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「廃棄物問題を中心とした都市の環境問題に関する提言」の概要(平成5年6月1日)

平成5年6月
全 国 市 長 会
                    都市政策研究特別委員会
 
はじめに

 廃棄物問題は、大量生産、大量消費、大量廃棄を進めてきた我が国にとって、日々の市民生活、経済社会活動に密着したものとして一日も放置できない全都市共通の重要課題であると同時に、今や、一国内の問題を超えた地球的規模で対応すべき課題とされている。
 全国各都市は、地球環境問題の基本とも言える廃棄物行政の重要性を深く認識し、特に発生量が増大し、質が多様化している廃棄物の排出抑制及び適正処理に努めつつ、ごみの減量化、再資源化に取り組み、さらに再生製品の利用を推進する一方、廃棄物処理施設の整備拡充並びに施設の適正な維持管理により、地域の環境保全を図るべく努力を重ねているところである。
 国においても、再資源化の促進、資源の有効利用を目的とした「再生資源の利用の促進に関する法律」(平成3年4月法律第48号。以下「リサイクル法」という。)を制定し、また、これまで主として廃棄物発生後の事後処理に重点を置いてきた廃棄物対策を基本的に見直した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正法」(平成3年10月法律第95号。以下「改正廃掃法」という。)並びに平成3年度を初年度とする「第7次廃棄物処理施設整備5か年計画」の策定、「環境基本法」の法制化など、新たな施策の展開を図っている。
 しかしながら、廃棄物をめぐる諸般の情勢は、むしろ一層深刻化しつつあり、廃棄物行政は、その困難度をいよいよ強くしている。
 今後、廃棄物行政を適切に推進していくためには、改正廃掃法やリサイクル法の諸施策の徹底を図る必要がある。そのためには、国、地方自治体、事業者の一体となった対策、さらには地域住民の参加による幅広い取組が不可欠である。
 本会は、以上のような情勢の中で、現在、各都市が抱えている廃棄物問題を中心に、その基本的あり方について検討し、以下のとおり取りまとめた。
 この提言によって、廃棄物問題への対策と実行が早期に果たされることを期待するものである。

第1章 現状と問題点
 都市のごみ問題としては、排出量の抑制、中間処理施設・最終処分場の確保、リサイクルの推進、環境保全対策等が挙げられるが、本会が平成4年6月に全都市を対象に実施した廃棄物問題に関する実態調査によれば、概ね次のような現状が明らかとなり、今後の解決策が求められている。
 
1 増加し続けるごみ
  平成3年度における都市のごみ総排出量(一般廃棄物)は 3,755万トンで、10 年前の昭和56年度と比較すると、36.7%増加している。この増加傾向は昭和56年 度から昭和61年度の前半5年間では、14.4%の増加(年平均 2.7%)であるのに 対し、昭和61年度から平成3年度の後半5年間では19.5%の増加(年平均 3.6%) となっており、後半の伸びが著しく、特に家庭系ごみに比し事業系ごみの増加が 著しい。
  最近の状況をみると、平成元年度から平成2年度で 1.7%増、平成2年度から 平成3年度で 1.8%増と、幾分増加傾向が弱まったものの、ごみ量は依然として 増え続けており、特に、人口及び産業の集中する地域においては、事業系ごみを 中心に高い増加傾向にある。今後、さらなるごみ減量化の推進と事業系ごみに対 する対策が求められる。
  収集されたごみ全体の76.0%に当たる 2,837万トンが中間処理として焼却処分 され、17.1%の 637万トンがそのまま埋立処分されており、この両者で全体の  93.1%となっている。収集段階におけるごみの資源化は、全体の 2.7%の 101万 トンに過ぎず、今後の資源化推進のための施策が求められる。

2 さまざまな分別収集
  各都市のごみの分別収集の状況をみると、2分別から10分別まであるが、内容 的に効果的な分別収集とされる3分別以上の都市は、全体の91.4%で全国的に分 別収集は進んでいると言える。しかしながら、分別のあり方をみると、例えばプ ラスチック・紙・布・木屑類については、「可燃ごみ」として取り扱われていて も、「燃えるごみ」、「燃やせるごみ」、「燃せるごみ」と呼ばれている。また、 プラスチックについては、「可燃ごみ」であったり、「可燃ごみ」以外の分別に 含まれていたり、また、同一の分別の名称であっても内容的には全く異なる場合 が多く、各都市の処理体制等の実情に合わせて、さまざまなものとなっている。 このことから、全国的に統一した分別方法の実施は難しいものと言える。
  今後、分別区分の細分化を考慮している都市は 178市あり、さらに細分化は進んでいく方向にあるとみることができるが、一方において「住民の分別区分の不 徹底」が問題となっている。 

