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平成16年度 都市税制改正に関する意見(平成15年10月1日)

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平成16年度 都市税制改正に関する意見
平成15年10月
全 国 市 長 会

     「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」においては、都市自治体が従来から要望してきた基幹税の充実を基本に、地方への税源移譲を行うという基本方針が示された。
     しかし、税源移譲については、実際に移譲される税目や額が明確にされておらず、また、国庫補助負担金の廃止に伴う税源移譲の額について、効率化の必要性はあるが、義務的な事業以外は補助金削減額の8割程度とされ、地方への負担転嫁が懸念される。さらに、地方交付税については、総額を抑制し、財源保障機能を縮小するとされているなど、都市財政は一層厳しくなるものと危惧される。
     今後、自主自立の分権型地域社会を実現し、住民との協働の下に、自己決定と自己責任に基づく施策を実施していくためには、安定的な税財源の確保が必要であり、税制改正や予算編成過程において税源移譲を基軸とした三位一体改革の具体化を行うことが最も重要である。
     言うまでもなく、現下の地方財政は、歳出規模と地方税収入との大幅な乖離という基本的な問題に加えて、長引く景気の低迷による税収の落ち込みとともに、徴税努力を重ねているにも拘わらず、失業率の増加などにより徴収の困難性が増しており、さらに、国の景気対策による減税や公共事業の実施等による巨額の財源不足に加えて、臨時財政対策債等の増発によって借入金が累増するなど、今や極めて厳しい構造的な危機状況にある。
     このような中、都市自治体としては創意・工夫を凝らし、自ら徹底した行財政改革に積極的に取り組みつつ、福祉、教育、環境対策、都市基盤整備等、住民に最も身近な行政主体として、数多くの課題に対応しており、その責務は地方分権の進展とともに益々重大となってきている。
     国においては、このような状況を踏まえ、平成16年度の税制改正において、地方自治体の意見を十分反映しつつ、地方分権時代に相応しい地方税財政基盤を確立されるよう、次の事項について必要な措置を講ずるよう要請する。

    1 税源移譲等による都市税源の充実強化について
     地方分権をより一層推進するに当たり、自主・自立できる地方行財政基盤を構築するためには、国から地方への基幹税を基本とした税源移譲の早期具体化が必要である。
    (1) 「改革と展望」の期間中に概ね4兆円程度の国庫補助負担金の廃止・縮減等の改革を行い税源移譲するとされているが、具体的な内容を早期に明らかにする必要がある。国庫補助負担金の廃止・縮減に当たっては、地方で引き続き実施すべき事業について削減額に見合う税源移譲を同時に実施すること。その際は、安定的で税源の偏在の少ない個人住民税・地方消費税等の基幹税の充実により、確実に移譲することが重要である。また、国の歳出削減を目的とした、単なる補助率の引下げや補助対象の縮減など、地方への負担転嫁を行わないこと。
    (2) 地方の歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、当面、国税対地方税の割合1対1の実現を目指し、負担分任という性格を強めるため、個人住民税の比例税率化などにより、所得税から個人住民税への移譲を行い、また、消費税の1%分相当額を地方消費税へ移譲するなど抜本的な地方税制改革を早急に進め、都市税源の充実強化を図ること。

    2 個人住民税の充実確保について
    (1) 市町村の基幹税目である個人住民税は、これにより地域社会の費用を住民が広く応能・応益負担している税であり、安定性と伸張性を有する極めて重要な税であることを踏まえてその充実を図ること。
    (2) 個人住民税均等割については、人口段階毎の税率区分を一本化するとともに、税率を当面3倍程度引き上げること。また、個人住民税均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻に対する均等割等の非課税措置を見直すこと。
    (3) 生命保険料控除及び損害保険料控除については、その創設目的に鑑み廃止を含めた見直しを行うこと。また、配偶者控除など人的控除などについても課税の公平・簡素、男女共同参画などの観点から見直しを行うこと。

    3 法人住民税の充実確保について
    (1) 法人所得課税については、都市行政との関わりの大きさ、都市税源としての重要性等を考慮し、法人住民税としての市町村への配分割合を充実すること。
    (2) 法人住民税均等割の税率を引き上げること。
    (3) 日本銀行については、国庫納付金が所得の算定上損金に算入することとされているため、国庫納付金の多寡によって法人住民税の税収に大幅な変動を来たすなどの問題があるので、これらについて根本的な見直しを行い、安定した税収入を確保できるように措置すること。

