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厚生労働省・医療制度構造改革試案について(全国市長会、全国町村会、国民健康保険中央会)(平成17年10月26日)

平成17年10月26日、全国市長会、全国町村会及び国民健康保険中央会は、厚生労働省・医療制度構造改革試案に対して、共同で意見を表明した。
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厚生労働省・医療制度構造改革試案について

平成17年10月26日
全  国  市  長  会
全  国  町  村  会
国民健康保険中央会

 全国市長会、全国町村会及び国民健康保険中央会は、従来から、国民皆保険制度を堅持し、我が国社会の安定を確保するためには、公的医療保険制度を一本化し、国民全体の給付と負担の公平を図るべきであると主張してきた。
 こうした中、今般、厚生労働省は「医療制度構造改革試案」を公表したが、同試案は、国保制度が抱える構造的問題を解決する視点から見て極めて不十分である。
 本年末に取りまとめられる予定の政府案においては、次の事項に十分留意し、国民が安心できる医療制度改革を図られたい。

1.医療保険制度の基本的方向について
 国保は、加入者の平均年齢が高く、かつ、所得が低いといった構造的な問題を抱え、このため、医療保険制度間において保険料負担に大きな格差・不公平が生じており、これを解決するには国保と被用者保険との一本化が必要である。
 平成15年3月の基本方針に明記されていた「医療保険制度を通じた給付の平等、負担の公平を図り、医療保険制度の一元化を目指す」が、試案では削除されているが、政府案においては、この基本原則を明示し、また、今後の一本化へ向けた道筋を明確に示すこと。

2.都道府県単位を基本とした保険者の再編・統合について
 政管健保と健保組合については都道府県単位を軸として運営する方針が明確に示され、国保保険者については、高額医療費共同事業の拡充が示されているが、都道府県単位を軸とした再編・統合を推進する観点から、その位置付けを明確にするとともに、早急に具体的な内容を明らかにすること。

3.国保財政基盤の確立について
 国保の財政運営は、平成15年度の決算においては、一般会計から1兆円を超える法定内及び法定外繰入れを行っているが、単年度実質収支は巨額な赤字を抱えている。
 このような状況にもかかわらず、試案では低所得者や高齢者が多いといった国保が抱える構造的問題に対する財政対策が明記されていない。
 現行の財政支援措置である保険基盤安定制度・財政安定化支援事業・高額医療費共同事業等を拡充強化するとともに、国保の財政基盤を確立するべく、抜本的な財政措置を講ずること。

4.高齢者医療制度について
(1) 後期高齢者医療制度について
① 試案において、医療保険制度の保険者については、都道府県単位を軸とした再編・統合を推進するとしているにもかかわらず、後期高齢者医療制度の運営主体を市町村とすることは、その方向性に逆行するものである。
 国保と介護保険の両保険者として極めて厳しい財政運営を強いられている市町村が、後期高齢者医療制度の具体的な内容が明らかでなく、将来にわたる市町村への財政影響がはっきりしない制度の運営主体を担うことは到底容認できない。
 仮に、被保険者に係る適用・保険料徴収の事務や健康づくり事業は市町村が協力するとしても、高齢化の進展に伴って医療費が増大する中で、安定的な制度運営のため、後期高齢者医療制度については、国等を運営主体とし、全国一本の制度として構築すること。

② 国保・被用者保険の各医療保険者からの支援金については、国保と被用者保険の間で加入者の年齢構成及び所得に大きな格差があることにかんがみ、負担の公平性を保つため、加入者数のみによるのではなく、所得格差を十分勘案すること。

(2) 前期高齢者医療制度について
 財政調整については、前記(1)②と同様、所得格差を十分勘案すること。
 また、医療費は55歳前後から高くなる傾向にあることから、負担の公平化を図るため、対象年齢を引き下げ、財政調整の幅を広げること。
 さらに、経過的措置となっている退職者医療制度を恒久的措置とすること。

5.医療費適正化対策の推進について
 生活習慣病対策を通じた医療費の適正化については、かねてから国保関係者が糖尿病予防対策をはじめとした生活習慣病対策を推進しているところでもあり、評価できる。
 しかしながら、根本的な解決策を示すことなく、計画の立案や目標値の達成などについて、地方の責任のもとに推進しようとしている。国は、地方が行う対策について、その役割が果たせるよう十分な法的、財政的な裏付けを講ずること。

6.医療制度改革に係る情報の開示について
 試案の基礎となっている数値の根拠、保険者・市町村に関する財政試算等、各種情報を幅広く、積極的に開示すること。