3 進む減量化・リサイクル活動とその悩み
  都市におけるリサイクル施設は、延べ 301か所(都市 192、組合88、その他21)が設置されており、さらに90か所が計画されている。
  また、リサイクルの推進に当たっては、市民の活動に負うところが大きいが、それに対する支援としては、コンポスト容器設置への助成(71.8%)、集団回収 への金銭的助成(70.5%)及び物的助成(28.4%)等、多様な助成を行うととも に、施設見学(68.9%)、市民会議への支援(12.7%)等をも行っている。
  啓発事業についても広報紙によるもの(74.9%)、パンフレットの配布によるもの(71.0%)、小中学生用副読本の発行(36.0%)、市民懇談会の開催(35.5 %)等、多種多様な活動を展開している。
  これら減量化・リサイクル活動は、一般市民のみならず、官公庁や企業各般にも及んでいる。
  また、改正廃掃法による廃棄物減量等推進審議会や推進員の設置についても、既に設置しているものや、今後設置するものを合わせると、審議会は40.1%、推進員は30.6%であり、各都市におけるこの問題に対する取組の早さを示している。
  再資源化については、90%の都市において何らかの取組がなされており、実施 していない都市は65市( 9.8%)と少ない。再資源化の対象品目は多様であるが、 スチール缶(74.9%)、アルミ缶(71.3%)、カレット(53.6%)、有価びん(48.2%)のほか、紙類では段ボール(42.7%)、新聞紙(37.6%)、雑誌(37.0%)、牛乳パック(21.3%)などである。一方、再資源化の低いのはプラ スチック類で、ペットボトル( 0.9%)、トレイ( 3.0%)、発泡スチロール( 3.2%)となっている。
  再資源化の最大の悩みは、これら資源の売却価格で、平成4年3月の1市当たり全国平均価格は、前年同月に比し、1トン当たり鉄屑で 5,113円( 2,726円→ △2,387円)、アルミ屑で19,434円(60,241円→40,807円)、カレットで 157円( 3,504円→ 3,347円)、それぞれ下落した。このうち、鉄屑は一部の都市を除 き逆有償の状況が続いている。
  これらのことから、せっかく集めた資源が引き取られないなど、住民の資源回収に対する意欲を減退させることのないよう、「回収ルートの確立」、「資源の売却価格の安定」、「再生資源の原材料への利用促進」を求める声が多い。また、一方において「メーカー・ディーラー責任での回収・処理」も求められている。

4 ごみの有料化の現状
  家庭系ごみの有料化の実施状況については、一般・日常的なごみを有料としている都市は、「可燃ごみ」で 623市中53市( 8.5%)、「不燃ごみ」で 610市中 29市( 4.8%)、「資源ごみ」で 327市中 8市( 2.4%)に過ぎない。このほか、「埋立ごみ」は 179市中35市(19.6%)、「粗大ごみ」は 477市中86市(18.0%)、「動物の死体」は 520市中 346市(66.5%)で、比較的有料化率が高い。なお、「混合ごみ」(39市)については、有料化は実施されていない。
  ただし、多量の場合に限り有料としている都市は、「混合ごみ」が11市(28.2 %)、「可燃ごみ」が 164市(26.3%)、「不燃ごみ」が 156市(25.5%)、「埋立ごみ」が45市(25.1%)、「粗大ごみ」が 115市(24.1%)、「資源ごみ」が53市(16.2%)、「動物の死体」が 2市( 0.4%)であり、多量の場合に限定した有料化は「資源ごみ」と「動物の死体」を除き、概ね25%となっている。
  また、処理の困難性が高い廃棄物を品目別にみると、タイヤは 105市中29市(27.6%)、畳・マットは 509市中 133市( 26.1 %)、大型家具は 518市中130市( 25.1 %)、大型家電は 521市中 129市( 24.8 %)、自転車は 552市中 110市( 19.9 %)が有料となっている。
  有料制についての意見としては、「ごみ処理コストの意識啓発」「排出抑制」等をその推進理由として挙げているが、一方において「不法投棄の増加」の心配 や「市民のコンセンサスが得難い」とする意見が挙げられている。また、ごみの有料化に付随して、処理困難な大型家具や家電等について、「製造業者、販売業 者による責任回収制度又は処理費用負担制度の確立」を求める意見も多い。なお、今後有料化の対象として検討している品目は「粗大ごみ」が多い。

5 焼却施設と余熱利用の状況
  各都市が設置している焼却施設は 746か所、1日処理能力は約13万トン(1か所当たり平均 177トン)であるが、平均経過年数は11年強であり、機械耐用年数のほぼ3分の2を経過し老朽化が進んでおり、早い時期での更新対策が必要とされている。このことは焼却後の残渣率からも明らかであり、ごみの質や分別方法によって差はあるものの、地域によっては19.8%にもなっている。残渣率の高さは、後述の最終処分場の延命化の問題とも密接に関係してくる課題でもある。
  焼却施設における発電、余熱利用等の実施状況は、発電が焼却施設の13.1%、余熱利用施設を設置している都市が23.7%と全体的に低い数値となっており、小規模の焼却施設における発電、余熱利用の促進や広域処理による適正規模での施 設設置が求められる。
  発電の大半はその施設内において使用されており、売電は発電施設の41.8%となっている。一方、余熱利用は、老人ホームや集会施設など住民利用施設での冷暖房や給湯(52.3%)、温水プール(37.0%)が主なもので、地域冷暖房は2施 設に過ぎない。 

6 最終処分場の状況
  各都市が設置している最終処分場は 618か所で、総埋立容積は3億 3,500万m3 であるが、既に64.6%が埋立てられ、平均残余年数は約6年余に過ぎない。
  最終処分の方法は、全量を自区域内で処分している都市が63.3%、自区域外処 分の都市が25.7%となっており、特に、首都圏と近畿圏においては3分の1強の都市が全量を自区域外で処分している。
  平成8年度までの今後の整備計画では、全都市で 199か所 8,923万m3 、平均埋立年数12.5年を計画しているものの、内容的には1か所当たり 900万m3 を超す大規模なものから 6,000m3 という小規模のものもある。
  また、いずれの都市においても既存処分場周辺の住民に対しては、種々の対策や施策を行っているほか、新設に当たっては、「用地の確保」や「周辺住民の同意」等といった困難さを挙げ、「国や県の関与による広域処分場の設置」を求めている。 

