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「都市計画制度の見直しに当たって」に対する意見を都市計画中央審議会会長に提出(平成11年11月10日)

全国市長会は11月10日、まちづくりに携っている都市の考え方を反映させるため、「都市計画制度の見直しに当たって」に対する意見書を都市計画中央審議会会長に提出した。


「都市計画制度の見直しに当たって」に対する意見

平成11年11月
全 国 市 長 会


 都市計画制度については、地域の実情を最もよく知り、しかも住民に最も身近な立場にあって地域の総合的な行政を担当している市町村がまちづくりの中心となるべきであるとの基本に立って検討すべきであり、そのような考え方のもとに下記の意見を提出する。
 なお、本会としては、今後、具体的な内容等がさらに明らかになった段階で、必要に応じ、追加して意見を申し上げる考えである。
 

1.都道府県マスタープランについて
  新たに都道府県マスタープランの制度を法定化するよう検討しているが、市町村マスタープランはこれに即して定めなければならないものとされるほか、都道府県マスタープランにおいては、各都市計画区域毎に土地利用の方針、主要な都市施設の整備の方針等まで定めることとしており、これが実現した場合、市町村の自主的主体的なまちづくりにとって、制約要因となるおそれがある。また、既に市町村マスタープランを作成済の市町村にあっては、今後作成される都道府県マスタープランとの整合性が求められることによる混乱が予想される。都道府県においては、県域全体あるいは県内各地域の将来展望等は既に総合計画等、それぞれの方法によって明らかにしているので、都道府県マスタープランの基本的な趣旨として示されているものはこれらと重複する面が多いと思われるが、できる限り行政事務を整理する観点からの検討も必要である。
 分権時代に向けて、市町村が中心となって地域の特性をいかした個性的なまちづくりを進めることが一層強く求められているが、都道府県マスタープランの新たな法定化については、このこととの関連をはじめとして、以上のような点など問題が生ずることが考えられるので、具体的な影響を吟味し、法定化の必要性の有無を含めて十分慎重に検討すべきである。


2.土地利用規制について
  土地利用に関する規制については、基本的に、市町村の判断に基づく地域の実情に  応じた弾力的な運用が可能となるべきであり、今回の見直し案において、開発許可制度等の弾力的な運用を指向する点には異存がなく、積極的に進めることが望まれる。
  また、都市計画区域外にこれに準ずる区域を設ける制度などの検討がされているが、都市計画制度として新たな仕組みを設けることが市町村にとって新たな規制となることが懸念される。法律に特段の規定がない場合であっても条例を活用する等により、市町村が地域の実情に即した自主的なまちづくりを進めることができるようにされたい。


3.既成市街地再整備の新たな制度について
  既成市街地再整備のために新たな制度を設けることとしているが、その具体的な内容は必ずしも明らかではない。いずれにしろ、現行都市計画制度は、新たな仕組みの追加が重なり、複雑なものとなっているので、できる限り整理をし、市町村の自主的な判断によるまちづくりを進めることができるようにすべきである。


4.環境問題等への対応のための制度の強化について
  環境問題等地域の課題全般への対応については、既に各市町村が基本構想等により計画的に推進していることを踏まえ、都市計画に関するマスタープランにおける記載及びその内容については、市町村の自主的な判断によることとされたい。
  また、廃棄物処理施設の積極的な都市計画決定や概ねの位置を含む処理施設の整備方針のマスタープランへの明記についても言及しているが、これは、廃棄物処理施設の整備に関する手続きと重複する面があるので、このことについては、廃棄物処理に関する制度とあわせて検討する必要がある。
  緑地保全は重要な課題であるが、関連する制度を含めた総合的な検討を行うとともに、その実施を担保する財政制度を設けることとされたい。


5.都市計画決定システムの合理化について
  都市計画事業の推進のための新たな仕組み等について言及しているが、これについては、市町村における執行能力が年々向上しているとの基本認識のもとに検討すべきである。
  また、国からの各種情報の提供は必要であるが、法定の「都市計画基準」をより詳細にすることや「都市ガイダンス」(仮称)を新たに提示することなどにより、かえって市町村の自主的な都市計画決定を妨げることのないようにされたい。
  まちづくりへの住民の参加については、各市町村においてそれぞれ工夫をこらしながら進めてきているので、新たな法制化が混乱を生ずることのないよう、市町村の自主性をいかすこととされたい。
  都道府県による都市計画決定に関し、都道府県が関係市町村に対して資料の提供を求めることができるとすることについては、いわゆる分権一括法による改正後の地方自治法にこのような場合に関する一般的な規定があることを踏まえて検討するとともに、その運用に当たっては、関係市町村の意向を十分尊重することとされたい。


6.市町村が中心となるまちづくりの推進について
  市町村が中心となってまちづくりを進めるという分権時代にふさわしい都市計画制度としてはなお多くの課題がある。線引制度については、廃止を求める意見、決定権限を市町村に移譲すべきであるとの意見など、さまざまな意見があるが、これらを踏まえた線引制度についての市町村の役割拡大について検討するほか、従来から主張しているように、都市計画決定は、基本的に市町村の権限とする方向でのさらなる権限移譲を進めるべきである。
  また、市町村が総合的な視点に立ってまちづくりを進めることができるよう、都市計画制度の見直しに当たっても、国の各省間の総合的な調整が円滑に行われる必要がある。
 

都市計画中央審議会では、都市計画法の抜本改正を視野に入れた都市計画制度のあり方について検討を進めており、9月30日には、同審議会小委員会報告として、「都市計画制度の見直しに当たって」を取りまとめた。