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(中心市街地の活性化対策に関する意見)A市 人口5万人

(中心市街地の活性化対策に関する意見)事例1  A市 人口5万人

 

1.中心市街地の現状
  当市の中心市街地は、明治・大正・昭和を通じて栄えた製糸業の発展により「蔵づくり」の町並みが形成され現在も残されているが、一方では道路が狭く家屋は老朽化し、近代都市としての機能が満たされていない。このような現状から都市機能の配置・都市空間の充実・商業近代化等を図り、面的な広がりと回遊性を持たせた、個性豊かな魅力ある中心市街地として再生整備することを最重要課題に据え「都市再開発基本構想」を策定し、昭和61年には、一地区において法定再開発事業が完成した。この時期と前後し蔵の町並みを保存し、これをまちづくりに生かそうと、市民による町並み保存運動が起こり「S.S町並みの会」が結成されこれを機に中心市街地は、開発と保全の整合を求められるようになった。

  このようなことから、現在、伝統的建造物の取り扱い方で公共事業実施に支障となる場合と、個人が建て替えを行う場合に建物を保存するのか、或いは移築、取り壊しかの調整が頻繁にある。

  一方、商業面では市街地部に商店街は25あるが、活発に活動している商店街は数が少ない。各種調査によると、本市が所在する県内の順位では人口は中位であるが、地元滞留率、吸引力係数、販売額等共に低く、大規模小売店舗の出店状況をみると、売り場 面積シェアは、他市に比較して低い地域でもある。又、本市は大きな河川を境にして県内最大の都市に隣接しており、車でどこヘでも買い物に行ける時代であることから、市全体の消費の内かなりの部分が市外へ流出する結果となっている。更に小売業の地域別販売力は、販売力係数でみると県内で最も低い方である。 

  このような状況から中心市街地の商店街の空洞化は大きな問題で特に空き店舗が増え、商業密度を高めるべき商店街が歯抜け状態になっており、その機能は益々低下している。その上、経営者の高齢化、後継者不足と個店の体力が低下しているため、商店街 としての活動も停滞している。又、中心市街地の定住人口の減少も商店街の衰退の大きな原因にもなっている。


2.活性化施策の概要並びに同施策実施上の問題点
 (1) ハード事業
   当市の中心市街地活性化施策は、平成元年に策定した「都市活力再生拠点整備事業」の9つのプロジェクトと、昭和63年に観光資源にも活用できる蔵の町並みを保存整備するために「歴史的町並み調査」、平成元年には「伝統的建造物群保存対策調査」等を実施した。現在、この基本方針に従って事業を進めている。

  ① 街路事業(身近な街路づくり支援事業)
   <概要>     
     地区再生計画を基に平成2年に計画策定(歴道)をし、平成4年に中心市街地を含む133ha が採択され、 現在、歴史的道筋の特殊街路2路線が完成し、幹線街路3路線は事業実施中である。
   <問題点等>
    ・ 用地買収移転補償の増大で市の財政負担が大きい。
    ・ 土地単価が高いため代替地(中心部)の確保が難しく郊外転出もあり、定住人口が減少する。
     完成した歴史的道筋の観光面への活用誘導が難しい。
    ・ 事業地内に伝統的な建造物が対象になると、その取り扱いが難しい。
    ・ 代替地提供者への税制緩和が低い。

  ② 街なみ環境整備事業
   <概要>
     歴史的町並み調査、伝建調査を基に身近な街路づくり支援事業の目的と整合させるため、平成5年「歴史的地区景観保存対策事業」を市単独事業として創設した。この事業は、中心市街地33haを対象に伝統的な建造物の修理、新増改築工作物、広告物等伝統的な建造物に模したもの又は調和のとれたものには、その事業費の2/3 (限度額500 万円)を補助する事業をスタートさせた。平成7年には、面積を48haに増やし、建設省所管の「街なみ環境整備事業」で事業実施中である。
   <問題点等>
    ・ 本事業は、住環境整備の一環であるため神社、仏閣等の取り扱いが難しく補助対象にもなっていない。
    ・ 対象地区が広範なため、事業効果が出るのに年数がかかる。

  ③ 密集住宅市街地整備促進事業
   <概要>
     整備計画区域6.9ha のうち、2.3ha を平成8年度に着手した。
   <問題点等>
    ・ 用地買収・移転補償で市の財政負担が大きい。
    ・ コミュニティ住宅建設用地の税制緩和が低い。
    ・ 整備計画区域内に商業集積(商業者)が少ない。

  ④ 市街地再開発事業(法定)
   <概要>
     現在、2地区(駅南地区全体4.1ha 、中央地区0.5ha )を計画している。中央地区は、中心市街地の中でも一番の中心で現在、関係地権者と勉強会を定期的に行い熟度も上がってきている。
   <問題点等>
    ・ 土地建物等の権利関係が複雑で最終的な合意形成の時点で困難が予想される。
    ・ 保留床の処分が今から心配される。よって、公共施設の導入も考えるが、現行制度では、市費の負担割合が大き過ぎる。
    ・ 多額な資金が必要な事から補助対象枠の拡大と補助率引き上げが必要である。