7 広域処理の取組
  廃棄物処理の効率性や施設の立地条件などの事情から、広域処理の取組が進められているが、その実施状況は、全体の44.3%に当たる 293市に止まっている。これは、関係市町村間の意見調整の難しさ等によるところであり、今後の広域化 推進のためには、国、都道府県の適切な関与が求められる。なお、広域処理の内訳は、焼却等の中間処理が 220市(75.1%)、埋立等の最終処分が 202市(68.9%)、収集運搬が44市(15.0%)となっている。

8 不法投棄の問題
  不法投棄の現状は、各都市とも程度の差はあるものの、一般廃棄物において92.3%、産業廃棄物においては78.2%の都市が「ある」と回答しており、不法投棄は全国的な問題であると言える。
  不法投棄の処理については、各都市とも苦慮しており、特に、産業廃棄物の不法投棄については、「都市の経費負担」で処理しているものが34.1%もあり、「都道府県の経費負担」で処理しているのは 5.3%に過ぎない。産業廃棄物に関する法律上の管轄者である都道府県の積極的な取組が求められる。

9 産業廃棄物の問題
  産業廃棄物問題は、都道府県及び政令市の所管するところではあるが、その影響(住民の苦情等)は各都市が被っており、国、都道府県レベルによる広域処理施設建設の推進や排出事業者責任の強化等を要望する意見が多い。
  産業廃棄物の処理に関しての意見としては、産業活動の拡大、地理的条件あるいは産業廃棄物の適正処理等のため、広域移動もやむを得ないとする意見が 204市ある反面、住民感情や環境汚染、不法投棄の問題等を考慮して、自区域内処理 をすべきであるとする意見が120市ある。
  そのほか、一部の事業者に処理責任を有することの自覚が足りないことや、事業者が積極的に適正処理の方法を研究し、廃棄物の減量化・再利用に取り組むべきであるとの指摘が多く、一般廃棄物以上にその処理のあり方が社会問題化している。
 
第2章 基本的あり方
1 ごみ減量化の推進
(1)意識改革の徹底
①根底からの意識転換
 ごみ問題については、何よりも排出抑制や再生利用の促進によるごみの減量化が図られるよう、ごみに対するこれまでの考え方を変え、根底から意識転換していかなければならない。これまでは、使い捨て型社会にすっかり慣らされてしまい、「ごみは単に捨てるだけ、どこか目に見えないところで始末されるもの」といった意識が支配的だったが、暮らしの中にごみがあふれ、子孫に残すべき地球環境の汚染という問題にまで拡大してきた今日、資源や環境へ十分配慮した新たな対応が求められている。
 そのため、行政、住民、事業者は、それぞれの行政手法や生活様式、事業活動を見直し、できるだけごみを出さずリサイクルが促進できるように意識の転換を図るため、社会全体で工夫をこらさなければならない。そのことが、環境への負荷を軽減し、限りある資源を有効に活用することになる。

②啓発活動の一層の推進
 意識改革の手段としては、まず、ごみ減量化のための啓発活動を一層推進すべきである。
 都市は、住民及び事業者に対し、ごみの排出抑制による減量化に積極的に取り組むよう絶えず啓発活動を行う必要がある。
 そこで、幼少期から物を大切にする習慣とマナーを身につけるための家庭での躾の重要性、あるいは環境にやさしい商品の選択の必要性、過剰包装の日常化や使い捨て容器の氾濫が、ごみ減量化にとって大きな課題となっていることなどを、あらゆる機会を通じ徹底的に認識させる必要がある。例えば、ごみ焼却場・埋立処分地等の施設見学、ごみ問題に関する学習会・説明会、不用品交換会、集団回収、ごみ持ち帰りの実践などは、ごみ減量化への必要性を認識させる一つの方法であり、幅広い推進が肝要である。
 国及び都道府県は、使い捨て社会に慣らされた国民のライフスタイルを変えるために、ごみ減量化に関する国民運動をさらに強力に展開するとともに、テレビ、ラジオ等を通じて全国的BRRを一層進める必要がある。
 さらに、改正廃掃法、リサイクル法そのもののBRRに努め、法の趣旨を国民に周知させるため、学校教育の中に、環境教育を明確に位置付け、不法投棄、空き缶の散乱防止を含めた、ごみの出し方、処理の仕方、リサイクルの仕組みなどについて、習得させる必要がある。

