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「使用済み自動車の減量化・リサイクルの推進」に関する意見(平成13年9月13日)

 全国市長会は、平成13年9月13日に、パブリックコメントに付されていた「中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会自動車リサイクル専門委員会中間報告」に対して、環境省へ意見を提出いたしました。
(参考) −中央環境審議会パブリックコメント資料− (PDF形式)
※環境省ホームページにリンクしました。



「使用済み自動車の減量化・リサイクルの推進」に関する意見
 

平成13年9月
全 国 市 長 会


 自動車のリサイクルにあたっては、循環型社会形成推進基本法に規定する「拡大生産者責任」に基づき、不法投棄車の処理等も含め、製造事業者等が中心的な役割を担うこととすべきである。
 また、使用済み自動車の現行廃棄物処理法等における取り扱いを整理し、シュレッダーダスト等の最終処分についても関連事業者において完全に行う必要がある。
 このような基本的な考え方に立ち、以下、各項目ごとに具体的な意見を述べるので、今後の審議において十分反映されたい。

1.使用済み自動車の処理の現状と課題
(2)使用済み自動車に係る課題
① 環境保全上の課題
使用済み自動車の野積み・放置については、所有権者の確認手続等に長期の時間が必要となっており、また、所有者が判明しなかった場合の対応のあり方等が明確になっていないことから、やむを得ず市町村が解体事業者等に引き渡しを行っている実態にあり、そのため市町村がその対応にはなはだ苦慮している。このような状況を明らかにしておくことが望ましい。
③ 使用済み自動車の逆有償化に伴う課題
有償化の進展に伴い、我が国における使用済み自動車の不法投棄は増加傾向にあることを明記すべきである。また、家電リサイクル法の施行に伴って、その不法投棄が増加した例があるように新しい制度の内容によっては、リサイクル費用の負担がかえって不法投棄を誘発する可能性があることも記述することが適当である。
 

2.検討に当たっての基本的考え方
(1)講ずべき施策とその優先順位
優先順位として適正処分の確保を最後においているが、自動車リサイクルの実施にあたって不法投棄がなされないようにすることは極めて重要な課題であり、不法投棄の防止が排出抑制やリサイクルの推進よりも優先順位が劣るかのような記述の仕方は改め、優先順位という用語を使用しないこととすべきである。
(2)関係者による取組及び(3)製造事業者等の役割の強化
 製造事業者等は、「拡大生産者責任」に基づき、設計製造段階からリサイクルしやすい自動車の製造等に自ら積極的に取り組むとともに、中古自動車の引取りを行う者、再資源化・解体処理を行う者など関連事業者が適正なリサイクル等を行うよう管理票等によりフォローし、また適正な処理費用を支払うことなどにより、自動車リサイクルの推進において中心的な役割を担うこととすべきである。
 製造事業者等の経営破綻等があった場合においても自動車リサイクルに支障を生ずることのないよう、業界全体の連帯責任による対応の仕組みを用意しておく必要がある。
従って、使用済み自動車に係る製造事業者等の責任に関する基本原則の記述において「一定の」や「応分の」という文言が責任の範囲についてあらかじめ限定を付する趣旨であるならばこれらの文言は適当ではない。
 また、「廃棄物処理法の制定当時においては、使用済み自動車が一般廃棄物となるとは想定されておらず、これまでの使用済み自動車の処理の実態及び市町村における現状の処理能力から考えて市町村が使用済み自動車を処理することは困難である。」としているが、単に処理が困難であるという事実上の理由だけではなく、本来使用済み自動車は一般廃棄物として市町村が処理をするべき対象ではなく、「拡大生産者責任」の考え方に基づき、製造事業者等の責任の下、関係事業者間において処理されるべきものであることを明確に記述すべきである。
(4)使用済み自動車に関する既存のリサイクルルートの有効活用
 既に多数の関連事業者によって処理が行われている実態があり、さらに今後の技術開発など製造事業者等をはじめとする関係者の努力により処理方法等が更に進展することが考えられるので、システムの検討にあたっては、行政の関与は最小限とし、関連技術の開発促進等を含め幅広い視点からできる限り民間の努力を助長するよう配慮することが望ましい。
 また、その場合に製造事業者等が関連事業者の役割をフォローする中心的な役割を担うべきであることを明確にすることが必要である。
 