  ⑤ 優良建築物等整備事業
   <概要>
     中央地区市街地再開発事業予定地区の直近で、定住人口確保を目的に平成8年~9年に事業を実施した。建築延床面積4,038 ㎡(7階、分譲住宅38戸、非住宅2戸、合計40戸)を分譲中であるが完売には至っていない。
   <問題点等>
     法定市街地再開発事業と同様に補助メニューを強化し、販売単価を下げないと需要が少ない。

  ⑥ その他のハード事業(県立病院整備事業・駐車場整備事業)
   <概要>
     中心市街地の一部に県立病院があり脳神経外科設置に伴い、全面改築を進めている。規模は、診療科15科、病床数310 床、敷地面積2h a弱で、平成14年開院の予定である。
    駐車場整備については、商店街が自ら駐車場を整備する補助融資制度はあるものの、既にその制度を利用して立ち上げる力が弱いため、中には整備当時の借入金返済等で行き詰まり、市へ駐車場の買い入れの申し入れもある。
   <問題点等>
    ・ 外来患者や見舞客をいかに商店街へ誘導するかである。
    ・ 駐車場整備については、年次計画的な対応はないが、今後は公設民営の駐車場建設も検討する必要がある。

 
 (2) ソフト事業(商業振興事業)
   中心市街地には、いくつかの商店街があるが、体力低下が著しく残念ながら、商業者だけの力で立ち上がるのは困難な状況である。
   前述のとおり、中心市街地には、蔵の町並みが残され、保存対策に積極的に取り組んでおり、これらを観光資源とし観光客を集め、商業振興に結び付けていきたい。一例を上げれば、町並み保存運動の先頭に立っている「S.S町並みの会」では、年1回2日間「町並みフェスト」と称し、民家のお庭開放、お座敷拝見、小路の散策、町並みウォッチング等を繰り広げて多くの観光客を集めている。これと同時に商店街も特別大売出しを企画し、一定の成果を上げはじめている。このように、当市中心市街地の商業は個店段階での販売努力だけでは、成り立たない時期にきており、従来からの振興策等の他に当市に残された歴史的な資産や文化伝統を十分活用し、独自性を持った商業振興に活路を見い出そうと考えている。

  ① 商業活性化事業(市単独補助)
   <概要>
     商店街又は商業団体等が、商業活性化のための調査・計画事業設計、システム開発及び実験的事業(イベント等)に一定の補助をする。
   <問題点等>
    ・ 平成9年度は3商店街等が活用予定である。
    ・ 本年4月から名称を「商店街活性化事業」より現在の名称に変更し、補助団体の拡充を図った。
    ・ 市単独事業のため、市の負担が大きい。

  ② 商店街共同施設設置事業(市単独補助)
   <概要>
     卸売・小売業、飲食店及びサービスを営む中小企業者業が3者以上で組織する団体がアーケード、街路照明施設、共同店舗、外来者用駐車場等を設置する場合一定の補助をする。
   <問題点等>
    ・ 要綱施行後、該当事業は1件だけで要望がない。
    ・ 今後、補助対象事業の見直しと駐車場の補助率の引き上げを検討し、蔵づくりの共同店舗設置の推進を図る。 
      ・ 市単独事業のため、市の負担が大きい。

  ③ 商店街環境整備事業(市補助+県補助)
   <概要>
     商店街の街路灯、アーケード、アーチ、カラー舗装等と特別事業としての商店街のコミュニティ施設、駐車場の建設に一定の補助をする。

  ④ 商店街空き店舗活用事業(市補助+県補助)
   <概要>
     空き店舗を商店街の集客に役立つ施設に改修するのに要する経費と空き店舗の建物又は土地の賃借料に一定の補助をする。
   <問題点等>
     建物、土地の賃借料は市独自の補助制度で平成9年から施行した。今後、課題としては、中心市街地全体のタウンマネージメントと行う機関の設置が必要であり、空き店舗活用もその中で取り組む必要がある。

  ⑤ 土産品等開発事業(市単独補助、融資)
   <概要>
     当市を印象付ける土産品等の開発及び販路拡大を図るため、開発に要する経費の一部を補助し、交付決定を受けた者が、当該事業に係わる土産品等の製品化を行う場合には、融資制度もセットになっている。

 
  ⑥ ミニ博物館設置事業(市単独補助)
   <概要>
     伝統的建造物の保護と、市民文化の振興に寄与するため、美術工芸品又は文化財を公開するための、ミニ博物館を設置した場合一定の補助をする。
   <問題点等>
    ・ 過去2件の該当事業があったが、要望がない。
    ・ 今後は、空き店舗活用事業と合わせ事業推進を図るが、補助率と限度額を引き上げる必要がある。
    ・ 市単独事業のため、市の負担が大きい。

 

※掲載の資料はシステムの関係上、発表月の1日付としていますが、必ずしも当該の日に発表されたものではありません。