平成27年 年頭のごあいさつ
全国市長会 会長
長岡市長 森 民 夫
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個性を発揮した地域の発展のために
年頭にあたりまして、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
全国市長会の運営及び諸活動につきまして、旧年中に賜りましたご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。昨年は、広島市での土砂災害や各地での集中豪雨災害、御嶽山の噴火、12月早々の大雪など災害続きの1年でした。被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。今年こそ穏やかな一年になることを皆さんとともに祈りたいと思います。
さて、昨年は、日本創成会議の人口減少問題検討分科会が「ストップ少子化・地方元気戦略」と題する提言を発表し、「消滅可能性都市」というセンセーショナルな言葉が大きくクローズアップされました。このことを受けて、第2次安倍改造内閣では、人口減少対策を中心とする「地方創生」が政権政策の大きな柱として位置付けられ、昨年末に発足した第3次安倍内閣におきましても重要な政策課題とされております。全国市長会会長として、また地域のまちづくりを担っている市長としても、大きな期待を持っているところであります。
地方創生につきましては、昨年11月に衆議院が解散される直前に「まち・ひと・しごと創生法」、いわゆる地方創生法が成立しております。すでに石破地方創生担当大臣とは、法律が成立する以前から個別に面会しているほか、2回にわたって開催された「地方創生大臣と地方六団体の意見交換会」において、率直な意見交換を行ってまいりました。これらの意見交換の中で、石破大臣からは、「地方創生は、国・地方がともに手を携えて実施しなければならない」「地方の利益と国の利益が反することはないので、ともに考えて仕組みを変えていかなければならない」などの発言がありました。私からは、人口減少問題はマクロの視点からの取組が必要であり、市町村単体だけでなく、複数市町村の連携が重要であること、各都市の競争条件が異なっていることをしっかり把握すべきであること、国の縦割りの排除が重要で、省庁の施策を組み合わせることができるのは市町村であることなどを強くお伝えしました。昨年末に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョンと総合戦略」は、これらの意見交換が効をそうした結果と評価できるのではないでしょうか。
もとより人口減少問題は、各都市自治体がもっとも危機感を持っている問題であります。それゆえ、これまでも地域の活性化や産業振興、子育て支援施策の充実に懸命の努力を積み重ねるなど、地域の実情に合わせた様々な単独事業を実施してきております。今回、政府が地方創生を進める上で「地方の発意と自主性に任せる」とする地方の意向を重視する姿勢は、それぞれの地域の実情に応じた施策を行うという観点から、大いに歓迎するところではあります。しかし、それが「地方への丸投げ」「地方への責任転嫁」であってはならず、国が行うべきこと、国でなければ行えないことは国がしっかりと責任を持ち、国の責任において施策が実施されなければなりません。自由度の高い交付金の創設や、岩盤規制の撤廃、縦割り行政の排除、ナショナル・ミニマムの確保などについて、国の責任の下で進めることを引き続き強く求めていかなければなりません。
このようなことから、全国市長会では、「人口減少問題で住民に最も身近な行政主体である基礎自治体が、まずもって取り組むべきことは、子どもを産み・育てやすい環境をつくることである」と考え、昨年七月、政策推進委員会の下に「少子化対策・子育て支援に関する研究会」を設置し、精力的に調査・研究を行っているところであります。
また、全国市長会では、昨年12月から、ホームページ上に「都市施策検索システム(全国都市自治体の特色ある取組み事例のデータベース化)」をスタートさせたところです。 本年度のテーマは「人口減少対策」で、すでに各市から660件を超える施策が登録(1月6日現在)されております。随時登録・更新ができますので、積極的にご活用いただきたいと存じます。
地方分権改革につきましては、昨年4月に、個々の地方公共団体等から提案を募集する「提案募集方式」が採用され、これまで時限法の制定によって行っていた改革を、時限を限らずに継続して行っていくという大きな転換が図られました。しかし、その第1回目となる昨年は、地方から900件を越える提案がなされましたが、国から前向きな回答があったものはそれほど多くはなく、未だ地方分権に対する各省庁の抵抗は根強いものがあるといわざるを得ません。とりわけ、第一期地方分権改革から本会が求めてきた農地転用許可権限の市町村への移譲等の農地制度改革については、地方六団体が一体となって改革に向けた運動を強力に行っているところです。岩盤規制に風穴を開けるべく、その実現に向けて引き続き運動を展開していく所存です。
この一方で、地方分権が進み、都市自治体の役割や責任が大きくなっている中、それに見合った地方税財政の充実強化が必要であることは当然のことであります。しかしながら、法人実効税率の見直しに伴う地方税収への影響や償却資産に対する固定資産税の議論、税収の多くが市町村に交付・譲与されている車体課税の見直し、ゴルフ場利用税の廃止要請など、都市税制をめぐる情勢は未だ予断を許さない状況にあります。
また、消費税率の引上げが平成29年4月に先送りされましたが、この引上げ分は社会保障財源に充てるとしていたものであります。各市町村では、子ども・子育て支援新制度の本年4月の本格施行に向け、条例の制定や基盤整備等の諸準備を進めているところですが、消費税率引上げ先送りによって、その施行に影響を与えることはあってはならず、我々市町村が社会保障の充実確保に適切に対応できるよう、国において必要な財源を確実に手当てすることが必要です。
国民健康保険につきましても、運営主体の都道府県営化を着実に進める必要があります。
私が会長となってから、皆様の団結のおかげで、2度にわたる政権交代や東日本大震災という荒波に立ち向かい、国と地方の協議の場の設置、地方単独事業に対応した地方消費税の確保、不適切な税制改正の阻止、地方公務員給与問題への対応、第2期地方分権改革の進展など、様々な課題に対応することができました。
しかし、依然として、都市自治体を取り巻く環境は厳しく、山積する課題への対応を的確に行っていくことが求められています。わが国の再生は地方の再生なくして成し遂げられません。その最前線に立つ我々市長同士が、住民の方々の幸せのため、地域の発展のため、さらにはわが国の発展のためにこれまで以上に一致団結し、ともに歩みを進めてまいりましょう。
結びに、全国各都市のますますのご繁栄とご発展を祈念申し上げまして、新年のごあいさつといたします。
( 市政 平成27年1月号より )