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2 有識者と市長がみる21世紀の都市及び都市政策(調査のまとめ) 〈21世紀の都市及び都市政策に関する調査報告(概要)〉

 2  有識者と市長がみる21世紀の都市及び都市政策(調査のまとめ)

 多くの問題を抱える現在の都市

現在の都市はさまざまな問題を抱えていると認識されている。大都市部では廃棄物問題、自然環境の悪化、災害に対する脆弱性の拡大、中小都市では廃棄物問題に加え中心商店街の空洞化、若者の流出と高齢者の増加が問題視されている。さらに、わが国の都市全体で財政の悪化と市民の市政への無関心が懸念されている。
 

 バラ色でない21世紀の都市の環境変化
 21世紀の都市の状況はどのようになるのであろうか。有識者の予見する都市の環境変化は決してバラ色ではない。長寿少子社会の状況については、在宅ケアの整備が遅れ家族や施設に依存する状況が続くとする回答が多かったが、生活に困窮する高齢者が顕在化するというより悲観的な意見や、長寿を支える社会システムが整備されるという楽観的な意見に分かれた。情報化については、パソコンの普及はかなり進展し、在宅勤務や在宅ショッピングを行う人が増えるものの情報弱者の問題が顕在化すると考えられている。

 グローバル経済の進展に関する影響としては、地域間の盛衰が起こり、単なる生産工場から世界の研究開発を行う工場やオフィスに変化する地域や新規産業への構造転換に成功する地域が現れる一方で、多くの都市は産業空洞化に直面すると見られている。前者の地域においては外国との交易や交流、外国人との共生が進展する。

 都市における環境問題は、リサイクルセンターの整備、自然エネルギーの活用、電気自動車の普及、水循環が推進されるが、廃棄物処理、大気汚染、自然保全など未解決で残され、大きな問題として残ると見られている。

 生活者のライフスタイルは多様化、流動化し、選択性の高い社会になり、生活重視の風潮が強まり、居住地の生活環境の向上や美しさに関する意識が強まり、ボランティア活動が活発化する社会になると予見されている。

 

いままでにない構造変化にさらされる21世紀の都市
 21世紀は新たな都市再構築の時代と見られている。有識者及び市長が予見する都市の構造変化は次のとおりである。 

 国土構造においては、東京一極集中は弱まり地方分散が進むが、都市の魅力やサービス格差によって都市が選択され、発展衰退が激しくなるという「都市間競争、都市選択の時代」を迎えている。地方小都市や農村部への移動や、マルチハビテーション(複数居住)も徐々に進展する。市長の多くは地方都市が活性化すると回答している。

 市町村の合併については、市長は大きくは進展しないと見ているが、県によって地域差が生ずると見られている。その過程で県の役割が徐々に薄れ、県の再編成や道州制などの新しい地方自治体制が模索される。都市へ権限移譲は飛躍的に進むが、現状と同様に国の関与が続くとしている。都市内部では、郊外化が進展するが、中心部の老朽化や工場遊休地の拡大、人口減少などのインナーシティ問題が顕在化し、「中心部の再生」に努力が傾けられる。

 市民との関係では、無関心層が増える一方で、積極的に市政に関わり、市民自治の責任を果たそうとする市民が現れ、NPO等による市民公益活動が盛んになっている。住民投票制度などの直接的な参政制度を導入する自治体も現れる。特に小都市においては福祉等に大きな人員や税金が投入され、他の業務についての効率化や民間への移管・委託が推進されている。行政改革により、自治体組織はかなりの程度フラット化され能力主義に移行し、企業経営的な考え方に基づき、「透明、高効率、高サービスの行政運営」が推進されている。市長は行政改革がかなりの程度進展すると回答している。

 

 21世妃の新たな都市の魅力
 21世紀の都市のキーワードとして、「環境・リサイクル」、「自然・エコロジー」、「安全・安心」、「市民・高齢者」が重視され 自然環境に恵まれ、環境対策に優れていること、高齢者でも安全、安心に生活できること、市民や高齢者の意見が市政によく反映されていることが都市の魅力としてあげられた。
 

 今後優先的に進めるべき都市政策
有識者、市長の多くが、今後の都市政策は、行政と市民が対等な立場で懇談会などを組織し、パートナーシップで立案を進めるベきであると回答している。

