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立谷会長 年頭のごあいさつ(平成31年「市政1月号より」)

平成31年 年頭のごあいさつ

  全国市長会会長
    
相馬市長  立谷 秀清

 日本最大の政策集団として

 

  謹んで新年のごあいさつを申し上げますとともに、市区長の皆さまには全国市長会の諸活動にご協力をいただいておりますことに感謝を申し上げます。
 
 はじめに、東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、そして、昨年の大阪北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震などで被災された方々に改めてお見舞いを申し上げます。また、被災された自治体で復旧、復興に取り組まれている首長はじめ、職員の皆さんのご努力に心から敬意を表しますとともに一日も早い復旧、復興がなされますことをお祈り申し上げます。加えて、被災地の復旧、復興業務を支援するため、職員を派遣いただいている自治体の皆さまに感謝を申し上げます。それぞれの被災地では、引き続き人的支援を必要としておりますのでどうか実情をご賢察いただき、今後ともご協力をお願いいたします。
 
  さて、昨年6月の会長就任時に私は「地方政府は住民に最も身近な行政機関であり、この国の行政の一番の責任を持っているのが、地方政府の長であるわれわれ市区長。その大きな責任を持つ市区長が結集する全国市長会には「国の言うことを聞く」「国にお願いする」ではなく、「国と一緒になって地方のための政策を作り上げていく」という責務が課せられている。全国市長会は日本最大の政策集団であり、社会を動かす大きな力となる」と申し上げました。今年10月から開始される予定の「幼児教育の無償化」に関する国との折衝や調整は、全国市長会が政策集団として「国と一緒になって地方のための政策を作り上げていく」というものであり、政策形成能力や交渉能力の高さを示したものでもありました。
 
  昨年6月、正副会長が「子ども・子育てに関する決議」に基づき、幼児教育・保育の無償化に当たっては、①必要となる財源を確実に確保すること、②実務を担う地方側と十分に協議しながら制度設計をすること、③幼児教育・保育の質の確保と量の拡大を図ることなどを政府首脳等に直接要請いたしました。7月には「子どもたちのための無償化実現に向けた緊急フォーラム」を開催し、国の実務担当者に市長会の考えと懸念事項を伝えるとともに、「子どもたちのための無償化実現に向けた緊急アピール」を決議し、政府首脳へ直接要請いたしました。また、社会文教委員会や子ども・子育て検討会議では、望ましい無償化実現のための方策等について精力的に議論を重ねていました。そのような中、10月15日に開催された「国と地方の協議の場」で幼児教育・保育の無償化で必要となる8,000億円のうち、その半分を市町村に負担を求める財源計画が示されました。これに対し、市長会に結集する市区長それぞれが関係省庁や国会議員等に、明確な根拠を示しながら主張や説明を行い、「子どもたちのための無償化実現」に向けて奔走され、さらに市長会として11月15日「子どもたちのための幼児教育・保育の無償化を求める緊急アピール」を発しました。その結果、国からは、①地方負担分については、地方財政計画の歳出に全額計上し、一般財源総額を増額確保した上で全額を交付税措置する、②新たに無償化の対象となる認可外保育施設に係る負担割合を国1/2、都道府県1/4、市町村1/4とし、私立幼稚園(未移行園)についても現行の負担割合国1/3、市町村2/3から国1/2、都道府県1/4、市町村1/4とする、③無償化に要する経費(本体分)については初年度を全額国費対応する等の案が示されました。また、幼児教育・保育の質の確保や無償化についての具体的な実施マニュアルの策定については、全国市長会の要望どおり、少子化対策担当大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣と地方3団体によるPDCA協議会で議論し方法論を確立する方針が示されました。それを受け、12月10日の臨時理事・評議員合同会議で全国市長会としての対応を諮ったところ、多くの出席市長から国側の歩み寄りを理解する旨の意見があり、財源については国の提案を了としたところです。今後は質の確保や具体的な実施マニュアルの策定に向け協議を重ねることとなります。
 
  本来このような政策を実施しようとする場合、政策形成過程において地方側と協議しながら進めるべきものです。国には、昨年12月10日の「地方分権の趣旨を踏まえた国と地方の協議のあり方に関する決議」に基づき、地方に関する政策立案の際には十分に地方の意見を尊重し、合意形成の上で施策を遂行するよう強く申し入れを行ったところです。
 
  10月から「幼児教育・保育の無償化」が開始される予定です。保護者や子どもたち、さらには事業者の方々と直接向き合う現場ではさまざまな苦労があり、時としてトラブルが発生するかもしれません。しかしながら、全国市長会は人材の宝庫です。地域の宝である子どもたちの健やかな成長のため、お互いに知恵を出し合い、情報交換をしながら「子どもたちのための無償化」に取り組んでまいりましょう。子どもたちに一番近い立場にある私ども「政策集団 全国市長会」の腕の見せどころです。
 
  結びに、昨年12月、公益財団法人日本漢字能力検定協会が発表した「今年の漢字」は「災」でした。大きな災害が相次いだ一年でした。私どもは、これまでの災害の経験と教訓を忘れることなく、万が一に備えなくてはなりません。「備え」を使うことなく、本年が災害のない一年となり、それぞれの地域で生活をされる住民が平穏な日々を送ることを心から祈念いたします。
 
 

(市政 平成31年1月号より)