会長就任挨拶

第79回全国市長会議におきまして、第28代全国市長会会長にご選任いただき、身に余る光栄と存じますとともに、その責任の重さを痛感いたしております。歴代会長の功績を受け継ぎ、都市自治のさらなる発展のために全力を尽くしてまいりますので、何とぞよろしくお力添えを賜りますようお願い申し上げます。 さて、私の地元長岡といえば、峠の「河井継之助」や米百俵の「小林虎三郎」が有名です。河井は、各藩が独自性を有して連合する国家、すなわち地方分権国家を目指しました。また、虎三郎は、「まちとは人が興すもの、まちづくりは人づくりから始まるのだ」という、教育によって地域が発展し自立していくと主張しました。最近では、天地人の「直江兼続」が有名ですが、兼続は生涯を通じて民・義・故郷への「愛」を貫きました。つまり長岡は地方分権の先進地であり、市長会会長として私は、郷土の精神を受け継ぎ、地方分権を推進するため、全力を尽くす所存でおります。
長岡市は、5年前、水害や地震の被害を立て続けに受けました。その対応に追われる中で、生活再建支援法等の各種制度が地方の実情に合わず、大変な苦労をしました。その後、法律は改正されましたが、何故、最前線で復興に取り組む市長が、こんな苦労をしなければならないのだろうかという疑問が、今回、会長に立候補したまさに原点であります。
近く政権選択の衆議院選挙が行われます。我が国がいよいよ二大政党時代に突入していくのではないかと予想されます。二大政党は感情的対立を呼びやすい一面があり、政党間の対立が泥仕合になるのではないかと心配している市民もいます。
国政の場を、マニュフェストを中心とした冷静な議論が行われる場にしなければなりません。そのために、現場をよく知っている我々市長会が、冷静な提案をする「第三の極」となり、新しい時代にあわせた政策提言集団としての役割を果たしていかなければなりません。
私は、これまでに国や県でも仕事をしてきた経験があります。その経験を通して言えば、市長が一番充実した仕事ができるという満足感があります。第一に、産業、教育、福祉等、すべてを総合して取り組むことができます。第二に、いつも市民の気持ちを肌で感じとることができます。第三に、政治家としては、ポピュリズムに踊らされることも比較的少なく、等身大の自分で勝負することができます。それが市長というものだと感じております。
したがいまして、市民生活に一番近いところで仕事をしているのが市町村であり、私たちは、その地域の特色に合った、市民の生活や暮らしに直結した政策に関しては、国や県以上の真のプロフェッショナルであると自負しております。様々な現場の声をくみ取り、それらを組み合わせて、より良い制度にしていく、新しい政策を立案していく、そういったことが求められております。皆さんとともに、自らの力を信じ、現場に密着した政策を実行することにより、模範を示していきたいと思います。
我々全国市長会が一貫して主張している「地方分権改革」これは、今までの日本の経済成長を支えた中央集権制度を見直すことであり、日本の閉塞感を打ち破る大きなパラダイムの転換と言えます。国や都道府県の権限をその裏付けとなる財源と併せて市町村に移すことは、一朝一夕に達成できる簡単なことではありません。しかしながら、徐々に改革の成果は表れてきています。少子高齢化が進み、住民ニーズが多様化した社会にあって、地方が成長し日本の活力を取り戻していくためには、地方分権はなんとしても進めていかなければならない喫緊の改革であります。
今この機に、800を超える都市が一致団結して地方分権推進のために努力を重ねていけば、必ずや分権は成し遂げられるものと信じております。皆さまからのご支援ご協力を重ねてお願い申し上げる次第であります。
結びに、全国各都市のますますのご繁栄、ご発展を祈念申し上げまして、就任のごあいさつといたします。