    4 固定資産税の安定的確保等について
    (1) 固定資産税については、都市の基幹税目であることからその安定的確保を図ることが重要である。特に、平成15年度は、評価替えにより地価の下落等を反映し、4,000億円を超える減収が見込まれるなど、厳しい財政状況に追い込まれている。その上、仮に商業地等の負担水準の上限について引き下げが行われると、市町村財政に大きな打撃となることから、現行の70%を堅持すること。
    (2) 土地の負担水準について、課税の公平性の観点から、速やかに均衡化が図られるような措置を導入すること。
    (3) 固定資産税に係る評価・課税制度について、納税者がより理解しやすい仕組みにするとともに、税務事務の円滑化に資するよう更に配慮すること。

    5 事業所税の充実強化について
     事業所税は、都市環境の整備及び改善のための目的税であり、まさに都市再生のための事業に充てる貴重な財源であることから、現行制度の堅持はもとより、その充実強化を図ること。

    6 軽自動車税等の定額課税の見直しについて
     軽自動車税、特別とん税等定額で課税されている税目については、相当長期にわたり税率が据え置かれていることから税負担の均衡、物価水準の推移等を勘案し、税率を引き上げること。
     特に、原動機付自転車については、徴税効率が極めて低いことに鑑み、課税方法、課税対象等について、早急に実態に見合った見直しを行うこと。

    7 市町村道路財源の充実強化について
     市町村道の整備水準及び市町村道に係る特定財源比率は、国に比し依然として低い状況に鑑み、市町村道路財源の充実強化を図ること。

    8 航空機燃料譲与税の充実について
     空港関係市町村における航空機騒音対策事業、周辺整備事業等に要する経費が増大していることに鑑み、航空機燃料税の税率を引き上げるとともに、市町村に対する配分を充実すること。

    9 非課税措置等の整理合理化について
     地方税における非課税等特別措置については、税負担の公平確保の見地からより一層の整理合理化を図ること。特に、固定資産税等の非課税措置、課税標準の特例措置については、引き続き見直しを行うこと。
     また、国税における租税特別措置についても、引き続き見直しを行い、地方税収を確保すること。

    10 政令指定都市等に対する税制上の措置について
     政令指定都市については、国・道府県道の管理その他の事務配分の特例が設けられており、地方分権改革のより一層の推進のためにも、大都市の税制のあり方について検討し、事務配分に見合った税制上の特例措置を充実すること。
     また、中核市及び特例市についても、事務配分の特例等実態に即した税制上の特例措置を設けること。

    11 県費負担教職員制度の見直しに当たっての財源措置について
     政令指定都市立小・中学校等の教職員に係る給与費負担の道府県から政令指定都市への移管に当たっては、学級編制や教職員定数、教職員配置等包括的な権限移譲を前提として、所要額について、税源移譲により措置すること。

    12 環境税制の導入について
     いわゆる環境税制の導入に当たっては、環境施策において都市自治体の果たしている役割及び財政負担を十分勘案した地方税とすること。

    13 地方税における電子化の推進について
    (1) 地方税の電子申告システムについては、地方団体が共同で開発・運用することが重要であり、その円滑な導入が図られるよう国の協力体制を維持すること。
    (2) 社会保険庁からの公的年金等支払報告、国税庁所管の確定申告データ、法務省所管の不動産登記データ及び軽自動車等登録機関保有の軽自動車税の課税データについては、紙に出力された一覧表等を基に改めて市町村が電算入力を行うなど、多大な労力と費用を費やしていることから、これらのデータについては、磁気媒体により提供すること。

    14 税制の簡素化及び税務事務の効率化について
     都市税制に対する住民の理解と信頼をより確かなものにしていくためには、税負担の公平を確保するとともに、住民に分かりやすい簡素な制度とし、併せて納税者の事務負担の軽減等を図り、税務事務の効率化を図ること。
     また、引き続き、税制上必要な措置を講じるほか、関係省庁・都道府県の税務行政運営上の協力体制を充実すること。