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自動車のリサイクルシステムに関する意見(平成13年3月22日)

 全国市長会は、平成13年3月22日に、パブリックコメントに付されていた「自動車のリサイクルの促進に向けて(案)」に関して、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会自動車リサイクルワーキンググループへ意見を提出いたしました。



自動車のリサイクルシステムに関する意見

平成13年3月
全 国 市 長 会


 本会では、これまでにも資源循環型社会の構築に向けて、廃棄物政策のあり方に関する意見を述べてきた。また、使用済み自動車の不法投棄は、都市自治体が当面する重大な問題である。
 従って、自動車のリサイクルについては、実効性のあるシステムを早急に整備するよう強く望むものである。
以下、各項目毎に現段階での意見を述べるが、今回の中間報告案ではなお具体的な事項で明らかでないものがあり、また、検討のための時間が極めて乏しかったため、今後必要に応じ追加して意見を述べることとする。
 


1.「基本的な考え方」について
 不法投棄の防止を重要な課題として明記することは適当であるが、自動車リサイクルの促進が資源循環型社会の構築に向けての大きな課題であり、また、これを推進するにあたって、いわゆる「拡大生産者責任」の考え方を基本とすべきこと、従って、自動車製造事業者の責任と役割が中心となるべきことをより明確にする必要がある。

2.「関係者の役割分担」について
(1)先に本会では「廃棄物政策に関する意見」(平成11年1月)において、「生産・流通事業者については、使用済み製品のリサイクルや適正処理に対して資金的物理的責任を含むという「拡大生産者責任」の考え方が具体化される必要がある。」との意見を述べたが、特に自動車の場合、その構造や素材のあり方がリサイクルや最終処分をするうえで重要な意味を持っており、自動車製造事業者はこれを決定し、熟知している立場にもあるので、他の「関係者」とは比較にならない大きな責任と役割を有している。このことを強調し、明確にすべきであり、従ってその具体的な役割はフロンガスの処理などに限定されるものではない。
(2)また、自動車製造事業者は、使用後のリサイクルのみでなく、自動車の生産にあたってリサイクルを容易にする構造や素材とする責任と役割があることも明記すべきである。
(3)「使用済み自動車の引き取りを行う主体」及び「使用済み自動車のリサイクル・適正処理の実施主体」については、中間報告案の「今後検討すべき事項」においてもその役割について引き続き検討が必要としているように、インターネット取引の増加が予想されるなど、これからの自動車の流通実態や関連する自動車登録制度、廃棄物処理制度との関連をふまえて、なお検討する必要がある。事業者の登録制度や管理票のシステムなどについては、後日あらためて必要な意見を述べたいと考えるが、いずれにしろ、これらには零細な事業者が多い。従って、適正な処理を確保することができる仕組みの確立、法的な裏付け等を行うほか、最終的には自動車製造事業者の責任において適正なリサイクルが確保されるように措置する必要がある。
(4)自動車ユーザーが整備されたリサイクルシステムによって適正に費用負担や引渡し等を行なうべきことは当然であるが、所有者と登録名義者が異なる場合があるなど、自動車登録制度との関連にも問題があると思われるので、これらについても検討する必要がある。
(5)後述の「費用の徴収方法」とも関連するが、「関係者の役割」を明確にするうえからも、基本的な問題としてこのシステムが想定するリサイクルの具体的な内容や水準を明確にする必要がある。

3.「費用の徴収方法」について
(1)費用の徴収に関しては、徴収方法とともに、これにより賄うべき対象経費の内容を明確にする必要がある。例えば使用済み自動車の引き取りが適正に行われず、不法投棄が発生した場合、その処理は最終的には自動車製造事業者の責任において実施されなければならないと考えるが、その経費をあらかじめ含ませるかどうかなど明らかにする必要がある。
(2)徴収方法のあり方については、都市自治体にいろいろな意見があり、なお検討調整が必要であるが、当面現時点における主な意見を述べることとする。
費用の徴収方法の検討にあたって最も重要な基本は、費用負担に関連して不法投棄を生じさせないことである。その点からは、排出時点での徴収はすべきではない。次に新車については、販売時点で徴収することが適当である。既販車については、使用中または流通過程のいずれかの段階での徴収方法を検討しなければならないが、その具体的な方法として、自動車の車検時の徴収について検討されたい。この方法を採れば、新車販売時に費用を徴収した場合であっても、その後の不足分を追加徴収するなど、調整が可能である。
 仮にいずれの方法によっても既販車に係る費用徴収が実行できないとすれば、新車に係る費用徴収のみとなり、既販車分を含むリサイクル費用を新車販売時点で徴収することとならざるを得ない。この場合はいわゆる他車充当方式となる。
 前述のように、徴収方法については不法投棄を誘発しないことを基本として検討すべきであり、後日必要があれば追加して意見を述べることとする。
(3)リサイクル費用については、徴収方法の検討のみでなく、徴収すべき金額についても検討し、どの程度の金額を徴収する必要があるかについても明らかにすべきである。

4.「今後検討すべき課題」について
(1)自動車リサイクルの重要性及びリサイクルシステムの内容について国民の理解を得ることが必要不可欠であるので、広報の充実などが重要である。
(2)使用済み自動車のほとんどが一時抹消であり、永久抹消となっていないこと、所有権が移転しても移転登録が必ずしも行なわれていないこと等の実態を踏まえて、使用済み自動車が確実にリサイクルシステムにより処理されることとなるよう、自動車登録制度についても検討する必要がある。
(3)中古自動車が少なからず海外に輸出されている実態を踏まえて自動車リサイクルの円滑な推進を図る必要がある。
(4)今後も自動車の構造や素材が変化していくと思われるが、自動車リサイクルシステムがそのような変化に適切に対応することができるよう検討しておく必要がある。
(5)自動車リサイクルシステムの円滑な運用を確保するうえからも、使用済み自動車の不法投棄を解消するよう、罰則や取締りの一層の強化等を検討する必要がある。
(6)前述のように、自動車製造事業者においてリサイクルしやすい自動車の製造を一段と推進するとともに、リサイクル処理技術の研究開発などによりリサイクル事業の高度化効率化を推進する必要がある。

5.その他
 自動車リサイクルは、上述の自動車登録のほか、廃棄物・リサイクル関連はもとより、道路交通や道路管理等関連する行政分野が多岐にわたることから、これらの制度と十分な調整を行い、総合的な対策として検討を行うとともに、これらの行政を担当する地方公共団体の意見を十分に聴取すること。