 今後、最も優先的に進めるべき都市政策として、有識者、市長とも「省資源・リサイクル政策」をあげている。都市類型別に見ると、大都市、中都市では、「省資源・リサイクル・廃棄物処理・地球温暖化政策」、「高齢者や障害者の自立を進める福祉政策」、「新規産業創業政策」、「創造性を伸ばす教育政策」、「都市商店街再生政策」、「公共交通整備政策」をあげている。小都市では、「省資源・リサイクル・廃棄物処理政策」、「高齢者や障害者の自立を進める福祉政策」、「新規産業創業政策」、「観光ツーリズム・都市商店街再生・農林漁業再生政策」、「創造性を伸ばす教育政策」をあげている。中都市、小都市では、それに加えて、「都市基盤整備政策」、「都市内幹線道路整備政策」をあげている。

 都市運営に関しては、「市民に開かれた情報公開政策」、「業務効率化政策」、「市民に参加を促す市民自治活性化政策」、「財政健全化政策」が重要であるとしている。中都市、小都市では、それに加えて、「周辺地域と連携し効率的な行政運営をめざす広域行政政策」が重要であるとしている。

 

長寿少子化に関する優先的施策
 今後急速に進展する長寿少子化に対応するために、成熟する地域社会において個人の自立と互助互恵を育むような抜本的な社会システムの変革を行う必要がある。具体的には、グループホーム等の高齢者・障害者の自立化を促進する住宅の供給、民間や市民団体による高齢者・障害者の在宅介護サービスの飛躍的な拡大、育児・介護休暇制度の実体的な充実、定年後の起業、就業やボランティア参加の支援等に優先的に取り組む必要があるとしている。
 

住宅及び社会資本整備に関する優先的施策
 住宅及び社会資本整備に関しては、「リニューアルと都市中心部の再生」に努力を傾ける必要がある。

 具体的には、小中学校の再編と地域福祉・防災拠点化、既存公共施設の有効活用を図りながら、都市中心部の老朽密集市街地の大胆な再生を図ることが重要であるとしている。その際、これまで緩やかだった土地所有権や土地利用に対する公共的制約の強化や、都市景観を考慮した公共的コントロールの強化、共同溝や電線地中化などの徹底も真剣に検討されるべきであるとしている。

 それに加えて、大都市部においては中心部への自動車の乗り入れ禁止など総合的な交通需要管理を行うことが重要であるとしている。また、有識者、市長とも特に中都市、小都市において、地域の独自の文化や伝統の継承やまちなみの本格的な復元などその都市の魅力を高める施策が重要であると回答していることが注目される。

 

地球環境問題に関する優先的施策
 地球環境問題は最も優先的、重要な都市課題である。ますます深刻化する地球環境問題に対処するためには、リサイクル廃棄物回収についての企業責任の徹底、デポジット制の拡大を図ると同時に、市民の側ではリサイクルや省資源の義務づけを行い、協働して取り組むことが重要であるとしている。また、廃棄物処理については、基準の厳格化と罰則の強化を図り、廃棄物処理技術に関する研究開発を支援することが必要であるとしている。       
         
 また、中心部における大胆な自然の回復や、義務教育や高等教育において、環境科目を必須化し、意識の変革を促すことも重要であるとしている。

 

より開かれた効率的な行政運営に関する優先的施策
 より開かれた効率的な行政運営を図るためには、有識者においては、国や県からの権限、財源の移譲を促し、行政内部では組織や事務の抜本的見直しを図り、シティマネージャー等の多様な市政運営方式を検討し、職員の能力のレベルアップを図ることが重要であるとしている。

 市民との関係においては、議員の人数の削減等による議会改革、住民投票制度の導入や住民組織への身近なまちづくりの委託などの協働性の強化、外部監査制度の導入等の透明性の強化が重要であるとしている。また、中都市、小都市においては、広域連合制度による広域行政への移行、施設やサービス等の共同化などの広域行政の強化が重要であるとしている。市長においては、行政事務の抜本的見直しや行政組織のスリム化、地方公務員の能力のレベルアップなど行政改革に積極的に取り組む姿勢が強く示されている。

 また、国や県からの権限移譲と同時に、財源移譲を求める声が極めて高い。 



 


今後民営化または民間委託すべき公共事業
現在行政が行っている業務については、より高いサービスを効果的に供給するために、次の事業は民営化ないし、民間や市民公益団体等への委託を検討する必要があるとしている。(回答率50%以上)
 

 

民営化が望ましい事業
民間や市民公益団体等への委託が望ましい事業
今後とも公共主体で運営することが望ましい事業
回答率50%未満
・公営分譲住宅の建設
・公立幼稚園
・公共交通(バス・鉄道)
・公共施設の維持管理 
・公園や街路樹の維持管理
・ホームヘルパーサビス
・ゴミ収集
・消防
・上水道の維持管理
・下水道の維持管理
・公立図書館
・学校給食
・公立保育所
・公立病院
・ゴミ処理
 
・老人ホーム