるものの、依然として全国の各都市で発生しており、地域の景観や市民の生活環境を損なうばかりではなく、放火やゴミの不法投棄などの二次的犯罪を誘発するなど、市民生活に著しく悪影響を及ぼしている。

 現在、放置自動車の処理は、道路法、河川法、港湾法等各法の規定に依っているが、当該車両の所有権の関係から、最低でも3ヶ月は車両をそのまま放置しなければならないなど、現行法による迅速な処理には限界がある。

 このことから一部の地方公共団体においては、公共の福祉の観点から、独自に条例を定めて対応しているが、明確な法的担保がなく現場の不安を招来している。

 そこで、本対策会議として、放置自動車にかかる問題点を整理するとともに、放置自動車の迅速かつ適切な処理が可能となるよう、速やかな法的体制の整備等の基本的な対応策について、取りまとめたものである。

Ⅰ 放置自動車の現状と問題点

① 平成17年度は、全国の都市で約2万台の放置自動車が発生している。

(平成18年9月全国市長会調査による。605市回答(回答率約75%)のうち442市で発生)

② 放置自動車の発生は、単に景観を損なうばかりではなく市民の生活環境を害し、放火や不法投棄などの二次的犯罪を誘発するなど、市民生活に悪影響を及ぼしている。

③ 現行の道路法等関係法の規定では、最低でも3ヶ月間放置しなければならず、迅速な処理が難しい。

④ 一部の地方公共団体(134市)では独自に条例を定めて対応している。しかし、放置自動車について条例による処理は、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(以下、「自転車法」という。)のような明確な法的根拠がないため、現場での不安がある。

⑤ 原因者調査・追及が円滑に進まない。

・ 放置自動車は自動車ナンバーや車体番号の確認が難しい。

・ 警察等関係機関との協力関係が整備されておらず、情報の共有ができていない。

・ 公告による原因者の判明度が低い。

⑥ 放置自動車の発生を抑制する有効な手段がなく、捨て得になっている。

⑦ 原因者不明の放置自動車の処理費用について、明確な負担システムがない。

 現在、使用済み自動車の処理費用については路上放棄車処理協力会からの寄付がなされているが、

・ 手続きが煩雑

・ 寄付の範囲が限定的(自動車の移動や保管等に要する経費は対象外)

・ やむを得ず地方公共団体が移動、保管等に要する経費を負担

という問題点がある。

Ⅱ 基本的考え方及び対応等

1.新法の制定

 現在の問題点を解決するためには、以下の事項を盛り込んだ新法の制定が必要である。

(1)法の目的

 放置自動車の迅速かつ適切な処理を行い、もって安全で快適な生活環境を保全することを法の目的とする。

(2)条例との整合性

 新法の制定にあたっては、既に一部の自治体が制定し運用している条例を妨げないようにするとともに、各都市の実情が反映できるような仕組みを十分に検討すること。

(3)放置自動車の範囲

 放置自動車とは、国、地方公共団体が管理する道路、公園等その他公共の用に供されているもの(以下「公共施設等」という。普通財産も含む。)に置かれている自動車で、道路交通法、保管場所法等違反に該当する車両、盗難車及び犯罪にかかわる車両以外のものとすること。

 なお、「公共の福祉」の観点から、公共性の高い土地に関しては、私有地についても考慮すること。

(4)放置自動車の所有者等

 放置自動車の所有者等については、自動車検査証の所有者欄に記載されている者及び同検査証の使用者欄に記載されている者とし、責任を明確化すること。

(5)禁止規定、罰則規定

① 放置自動車の発生を抑制する社会的な仕組みとして、放置の禁止規定を法に明記するとともに、規定に従わない者に対する罰則規定を設けること。この場合、放置車両の移動、保管、処理に要した費用の徴収のみならず、罰則金等についても規定すること。

② 罰則については、放置行為のみではなく、撤去命令違反に対しても規定すること。

③ 所有者等の免許更新時や自動車登録時におけるペナルティも規定すること。

(6)地方公共団体と警察等との協力

① 放置自動車及び原因者の調査等について、地方公共団体と警察等が協力して行うとともに、双方の求めに応じて情報の交換を行う体制を整備すること。中でも、地方公共団体が求めているものとしては、

・放置自動車が盗難車両、犯罪に関わったものではないかの調査

・所有者捜査

・放置されている車両のナンバー及び車体番号の調査

・駐車違反、保管場所違反になるかどうかの調査

などであり、十分に検討すること。

 また、これらの調査、捜査結果については、放置自動車の迅速処理を進める観点から、速やかにかつ簡易な手続きで地方公共団体に情報提供される仕組みを構築すること。

② 常習者については、その者の居住地、転居先等、関係自治体に車両の登録保有状況などがわかるような体制を構築すること。

(7)放置自動車の開錠

 地方公共団体が、開錠その他必要な損傷を加えなければその目的を果たしえない場合は、警察の立会いのもと、もしくは警察からの許可の上、必要最低限の範囲内でこれを行うことができるような仕組みを構築すること。また、同様に警察においても開錠できる仕組みを構築すること。