(2)社会全体としての取組
①都市の取組
 都市においては、消費者や地域活動の実践者、教育担当者、事業者等で構成される廃棄物減量化推進審議会等によって、ごみ減量化方策を徹底的に審議し、その地域での過剰包装や使い捨て容器の使用自粛方法を見出し、その結果を製造事業者、販売事業者を含めた地域全体の合意事項として、取り組むことが必要である。
 既に、リサイクルに積極的に取り組んでいる優良事業者を広報紙等で知らせるなどして、協力事業者の拡大を図っている事例もみられるところである。
 なお、都市の一般廃棄物処理計画策定に当たっては、事業系廃棄物の減量化計画を明確に位置付け、事業者に対する減量化計画の策定指導を徹底するとともに、計画の確実な実施を指導する必要がある。
 さらに、清掃行政の位置付けを見直し、組織を総合的に再編するとともに、減量化・リサイクル等の事務事業に従事する専任担当職員の設置をはじめ、作業員の作業環境、作業能率の向上を図ることも重要である。
 また、自転車、大型家具等の再生事業を実施するに当たっては、シルバー人材センター、第三セクター等の民間委託の積極的な活用を検討する必要がある。

②事業者の取組
 事業者は、廃棄物問題担当取締役等の責任者を置き、各事業所においてごみ減量化、分別排出、資源化への実践、さらには環境問題に関する社員教育などを一層強化すべきである。
 また、製造事業者は、自らの責務を自覚し、製品の耐用年数や保証期間の延長、補修サービスの拡充、回収体制の整備、過剰包装・包装材の見直し等、廃棄物の減量化に積極的に取り組むべきである。

③国、都道府県の取組
 国は、過剰包装、使い捨て商品の氾濫など、ごみの増加をもたらす原因と背景を踏まえ、事業者に対し、ごみ減量化のための製品の開発、延命化等の研究開発促進のための税財政上の支援を充実すべきである。
 また、都道府県は、ごみ減量化に関するモデル的事例集を作成し、市町村の利用に供することも有効である。
 さらに、近年、特に、事業活動に伴い恒常的に多量に排出される紙ごみなどについては、事業者に対し減量化などの処理責任を徹底させ、併せて一般廃棄物と産業廃棄物の範囲見直しの検討を行う必要がある。 

2 リサイクルの推進
(1)リサイクル型社会への意識転換
 限られた資源の浪費を防ぎ、ごみ減量化を図るためには、リサイクル型社会への転換を図っていかなければならない。
 廃棄物が排出されるまでには、原料の確保から、生産、流通、販売、消費という各段階を経、その間に資源の消費と莫大なエネルギーが注ぎ込まれており、このことが、地球規模での環境の悪化に密接な関係をもっている。このため、廃棄物の処理を軸としてリサイクルが必要不可欠なものであるとする認識を、あらゆる場を通して、住民、事業者に周知徹底させ、多様なリサイクルシステムの展開を図っていく必要がある。具体的な取組としては、行政、事業者、消費者が再生紙等の再生製品の使用を積極的に実践し、需要拡大に努めることが重要である。
 廃棄物を再生利用、再資源化することは、ごみに対する排出者の意識の転換排出量の抑制に効果があるだけではなく、最終的には地球環境の保全にもつながるものである。

(2)再生資源の回収ルートの確立
 都市がリサイクル事業を推進するうえで重要なことは、再生資源の安定した回収ルートの確立である。従って、その体制づくりの推進が不可欠であり、そのための事業者による経済活動のより新たな展開と、これを支援する国の施策が必要とされる
 回収された資源は、市況に左右されることが大きく、このことがリサイクルの推進を混乱させる要因となっている。
 事業者は、資源を大切にする観点から、資源ごみの回収に責任を持つべきであり、製鉄、アルミ精錬、製紙、飲料業者等、各業界を含めた横断的なリサイクル専門の組織を設立し、全国的な資源ごみ回収システムを確立すべきである。その場合、デポジット制度や回収経費の一部を製品の販売価格に上乗せすることも国が関与して検討すべきである。地球資源を守り、ごみの減量化を図るための手法として検討された値上げについては、消費者も理解するものと考える。

(3)事業者への指導、支援
 製造事業者は、製造段階で再生が容易で再利用に適した素材の選択に努めるとともに、国、都道府県は、リサイクル資源・資材による再生製品の開発、製造、販売、消費を促進する体制づくりを推進すべきである。
 例えば、プラスチック製品については、その種類が多様で、一つの製品に多種のプラスチック素材が使用されるなど再生が困難であるので、製造事業者において、素材ごとに分離・分解が可能な構造となるよう考慮し、それぞれを識別するための記号化などを推進すべきである。
 また、製造事業者が製品を作るにあたり、再生資源の使用を一層推進するため、国はリサイクル法の徹底を期するとともに、再資源化設備の導入及び分別回収、リサイクルが容易な製品の製造設備の導入、リサイクル技術の開発を推進するための税財政面での支援措置を拡充すべきである。
 さらに、国、都道府県、市町村は、リサイクル事業を円滑に推進するため、他に与える影響を十分勘案しつつ、集団回収への補助や逆有償などへの公共関与による支援策の検討をはじめ、回収資源の情報ネットワークの確立、需給調整機能の整備、収集運搬業者の育成方策等、再生事業者サイドの取組をも支援、指導すべきである。

(4)リサイクルを考慮した分別収集、集団回収の推進
①分別収集への取組
 リサイクルを推進するためには、都市において細分別収集に積極的に取り組む必要がある。
 細分別を実施するに際しては、住民が安定的に排出でき、かつ排出協力が得られるよう、分別区分、収集方法、資源化方法等の具体的内容・基準について、地域の実情に応じて実施することが肝要である。特に、排出時点で必要とされる収集ステーションの確保、適切な排出管理、引受け事業者との連携・協力体制の確保などが不可欠であり、それが果たされないと、資源化ルートに乗せることが困難となるので、事前の分析検討とその際の住民参加が重要である。同時に、リサイクルには相当の手間がかかることを認識させ、資源ごみ排出の際の異物混入の防止等住民相互における正しい分別排出徹底のための理解、協力を得ることが肝要である。
 なお、“決められたものを”“決められた時間に”“決められた場所に”いわゆるごみ出し三原則を遵守することは、ごみ排出者としての責務である。
 また、分別収集に当たって、資源ごみの有価性について十分な配慮を要することは言うまでもない。