3.排出抑制・減量化・リサイクルの推進方策について
 「拡大生産者責任」の考え方に基づき、使用済み自動車がリサイクルされ、最終的に処分されるまで生産者が責任を負うべきであることから、不法投棄車の処理も含め、行政の関与は最小限とすべきである。
(3)製造事業者等による処理について
① 製造事業者等による引取について、② 製造事業者等が引き取る廃棄物等、③ 使用済み自動車の引取り、引き渡し及び④ 管理票
 使用済み自動車の実際の引取り・再資源化等は既存のルートを活用することとするが、「拡大生産者責任」の原則から、製造事業者等が、関連事業者が適正なリサイクル等を行うよう管理票等によりフォローするなどにより中心的な役割を担うこととすべきである。
 また、制度の煩雑化を避ける観点から、現行の販売事業者、整備事業者又は解体事業者による引取りのルートをそのまま活用することとし、新たな登録・許認可制度などの創設は避け、可能な限り簡素なシステムとすることが望ましい。
⑤ 費用負担方法について
 リサイクル費用は自動車のユーザーが負担しなければならないが、不法投棄を防止するうえから、新車購入時の負担とすることが適当である。この場合、公平を期するため制度施行時の既販車については、最初の継続検査時までに納入する仕組みとすることが適当である。
 「<視点1>費用を確保する方法」については、自動車所有者の理解を得やすくするとともに、資金の管理状況を明らかにするため、当該自動車のリサイクル費用を明示して徴収することが適当である。 しかし、自動車の購入時点からリサイクル処理までの間には相当の期間があり、その間にリサイクルの内容や方法等が変わり、必要な費用の額が変化することが十分考えられ、さらに膨大な数の自動車について費用負担や処理状況等を管理することは事実上困難と考えられること等から、厳密に自車の処理費用とすることは適当でない。自動車所有者が全体として共同負担するとの考え方のもとに一定のルールを定めることが適当である。
 「<視点2>費用を管理する方法」については、管理費用の軽減、リサイクルの効率化の促進等の観点から製造事業者等の責任において行うことが適当である。この場合、ユーザーが負担した資金の管理状況については、適正な負担と支払いを確保するため、できる限りオープンにすることが望ましい。なお、自動車製造事業者等の経営破綻等があった場合においても自動車リサイクルに支障を生ずることのないよう、業界全体の連帯責任による対応の仕組みを用意しておく必要がある。
 また、道路運送車両法に基づく自動車登録制度について、一時抹消された車両の把握、所有権が移転された時の所有者の把握、新車登録・継続検査時のリサイクル費用納付済の確認等について見直しを行うことが必要である。
 輸出された中古自動車のリサイクル費用については、厳密に自車の処理費用とはならないこと等から、返還することは適当でない。


4.廃棄物処理法の適用のあり方
 環境保全上の規制については、使用済み自動車が有価物であるか否かに関わらず統一的な対応が図られるよう廃棄物処理制度について見直しを行うことが必要である。
 

5.その他の必要な施策
(1)最終処分場等の確保について
 使用済み自動車のリサイクル処理後に残されるシュレッダーダスト等については、現行の産業廃棄物の考え方に則って処理施設は事業者が整備するべきものであり、その最終処分は製造事業者等が責任をもって行うべきものであることを明確にするべきである。
 また、「こうした施設が整備されるまでの当分の間、地方公共団体の事情が許せば、必要な費用を徴収しながら可燃物について地方公共団体の焼却施設での受入れを検討すべきである。」としているが、一般廃棄物処理施設での産業廃棄物の処理は、地域にとって極めて大きな問題であり、市民の理解が得られず、都市自治体として到底受け入れられるものではない。従ってこの記述は削除すべきである。
(2)放棄対策について
① 放棄の防止対策について
 放棄車対策に関する行政の取組みついては、廃棄物行政、警察行政、自動車登録行政等関係行政の連携による総合的な対応が必要である。
 特に、自動車抹消登録制度の見直しは、不法投棄対策に有効であることから早急に行う必要があり、一時抹消された車両の把握、所有権者の確認手続等の見直しの必要性を明記すべきである。
② 放棄車の回収、処理について
 放棄車の回収・処理については、「拡大生産者責任」の原則に基づいた仕組みを整備すべきであり、市町村が行うこととすべきではない。従って、市町村による回収・処理に製造事業者が協力するという記述を改め、製造事業者等の責任において行うものであることを明らかにすべきである。
 また、製造事業者等の責任において処理することを前提に、不法投棄車の処理に関して、所有権者の確認手続等の法的な面も含め必要な制度を整備すべきである。
 なお、制度施行直後、一時的にリサイクル費用未納車の不法投棄が多く発生することが懸念されるため、その回収、処理について製造事業者等は自らの責任において対応できるよう体制を十分整備する必要がある。
 

その他
 本リサイクルシステムの対象となる自動車の定義は明らかにされていないが、その対象に乗用、商用(架台等を含む)の区別なくすべての四輪自動車が含まれるのは当然である。また、二輪自動車は不法投棄も少なくない上に、エンジンオイルやバッテリー液の流出の問題もあることから、対象とすることが必要である。