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介護保険制度の施行準備のため早急に措置を要する事項等に関する意見(平成11年3月17日)

介護保険制度の施行準備のため早急に
措置を要する事項等に関する意見

平成11年3月17日
全国市長会・社会文教部

 都市自治体は、平成11年度から実質開始しなければならない介護保険制度の施行事務に懸命の努力を重ねているところである。
 全国市長会は、介護保険制度の円滑な運営のために必要と考えられる条件整備等に関し、介護サービス体制の整備等の問題のほか、去る1月27日には「介護保険財政の健全性確保に関する意見」を提出するなどこれまで繰返し意見を明らかにし、国において万全の措置を講じられるよう強く要請してきた。
 本年10月からの要介護認定事務など今後の膨大な事務を円滑に処理するための準備は、既に都市自治体において開始されているが、この時点においても、制度施行上重要な事項であってなお不確定なものが相当数あり、そのため、準備に支障を生じているものがある。今回はそのような事項を中心として、当面下記の意見を提出するので、国においては、速やかに必要かつ万全の措置を講じられるよう強く要請する。
 なお、これまでに本会が提出したその他の事項についても、同様に必要な措置を講じられるよう重ねて要請する。



1.制度運営上重要な事項の早期決定
  介護報酬の額、介護保険事業計画の基本指針、住民参加型訪問介護サービスの取り扱い等制度運営上重要な事項について、未だに不確定な点が多く、このまま推移するならば制度の円滑な施行に支障を生じることが強く懸念されるので、関係政省令を含め、これらについて早期に決定し、明示すること。

2.要介護認定の円滑な実施
(1)公平・公正な訪問調査を円滑に実施することができるよう、訪問調査を行う際の具体的な判断基準を早急に明確にすること。
また、介護保険施設において経過的に介護支援専門員に代わる者として認められている生活相談員等も訪問調査に従事することができることとすること。

(2)要介護認定に関する一次判定ソフトについては、高齢者介護サービス体制整備モデル事業での指摘事項等を十分に踏まえ、被保険者が理解しやすく、信頼されるものにすること。

(3)要介護認定審査会における審査が実態に即しながら公平かつ的確に、しかもスムーズに行われるよう、要介護状態区分の変更事例集を整備する等できる限り配慮すること。

(4)要介護認定に必要とされるかかりつけ医意見書については、できる限り効率的な事務処理を行うため、一定の場合には、密封した意見書を要介護認定申請書に添付することを認めるなど、弾力的な取り扱いを可能にすること。

(5)訪問調査表、かかりつけ医意見書等の要介護認定関連資料に対する開示請求が行われた場合の対応については、要介護認定が全国一律の基準で行われ、また、要介護認定に対する信頼確保は全国的な問題であることを踏まえ、国においてモデル的な対処方法を示すこと。

3.介護サービスの適切な提供
(1)介護サービス計画(ケアプラン)の作成は、要介護者が多数であればある程膨大な事務量となるので、モデル事業の経験を踏まえ、「課題分析」の共通化簡素化を図るなど、適切かつ効率的な計画作成が行われるよう工夫すること。

(2)介護サービス計画の作成には、各サービス提供事業者の受入れ体制に関する情報の入手やかかりつけ医との連携等が必要となるが、これらが円滑に行われ、適切かつ効率的な計画作成が行われるよう措置するとともに、この過程で得られる個人情報の保護について取扱いの基準を示すこと。

(3)身体的には自立している痴呆についても、その実態に即した要介護認定が行われ、適切な介護保険事業計画が策定されるよう、要介護度別人数推計のための換算表において、このような身体的には自立している痴呆の換算率を設定すること。

(4)介護報酬の額等は、保険料の算定や民間事業者の参入等において重要な事項であるので、できる限り早期に具体的な内容を定めること。

(5)デイサービスセンターを併設していない特別養護老人ホームであっても、要介護者を送迎して介助入浴を行っている場合は、これを「通所介護」として、適切な介護報酬を給付するようにすること。

4.保険料の特別徴収
  保険料の年金からの特別徴収については、その確定が時期的に遅れる等の事態があり得ることを考慮し、年度中途において徴収額を変更する等弾力的な取扱いが可能となるようにすること。

5.管理事務の運営
(1)要介護認定の一次判定システムと市町村の介護保険関係事務の全体的な処理システムとの接続仕様を早急に示すこと。
また、指定都市においては行政区単位の事務処理が中心となる等、都市によって事情が異なる面があるので、それぞれ柔軟に対応することができるよう配慮すること。

(2)高額介護サービス費については、「世帯」の取扱い方法等、具体的な事務処理の方法が定められていないため、管理システムの設計ができない状況にあるので、早急にこれを決定し、明示すること。

(3)在宅の場合の療養管理指導等については、介護保険による給付と医療保険による給付との具体的な区分を明らかにし、両保険の間において混乱が生じないようにすること。

(4)事務処理を簡素化するため、かかりつけ医意見書作成料及び訪問調査委託料の支払いについては国保連合会による保険者の共同電算処理が可能となるようにすること。

(5)要介護認定事務が開始される平成11年10月以降、介護保険制度についてはさまざまな混乱が生ずることが予想されるので、国及び都道府県においては、制度の円滑な運営のため、十分な支援体制を整えること。