②集団回収への取組
 集団回収等の地域活動を充実するためには、リサイクルセンター(フリーマーケット、ガレージセール等を含む)を整備する必要がある。
 リサイクルセンターは、住民に対するリサイクル製品の展示、不用品交換の場所、情報提供や住民の環境学習等の交流の場として有効であり、地域の実情に応じ整備を進める必要がある。その場合、都市においても担当窓口を明確にし、都道府県の関与による収集運搬体制の整備や不用品の修理、修理技術者の確保・育成、ストックヤードの確保、情報ネットワーク等を利用した自治体間の広域的な連携協力体制の確立を図ることが肝要である。

(5)厨芥類のコンポスト化への取組
 厨芥(生ごみ)は、家庭から排出されるごみのうち、重量ベースで最大の比率を占めることから、減量化、資源化の観点から、中間処理施設でコンポスト化するなど、地域の実情に即した形で取り組む必要がある。
 コンポスト化にあたっては、都市化の進展や肥料の処分先等地域の実情に大きな隔たりがあるので、これらを考慮して進める必要がある。肥料の用途については、公園や道路の植え込み等に利用するなどの工夫が必要である。また、家庭用コンポスト容器設置等の普及促進を図り、そのための支援策を進めることも重要である。

3 有料化問題への対応
(1)有料化の必要性
 ごみ処理手数料の徴収については、各市町村の裁量に委ねられており、事業系ごみについては有料制がかなり普及しているが、粗大ごみや多量のごみ等を除けば、有料制をとっている都市は未だ少ない。
 今や、無料でのごみ処理は、各都市がごみ処理に多大の財政支出を余儀なくされていることを忘れさせ、また、使い捨て商品の氾濫など利便性志向を助長し、また、このような商品を生産・販売している事業者に有利な作用を及ぼし、その結果、ごみの増加をもたらしているといっても過言ではない。
 既に、有料制を導入することにより、ごみの排出抑制効果をかなり上げている都市もある。ごみの減量化、リサイクル化を徹底させ、ごみ問題に対する住民意識や製造・販売業者の姿勢の転換を図るためには、家庭系ごみについても極力有料制の導入を推進する必要がある。

(2)住民の合意形成への努力
 有料化に当たっては、住民の合意形成が不可欠である。従って、その際には、ごみ量や処理費用の増加の状況を勘案し、近隣都市の諸情勢等地域の実情にも配慮しつつ、適正な負担を求めることの必要性について、住民の合意を得るための地道な努力が肝要である。
 その過程においては、一定の周知期間を置くことにも留意しながら、それぞれの都市において効果的な方法を選択することが基本である。そのことによって、懸念される不法投棄も軽微なものとなろう。
 なお、有料化を推進するに当たり、国が国民的課題としてイニシアティブを発揮することが、都市での自主的取組が容易になると考えられるので、ごみ有料化の必要性についての国レベルでのBRR等による支援が望まれる。

(3)有料制の手法
 有料制の手法としては、ごみの種類、特性によるものや定額制、従量制などがあるが、このうち従量制については、公平性、ごみの減量、リサイクル効果が期待でき、理解を得やすいものと考えられる。この場合、粗大ごみ、適正処理困難物(改正廃掃法6条の3)、事業系ごみについては、廃棄物処理のコストを負担するという意識の醸成を図ることも踏まえ、処理に要する経費を十分に勘案した処理手数料を設定する必要がある。また、家庭系の一般ごみについては、ごみの排出量を勘案しつつ、ごみの減量化に対する市民意識を高めるという観点から、住民に対し広く薄く手数料を負担してもらうなど、効果的な手法を選択することが肝要である。
 具体的には、現在かなりの都市が実施しているように、可燃・不燃等のごみについては、所定のごみ袋、ごみ処理券を販売する方式、また、粗大ごみについては、大きさ、重さ等を基準として有料にする方法などが挙げられるが、料金徴収の方法にはさまざまな工夫をこらす必要がある。また、違反排出者に対する指導方策についても並行して検討しておく必要がある。
 なお、近隣都市との関連で住民の合意形成が困難な場合は、関連する都市との相互支援体制のもとに一体となって取り組む必要がある。

(4)取得財源の住民への還元
 住民の負担によって得られた収入については、住民に明確な方法で還元することを基本とし、コンポスト容器の設置、減量化・リサイクル運動への助成、そのための基金の創設など、住民がごみ問題を考えるためのケーススタディともなるよう工夫することが肝要である。
 
