ページ内を移動するためのリンクです。

第31代全国市長会 会長 松井一實(広島市長)就任挨拶

  全国市長会会長
    
広島市長  松井 一實
真の地方分権・真の地方創生の実現に向けて

 

はじめに
 本年1月に発生した「令和6年能登半島地震」では、多くの尊い生命が失われるとともに、多くの住民の皆様が被災され、半年が経過した今もなお、不便な生活を余儀なくされています。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。また、被災地域の復旧・復興に向け、日夜懸命に陣頭指揮に当たられている首長の皆様並びに職員の派遣など様々なかたちで被災自治体の支援に尽力されている全国各地の首長の皆様に心から敬意を表します。
 さて、去る6月12日に開催された第94回全国市長会議通常総会において、第31代全国市長会会長に選任いただきました。自然災害が激甚化・頻発化する中で、被災自治体の迅速な復旧・復興はもとより、中・長期的な視点に立った防災・減災、国土強靭化の取組に注力する必要があると考えています。
 その上で、少子高齢化や人口減少への対応を始めとして、社会経済情勢が大きく変化する中で、都市自治体が直面している多岐にわたる課題について、市区長の皆様の英知を結集し共に協力し合いながら取り組む所存でありますので、皆様のお力添えを賜りますようお願いいたします。
 
「競争」から「協調」へ
 成熟期に達した我が国は、その繁栄を持続させるため、これまで中央に集中する権限を地方へと分散してきましたが、この地方分権改革の現状を踏まえつつ、我々都市自治体が直面する諸課題を主体的に解決できる仕組みを構築するために、改めて、国と自治体の役割分担を再定義していく必要があると考えています。
 また、地方において、成熟に伴う社会経済の急速な変化に柔軟に対応していくためには、自治体同士が競い合うのではなく、共に補完関係を保ち、協調して、国の力も引き出しながら施策を進めるといった、「競争」よりも「協調」を重視する政策へと発想を転換する必要があるのではないかと考えています。
 こうした考えの下、私は、市長2期目において、国の連携中枢都市圏制度を活用しながら、近隣市町が互いに協調し、圏域内でのヒト・モノ・カネ・情報を好循環させることにより、地域資源や地域産業が付加価値を生み続ける「ローカル経済圏」の構築に着手しました。また、4期目となる現在は、これまで事業者間の「競争」任せになっていた鉄道やバス等の公共交通の管理・運用を道路と同様に「社会インフラ」と捉えた上で、本市と事業者が「協調」して管理・運用するものへと切り替え、利用者の利便性を重視した持続可能な公共交通システムの構築に取り組んでいるところです。
 
地域の総意を届ける
 地方分権が国政上で取り上げられてから四半世紀、また、地方創生の本格的な取組が始まって10年となります。この間に、全国の市区長が、地域の特性に応じ、工夫を凝らしながら展開してきた取組を基盤に、今こそ、全国815の市区長がワンチームとなって、全ての住民がそれぞれの地域で互いに支え合いながら、たおやかに、おだやかに暮らしていくことができる真の地方分権、地方創生を実現するべく、諸課題の解決に鋭意取り組んでいきたいと考えています。
 折しも、去る6月10 日に政府が公表した「地方創生10年の取組と今後の推進方向」では、地方創生に係る政策の総括として、取組には一定の効果があったと評価する一方で、人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要があるとして、今後、国は、人口減少や東京圏への一極集中等に関する認識を国民の間で広く共有しつつ、施策の検証や優良事例の横展開などを推進することで、それぞれの自治体が主体的に行う地方創生の取組を強力に後押ししていくことが示されました。
 さらに、6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、政府は、33年ぶりの高水準の賃上げ実現や、好調な企業の設備投資などを踏まえ、デフレから完全脱却し、成長型の経済を実現させるため、あらゆる政策を総動員していく方針を明らかにしました。また、国の令和6年度予算には、医療・福祉分野を始め、幅広い業種での賃上げに重きが置かれ、児童手当の拡充や保育の質の向上など、「こども未来戦略」に基づく「加速化プラン」の実施に向けた予算も計上されています。
 私たち都市自治体としても、引き続き、東京圏への一極集中の是正や経済の好循環、少子化トレンドの反転等に向けた国の動向を注視しつつ、都市自治体が抱える諸課題の解決に向け、国の制度を利活用するための方法を提案するとともに、改善すべき制度については、速やかな制度改正等を国に要請していきたいと考えています。その際には、各地域の民間組織にも連携を呼び掛け、地域の総意を反映した取組を国に提案し、より大きな支援を引き出すといった手法も試みてみたいと考えています。
 
結びに
 私は、立谷前会長の下で進められた災害応援体制の構築や国との緊密な連携など、これまでの全国市長会の取組成果をしっかりと受け継いで、急速な社会経済情勢の変化に対応できる都市自治体を創り上げるために全力を投入する決意です。日本最大の政策団体である全国市長会の市区長が一致団結すれば、必ずや真の地方分権、そして真の地方創生を実現することができると確信しています。市区長各位の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げます。
 
(市政 令和6年7月号より)