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全国市長会会長
広島市長 松井 一實 |
実(巳)を結ぶ一年に
令和7年の年頭に当たり謹んで御挨拶を申し上げます。会員市・区長の皆様には、全国市長会の諸活動に御尽力をいただいておりますことに対し、厚く御礼申し上げます。
新年を迎えますと昨年の能登半島地震が思い起こされます。被災地の方々におかれましては、その復旧・復興に向けて懸命に当たられておりますが、本会といたしましても、引き続き、一丸となって被災地を支援してまいる所存であり、全国の市・区長の皆様の格別の御協力、御支援をお願い申し上げます。あわせて、住民の生命と財産をこれからも守っていけるよう、防災・減災、国土強靱化対策の充実強化について、引き続き、国に対し求めてまいります。
さて、昨年6月の第94回全国市長会議において、第31代全国市長会会長に選任いただきました。少子高齢化や人口減少問題への対応、地方創生を始めとして、都市自治体が直面している様々な課題について、市・区長の皆様の英知を結集し、ワンチームで取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
人口減少への対応による新たな地方創生の実現
人口減少問題につきましては、我々都市自治体として、存立そのものを揺るがしかねない課題と捉え、危機感を持って、それぞれの地域の実情に応じた多様な取組を進めてまいりました。
しかしながら、地方の人口は減少し続け、東京圏への人口の一極集中に歯止めがかからないという極めて厳しい状況にあります。
昨年誕生した石破内閣においては、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、12月24日には、本年夏にとりまとめる基本構想に向け、安心して働き暮らせる地方の生活環境の創生や東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散などの5本の柱に沿った政策体系を検討することを盛り込んだ「基本的な考え方」が決定されるとともに、当初予算において、交付金が倍増され2000億円が計上されるなど、地方創生2・0の具体化に向け動きだしております。
我々といたしましても、こうした国の動きに合わせて、若者・女性にとって魅力ある地域づくりをはじめとする新たな地方創生の実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。あわせて、改組した「地方創生対策特別委員会」などの場において、大いに議論を行い、国に対する働きかけを強めてまいります。
地方税財源の確保
年末の地方財政対策においては、地方一般財源総額について、給与改定等に係る人件費の大幅増やこども・子育て政策の強化等に要する所要額が確保され、地方の一般財源総額(交付団体ベース)及び地方交付税総額とともに、前年度を上回る額が確保されました。
また、税制改正におけるいわゆる「103万円の壁」の見直しについても、現下の物価動向や、様々な働き方改革の取組に配慮していく中で、個人住民税の「地域社会の会費」としての性格も踏まえつつ地方税財政への影響等を勘案した上での取りまとめがなされました。税制改正や地方財政対策について、各市・区長さん方の熱心な働きかけをいただき、感謝申し上げます。
デジタル社会の推進
デジタル化につきましては、国において、デジタル技術を活用して公共サービス等の維持・強化と地域活性化を図るための施策を推進しており、我々といたしましても、将来を見据えしっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。
そうした中、システム標準化への移行につきましては、本会としての、国に対する働きかけもあって、年末に改定された地方公共団体情報システム標準化基本方針により、移行期限の5年延長がなされることとなりました。我々といたしましては、移行期限内の安全・確実な移行を達成するために財政措置を含め地域の実情を踏まえたきめ細かい支援や、ガバメントクラウド利用料等の運用経費について、現行よりも負担増とならないようにすることなど、国に対し、引き続き働きかけを行ってまいります。
結びに
今年の干支は巳(へび)です。脱皮をする蛇が、困難があっても紆余曲折しながら進み再生と変化をもたらすことを想像させることから、巳(み)年は新しいことが始まる年になると言われ、また、「巳」を果実の「実」にかけて「実を結ぶ」年とも言われます。都市自治体には多くの課題がありますが、それらに適切に対応するとともに、新たな時代における市・区民の豊かな生活のため、全国市長会の市・区長が一致団結して取り組み、より大きな実を結ぶ一年にしていきたいと考えております。
また、世界各地で紛争が発生・長期化し、核兵器使用のリスクが懸念されている中、今年は被爆80周年を迎えます。改めてこの機会に、平和を願う市民社会の総意が世界中の為政者の心に届くような環境づくりに思いを致し、世界平和を祈念いたします。
市・区長の皆様におかれましては、より一層の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げまして、年頭の御挨拶とさせていただきます。
(市政 令和7年1月号より)