4 ごみ処理施設整備の推進
(1)最終処分場の確保対策
①広域的確保への努力
 一般廃棄物の処理処分は自区域内処理が基本である。しかし、市街化の進展等により最終処分場用地の確保が困難な都市にあっては、国、都道府県の関与による広域的処理方策を講ずる必要がある。
 最終処分場用地を自区域内に求めることが困難な都市を抱える都道府県にあっては、当該都道府県内に処分場を確保することとし、そのことが行政区域内の市街化の状況等の関係で困難な場合には、都道府県域を越えた広域的な確保について、関係自治体間の相互理解、協力を求めることが必要となる。
 この場合、地元の同意が前提となる。従って、関係自治体の長と事前に協議を行い、また、地元住民の意見を聴く機会を持ち、それらの意見を踏まえて決定することが肝要である。その際、周辺住民の利便施設や跡地を地元市町村に提供するなど応分の負担を前提とすることなども検討すべきである。
 また、広域的確保に当たっては、現行の地方自治法の広域行政の手法のみならず、現在制度化が検討されている広域連合制度の動き等にも十分留意しつつ、その執行体制について工夫していく必要がある。さらに、海面埋立てによる広域最終処分場整備事業(フェニックス計画)の積極的な取組も必要である。また、公有水面の埋立てを計画している都市においては、周辺市町村を含めた広域的な最終処分場としての機能を持たせることも有効である。
 なお、国、都道府県にあっては、最終処分場用地確保のため、国有林野等の国公有地の開放について都市の要請に基づき積極的に対応すべきである。
②自区域外処理施設において処理する都市の責務
 他市町村に所在する廃棄物処理施設において廃棄物を処理する都市にあっては、まず、徹底した減量化、資源化に努め、そのうえで自区域外処理を必要とする場合に、施設所在市町村への協力を求めるべきである。この場合、国は現行の通知制度に止まらず、地元市町村との事前の相互了解を必須条件とするなど、処分場の円滑な運営管理のための制度化までも検討すべきである。
 なお、広域処分場への廃棄物の搬入ルートについては、その決定権を関係市町村長に委ねるような法的措置も検討する必要がある。

(2)中間処理施設の効率的運用
①発電、余熱利用施設整備の推進
 焼却処理施設の運営に当たっては、限りある地球資源が叫ばれる中で、焼却のみでなく、発電設備、余熱利用施設を整備することが肝要である。
 発電、余熱利用は、既に一部施設において行われているが未だ僅少なものである。発電設備や余熱利用施設を設置するためには、効率性から一定の規模を有することが条件となる。従って、焼却施設建設に当たっては、一部事務組合等による広域的視点に立ち、未利用エネルギー有効利用の面から、高効率のごみ発電を積極的に推進するとともに、一般の廃棄物のみならず発熱効果の高い廃プラスチック等のうち、リサイクルすることが困難なものについても焼却することを検討していく必要がある。そのためには、より高度の施設整備に対する国、都道府県による財政的支援が必要である。特に焼却炉の傷みに配慮した財政支援が重要である。
 また、焼却施設整備の際の周辺住民対策として、発電された電力の一部を周辺住民や施設に限定し配電することも一つの方法であるし、さらに余剰電力については電力会社に売電し、その収入を廃棄物処理のための諸施策の展開に充てることにまで発展させることが肝要である。
 エネルギーの節約・有効活用は、限りある地球資源の効率的利用の観点から、またエネルギーの安定供給の観点からも、全国民が関心を持つよう、行政とエネルギー供給事業者が一体となって呼び掛けを行う必要がある。
②粗大ごみの効率的処理
 粗大ごみの処理に当たっては、広域的処理によって効率化を図るべきである。
 粗大ごみを適正に処理するためには、収集段階から多くのプロセスを要するが、人口規模が小さな都市にあっては、施設の整備や管理運営に要する費用などが過重となるので、一部事務組合等による広域的処理が効率的である。

(3)国による財政措置の充実強化
 ごみ処理施設の整備に当たっては、現行の補助対象事業に加え、用地の確保、公害防止設備、発電設備、余熱利用施設、地域への還元施設なども不可欠とされており、これらの莫大な事業費が都市財政を大きく圧迫している。
 そこで、補助対象事業の拡充や補助基本額を実勢価格に見合った額に引き上げること等が不可欠である。特に、補助対象外とされている高度処理施設等については、より高度の効果的処理が強く求められている今日、新技術開発による最新の施設整備をモデル的に補助対象とすることなどを重点に、社会的需要に対応した補助対象の拡充を図るべきである。
 また、リサイクル施設は、リサイクル事業を推進する中心的な施設であり、施設整備に当たっては、施設の充実を図るため最新でモデル的な空き缶選別機、古紙圧縮機等の設備を補助対象とするなど、補助制度を充実すべきである。
 さらに、最終処分場設置に当たり、長期間埋立て可能な大型の最終処分場を建設する場合には、用地取得費に多額の資金を要するので、国の財政面での大幅な支援措置を講ずべきである。
 以上のような施設整備推進のためには、補助制度の充実に併せ、地方債、地方交付税等による地方財政への適切な支援措置を講ずべきである。
 