(8)撤去指導・命令等

 地方公共団体は、放置自動車の所有者等に対して撤去の指導を行い、一定期間の後も所有者がこれに従わないときは、撤去命令を発することができるようにすること。

 ただし、所有者が判明した車両については、違法駐車(青空駐車)として、警察署が撤去指導するべきとの意見もあり、一方で一定期間を経過すれば、放置車両を撤去できるようにするべきという意見もあり、新法の制定にあたっては実情を踏まえた検討をすること。

(9)移動・保管

 地方公共団体が放置自動車を移動・保管する場合の基準について定めること。

(10)判定基準、処理、売却等

 地方公共団体は、移動・保管した放置自動車及び道路上において現認し必要な手続きを行った道路上の放置自動車について、一定の期間を経過したものについては、使用済み自動車とするかまたは売却することが可能とすること。

① 使用済み自動車については、政令等において明確な判定基準を示すこと。

・ 外形的な状態、もしくは一定の期間を経過したもの等とする。

・ 判定にあたっては、廃物認定委員会の開催は不要とする。

② 「売却」については、自転車法、改正遺失物法の援用により、新法の中に、所有権を残したまま条例の定めるところによりこれを行うことができるように規定するとともに、さらに一定期間経過後は所有権も地方公共団体に帰属するものとすること。

 また、放置自動車の迅速処理に統一的な対応を図る観点から、道路法、河川法等に規定されている「売却」に関して、包括的な新法として整備することも検討すること。

(11)その他

・ 生産者、販売者の責任において放置自動車を引き取り、処分することも検討すること。

・ 放置自動車が車検切れの車両である場合は、即時に所有権が失効する規定を設けることも検討すること。

・ 駐車禁止の取締まりとの公平の原則から、放置自動車の定義においても、何日以上放置すれば該当するか等について検討すること。

・ 中には、中古車と称して輸出を目的として短期間、道路上にストックしている場合もあることから、古物商の事業法等の取締りができるようにすることも検討すること。

2.簡易代執行の厳格な適用

 新法を制定する以外に、道路法等関係各法に規定されている簡易代執行の適用を徹底することも必要である。その場合、法の趣旨に沿って、それぞれの管理者が毅然として執行することが基本である。

3.制度の運用の改善、関係法令の整備及びシステムの構築について

(1)路上放棄車処理協力会への改善要請

 路上放棄車処理協力会に対して、当面、次のように運用改善を求める。国からも適切な指導を行うこと。

① 市町村が行う路上放棄車の処理に対する寄付について、車両の移動・保管・開錠に要する経費まで対象の拡大を図ること。

② 寄付の納付先については、地方公共団体を通さずに、自動車の処理に係るものについては資金管理団体に、移動及び保管に係るものについては引取業者にそれぞれ直入するように改め、手続きを簡略化すること。なお、全国的に統一したシステムとし、放置自動車の処理に関する契約に問題が生じないようにすること。

③ 引取業者については路上放棄車処理協力会が指定し、市町村に通知すること。

(2)特定再資源化預託金による多様な支援制度の創設

 自動車リサイクル法に基づく特定再資源化預託金については、放置自動車の処理(移動・保管・開錠の費用も含む)費用、放置自動車発生の未然防止対策に要した費用に対する助成等、使途について柔軟に考え、市町村を対象とした多様な支援制度を創設すること。

 また、支援制度については、市町村への周知を図ること。

 なお、特定再資源化預託金の使途が放置自動車の処理に充てられるシステムが構築された後は、路上放棄車処理協力会からの寄付は終息するものとする。

(3)所有者の変更義務の徹底

 放置自動車の責任の所在が明確になるよう、所有者の変更義務の徹底を図ること。

 具体的には、自動車の譲渡が行われる場合、現行では譲渡者が譲受人に「譲渡証明書」を交付する義務があるが、これと同様に、譲受人から譲渡人への「譲受証明書」の交付を義務付けること。「譲受証明書」を提示できなければ名義人(所有者または使用者)に責任が確定するシステムとすること。

(4)自動車の個体確認システムの構築

 生産者、販売者、業界団体は、車体番号等車体の個体確認が容易に確認できるシステムを構築(マイクロチップ埋設など)すること。これらにより、車体番号の確認手段と所有者変更義務の徹底による名義人特定が容易にできる環境を整備すること。

 また、輸入車については、シリアル番号等により確認が可能なシステムの構築も行うこと。

(5)原因者を確定できるシステムの構築

 陸運局に登録する時に、ナンバーだけではなく車体番号の登録も行うようにし、必要に応じて所有者の照会が可能なシステムを構築すること。