ページ内を移動するためのリンクです。

森会長 年頭のご挨拶(平成26年「市政1月号より」)

平成26年 年頭のごあいさつ 

 全国市長会 会長  
 長岡市長  森    民  夫

原点を意識して、将来を展望する 


 年頭にあたりまして、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 また、全国市長会の運営および諸活動につきまして、旧年中に賜りましたご理解とご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。

 振り返ってみますと、とりわけ、昨年の税制改正や地方財政対策の議論に際しましては、全国の市長さん方が一枚岩となって、重要な課題に取り組まれたことを強く実感いたしました。
 結果として、税制改正としては、償却資産にかかる固定資産税やゴルフ場利用税が現行制度のままとされ、また、車体課税につきましては、一部課題も残りましたが、自動車税との負担水準の適正化等を図る観点から、軽自動車税の税率が引き上げられることとなりました。
 これら三税につきましては、本会として従来よりその維持等を強く主張してきたものでした。
 特に、昨年は、アベノミクスの影響で景気対策を追い風とした経済界や、オリンピック競技採用を背景にしたゴルフ関係者からの廃止要請があり、本会としても強い危機感を持って対応して参りました。
 また、地方財政対策につきましても、本年4月1日からの消費税等の税率引上げによる税収増や、地方財政計画の歳出特別枠や地方交付税の別枠加算の扱い、地方法人課税の見直しなど、例年とは異なる課題が多くありました。
 なかでも、地方法人課税の見直しにつきましては、税源の偏在を是正し、地方の財政力格差の縮小を図るとしておりましたが、少なからぬ影響を受ける都市もあること、さらには、この見直しが国の財政歳出削減のために行われるものではないこと等を主張しつつ、慎重に対応してまいりました。
 結果として、景気回復に伴う地方税の増収もあって、地方交付税が若干減少するものの、交付税の別枠加算が確保されることとなり、地方の一般財源総額は、前年度を約6,000億円上回る額が確保されました。
 年末の税制改正や地方財政対策の議論に際しましては、国の財政歳出削減を背景とした地方の税財政に対する各界の強い圧力に屈することなく、地域住民の生活を守るという強い意志のもと、各市長さん方が地元国会議員をはじめ産業界に強く働きかけていただいたことが、大きな力になったことは間違いありません。
 まさに、全国の市長さん方が一体となった成果であり、これが全国市長会の力であると強く感じました。
 

 昨年は、全国市長会はもとより地方自治・分権全体の流れの中で、一つの節目となる年でもありました。
 まず一つは、平成5年に、我が国が近代国家として誕生して、憲政史上初となる「地方分権の推進に関する決議」が衆参両院で全会一致により議決されて20年を迎えた年でした。
 この決議を端緒として、地方分権改革が進み、機関委任事務の廃止に象徴されるように国と地方、都道府県と市町村の対等性が示されたり、地方自治体の組織や運営の自主性や国からの事務権限の移譲が進むこととなりました。
 その後、三位一体の改革など地方に痛みを伴う改革もありましたが、歴代会長をはじめとした関係者の努力により、非公式ながら、国と地方が同一テーブルについて対等な立場で話し合う「国と地方の協議の場」が設けられるなど大きな前進もありました。
さらに、「国と地方の協議の場」は、法定化され、今日に至るまで定期的に開催され、この会議の議事録は、正式な文書として内閣から国会に提出されており、地方の意見を国会に伝える大きな役割も果たしています。今後は、この場を実のあるものとするために、努力して参ります。
本年一月の通常国会には、地方分権の改革のための第四次一括法案が提出されると聞いておりますが、政府におきましても、内閣に総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が設置されるなど、前向きな姿勢が示されております。
 さらに、この平成5年には、全国市長会等が国会や内閣へ意見提出できる権利が地方自治法に規定された年でもあり、節目ごとに具体的な提言をこれまで二度行って参りました。
 もう一つは、昭和38年の地方自治法の改正により全国市長会等の全国的な連合組織を法律上の届出団体とする規定が設けられてから、50年を経ています。
 全国市長会は、前身となる関西各市連合協議会の発足から既に115年を経て、任意の集まりから、法定化された組織となったことは、様々な面で、大きな意義があったと考えております。
 
 ところで、地方分権は、内政の大きな潮流となっていますが、地方税財政につきましては、前述したとおり、毎年、政府の予算編成作業と並行して、年末にあわただしく議論され、決定されます。
 明治10年に福沢諭吉が著した「分権論」では、「分権の議論あれば分財の議論も亦なかるべからず。蓋し権と財とは大概その通行の路を共にして、権の集まる所には財も亦集まり、権の分るゝ所には財も亦共に分るゝものなり」と述べています。
 既に、今から130年以上前に権限と財源は合わせて「(国から地方に)分ける」ものであるとしていることは、蓋し慧眼であるといえます。
 本来であれば、地方税財政改革も地方分権と同様に大きな潮流となるべきものです。
 例えば、財政格差の是正のような大きな問題などは、全国市長会では、従来から、本来、国・地方の税源交換などによって、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築すること、地方交付税の不足については法定率の引上げが必要であることを強く主張しており、今後も、この基本的な立場を堅持していかなければならないと考えています。
 
 改めまして、東日本大震災につきましては、まもなく3年を迎えますが、その復興は、未だ道半ばです。被災地の一日も早い復興は、国民全ての願いであります。そのためにも、各市からの人的支援を引き続きお願い申し上げると共に、全国市長会として国に対して迅速な対応を強く働きかけていきます。

 今年1月1日に、岩手県に滝沢市が誕生し、全国市長会の会員市は813となりました。
 全国の市長さん方の力を結集したとき、我が国の内政を動かす大きな原動力となります。 
 これまで全国市長会が歩んできた歴史と実績を踏まえながら、将来、10年後、20年後に、全国市長会の活動が住民の方々の生活や幸せ、地域の発展に大いに貢献できたとされるよう、市長さん方とともに尽力していかなければならないとの思いを新たにしております。
 結びに、今後の各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、新年のご挨拶といたします。

( 市政 平成26年1月号より )