5 廃棄物の適正処理の推進
(1)適正処理困難物の事業者責任の強化
①適正処理困難物の早期指定及び事業者責任の強化
 都市においては、住民の理解と協力を得ながら多額の資金を投じて処理施設の整備など適正処理に努めている。しかし、今必要なのは住民の意識改革であると同時に、事業者には地球環境時代を踏まえた社会的使命が要請される時代が既に到来していることを認識する必要がある。
 そこで、改正廃掃法による適正処理困難物については、都市の実情に配慮した指定を速やかに行い、指定された品目の処理については、事業者による積極的な対応を強化すべきである。
 なお、指定すべき品目としては、例えば、大型家電製品、家具、寝具、オートバイ、タイヤ、バッテリー、充電式筒型電池、自転車、家庭用電気温水器などが挙げられる。
 既に業界によっては、家電製品、家具等の耐久消費財について、自主的に回収しようとしている取組もみられるが、これを制度化し、回収品目の指定と、生産、流通、販売の各ルートを通じた事業者による自主回収システムを確立し、流通機構の整備を図るべきである。
②廃棄物処理センターの設置促進等事業者への支援
 適正処理困難物の処理等を推進するため、廃棄物処理センター(改正廃掃法第15条の5)の設置を強力に進める必要がある。このため、事業者はもちろん、国、都道府県の積極的な役割を期待する。そのほか、都道府県は中小零細企業に配慮し、例えば、資源ごみをはじめ適正処理困難物のストックヤードを県内に数か所設置することなども検討すべきである。
③ごみ処理までを考慮した製品の開発
 事業者は、改正廃掃法第3条第2項を遵守し、生産時に製品等の廃棄物処理の困難性の評価を行い、適正処理が困難とならないような製品の研究開発、自己評価ガイドライン、技術マニュアルの検討などに積極的に取り組むべきである。

(2)不法投棄への取組
①モラルの徹底
 いわゆる散乱ごみは、不法投棄者の適正処理に対する知識、モラルの欠如が主な要因となって発生していることから、モラルの向上のための環境問題への意識啓発と併せ、捨てにくい環境の整備にも配慮していくなど、各種の抜本的対策を講ずる必要がある。
 近年、空き缶やたばこの吸殻のポイ捨てが社会問題となっていることに対応し、都市においても条例制定の動きがあるが、この問題は全国共通の課題であり、これらのポイ捨て者に対してはモラルを徹底させることが肝要である。罰則を含む条例制定には種々の意見があるが、モラルの向上を目指すものとして意義あるものと言える。
 従って、国においては、環境美化、空き缶の有効利用等の観点から製造業者の処理責任を基本とした、デポジット制度の全国的な展開などによる空き缶等の回収システムを確立すべきである。また、ポイ捨て運転者に対しては、道路交通法違反行為としての減点制の導入について検討すべきである。
②不法投棄監視体制の強化
 都道府県は、廃棄物の不法投棄に対する監視体制を強化する必要がある。
 廃棄物の不法投棄は、都市の美観を損なうばかりでなく、地下水や河川を汚染したり、土壌を汚染したりするおそれがあるほか、さまざまな環境問題を引き起こす可能性もあるので、都道府県をはじめ、市町村、警察、地域住民、土地管理者とが一体となった監視体制の整備(例えばパトロール、防護柵・看板の設置、通報、調査、捜査、指導等の体制整備)を図り、原状回復への指導等取締り体制を強化すべきである。
 また、悪質な不法投棄者に対しては、告発といった厳しい対応措置を取るべきである。
③不法投棄不明者への対応
 不法投棄廃棄物は、排出者(原因者)を特定し、その責任において処理すべきことが原則であり、このためにも、国は不法投棄廃棄物の所有者を解明しやすくするための製造番号の表示等の義務付け、バイク、自動車の廃車手続時における引受け証明等の添付の義務付けなど、関係法令の整備等を通じた防止対策に万全を期す必要がある。また、放置自動車等については、業界による自主的な回収が行われているが、このような取組のさらなる拡充を期待したい。例えば、放置自動車、廃船処分の際の業界による所要資金の確保や処理のための技術開発、処分機構制度の創設などが挙げられる。
 また、都道府県単位に製造業者を含めた関係団体等の拠出による基金を設置することも検討に値するものと考える。
 しかしながら、後を絶たない不法投棄廃棄物を止むを得ず都市の経費で処理しているという状況もあるので、処理責任、費用負担のあり方を明確にすることを検討するとともに、当面の措置としては、不法投棄者が特定できない場合における処理のための国、都道府県の支援策が必要である。
 なお、不法投棄が産業廃棄物である場合には、都道府県の負担により処理すべきである。

(3)都道府県の産業廃棄物行政への主導性の発揮
①都道府県の積極的対応の必要性
 産業廃棄物については、都道府県の指導監督の下で排出事業者の責任において処理することとされているが、処理施設に対し不安や不信を抱く市民の対応は容易ではない。市民の不安や不信を払拭するためには、都道府県が産業廃棄物行政における役割の重要性を深く認識し、積極的に取り組むことが必要である。その際、単に現行の産業廃棄物担当部門の拡充を図ることに止まらず、関係部局との連携を十分密にした執行体制の確立が望まれる。
②公共関与による最終処分場等の確保
 新たな制度として発足した「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」(平成4年5月法律第62号。)は、都道府県が主体となって、公共関与による産業廃棄物の処理施設整備を促進していくため、制度的枠組を提供するものであり、その役割と機能に期待するところは大きい。
 また、この制度では処理施設と併せ、周辺公共施設を一体的に整備していくこととされており、このためには、都道府県は関係市町村と十分な連絡調整を図りつつ、主導的な役割を果たしていかなければならない。さらに、一般廃棄物の最終処分場を併設することも検討すべきである。
③民間事業者の処理施設の設置要件
 改正廃掃法では、産業廃棄物処理施設の設置については、届出制から許可制となり、その許可要件として生活環境の保全上必要な条件を付すことができることとされたことは一歩前進である。しかしながら、施設の設置・運営に対する周辺住民の不安を考えれば、施設設置に対する関係市町村の同意をはじめ、関係市町村長に当該施設への立入りを認めるとともに、その維持管理状況の報告を義務付けるよう制度化するなど、都道府県、市町村が一体となって関与していく必要がある。
④マニフェストシステムの徹底等排出事業者への指導
 適正処理への前提条件として、産業廃棄物の流通(移動)の状態が十分把握され、管理されることが必要である。このため、今回の改正廃掃法によって特別管理廃棄物についてマニフェストシステムの制度化と国家資格による廃棄物管理責任者の設置の義務付けが行われることとなったが、これを産業廃棄物全般について適用し、特にマニフェストシステムの徹底を図るとともに、併せて産業廃棄物を排出する事業者に対する管理計画の策定を、排出量の多少にかかわらず義務付けることが必要である。
 また、排出事業者の自覚を促すとともに、零細な処理事業者の抜本的な育成策を講ずることによって、適正な処理を確保すべきことは言うまでもない。
 
6 廃棄物問題の国際的対応
(1)リサイクルの国際的対応
 これからのリサイクル問題は、国際的視野に立った取組も必要である。
 リサイクルは、昨年(平成4年6月)、ブラジルで開催された地球サミットにおいて表立ったテーマとはならなかったものの、21世紀に向けての行動計画である「アジェンダ21」において、廃棄物問題が取り上げられているところであり、早晩、国際的課題とされよう。国における国際的対応が必要とされる所以である。
 例えば、リサイクルの推進に当たり国際的協調の基に、先導的役割を果たすとともに、新たな非関税障壁を生ずることのないような配慮、検討が必要である。
 また、我が国では回収ルートの未整備や経済的に見合わない等の理由によりリサイクルが進んでいないことから、再生利用可能なものが多量にごみとして処理されている現状にあるが、古紙や古タイヤ、中古車、放置自転車等でも、海外では有効利用されるものもある。従って、資源を地球的規模で保護する立場に立って、我が国の余剰回収資源の活用を図るため、移出ルートの充実など条件整備を検討していくべきである。
 さらに、都市における具体的取組としては、諸外国の友好都市との各種交流事業の中で、ごみ減量化、リサイクルへの対応、ごみ処理施設、市民への協力、啓発手法等についての意見交換を行うことなども国際的視野からの認識を深める方法である。
 また、NGOなどの国際的組織、機関を通じての役割を果たすことも一つの方法である。例えば、地方自治体が更新等のために生じた不用備品について、民間外援助団体を通じて開発途上国などに譲与を行えるような活用方策なども検討すべき課題である。
 
(2)国際的廃棄物問題への対応
 有害廃棄物の国際越境問題については、バーゼル条約に加入し、同条約の的確かつ円滑な実施を確保するため、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(平成4年12月法律第 108号)が制定されたところであるが、本条約により有害廃棄物の不適正な処分や不法投棄の防止を図り、地球環境問題に貢献すべきである。
 また、廃棄物の海洋投棄については、ロンドン・ダンピング条約等により規制が行われているところであり、廃棄物の投棄による海洋汚染の防止を図るため、これらの取決めを遵守し、適正な措置を講ずべきである。

(3)開発途上国への技術協力等
開発途上国の環境汚染、自然破壊等の拡大が危惧されている今日、我が国の優れた公害防止、上下水道、ごみ処理面での技術協力、研修受入れ等による技術者の育成をはじめ、自然保護やごみの減量化、リサイクルに関する情報交流など環境問題解決に向け牽引的役割を果たしていくことにも、国のみならず地方レベルにおいても力を注がなければならない。
 
むすび 
 以上、本提言では、廃棄物処理事業の執行に直接携わる都市の立場から、「ごみの減量化、リサイクル推進のための意識転換」、「資源ごみのより積極的な有効活用」、「有料制導入への対応」、「最終処分場の確保対策」、「発電、余熱利用施設整備の推進」、「適正な廃棄物処理の推進体制」等を中心に、その基本的あり方について述べたが、今日の廃棄物は量のみならず質の多様性が、その処理を一層困難にしている。
 資源に乏しい我が国にとって、地球環境の保護の面から、「ごみ」をもう一度見直して、その活用を図り循環型の経済システムの確立を図らなければならない。
 そのためには、廃棄物問題が国民的、国家的課題であることを認識し、各都市が相協力して有意義な広域行政システムを確立するとともに、地方自治体、事業者そして住民共々に、ごみ問題に対する各自の役割分担を自覚し、計画、実行、評価して行かなければならない。その場合、国における適切な公共関与と財政面での支援策が特に重要となる。
 ごみ問題は、最も身近な環境問題でもあり、「地球規模で考え足元から行動を起こす」という認識に立ち、国民一人ひとりの意識と行動が、国境を越えた環境問題解決へつながることを肝に命じ、廃棄物対策を強力に推進し、ごみが合理的に収集、運搬され、環境問題を起こさない形での処理が、国民の間に早期に定着し末長く継続することを期待して止まない。
 

 

※掲載の資料はシステムの関係上、発表月の1日付としていますが、必ずしも当該の日に発表されたものではありません。