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平成15年度 都市税制改正に関する意見(平成14年10月2日)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」において、国の関与を縮小し、地方の権限と責任を大幅に拡大するという方針の下、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方について一体的に検討し、今後一年以内を目途に具体的改革案をとりまとめることとされ、また、総務大臣の「制度・政策改革ビジョン」における地方税財政改革においても同様の考え方が示されたところである。
 今後、自主自立の分権型地域社会を実現するため、国から地方への税源移譲による地方税財源の充実確保の早期の実現について、積極的に取り組まれることを期待するものである。
 言うまでもなく、現下の地方財政は、地方の歳出規模と地方税収入との大幅な乖離という基本的な問題のほか、景気の低迷による税収の落ち込み、国の景気対策による減税や公共事業の実施等による巨額の財源不足に加えて、臨時財政対策債等の増発による多額の借入金の増大など、今や極めて厳しい構造的な危機状況にある。
 このような中、特に都市自治体にあっては、国民健康保険や介護保険の運営、廃棄物・リサイクル対策、広範な社会資本の整備、中心市街地の活性化、地域経済対策、電子自治体の推進など、住民に最も身近な行政主体として、数多くの課題に直面しており、さらにその責務は地方分権の進展とともに益々重大になってきている。
 したがって、都市自治体が、より一層行財政改革を徹底しながら住民との協働の下に、自己決定と自己責任に基づく施策を実施していくことができる安定的な税財源が確保される必要がある。
 国においては、このような認識の下に、平成15年度の税制改正において、下記事項につき必要な措置を講ずるよう要請する。

1 税源移譲等による都市税源の充実強化について
 分権社会の到来に向けて、都市自治体がその責任を果たしていくためには、地方の歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、国から地方への税源移譲の具体化が必要であり、当面、「地方財政の構造改革と税源移譲について(試案)」による国税対地方税の割合1対1の実現を目指し、所得税から個人住民税への、また、消費税から地方消費税への税源移譲等を含む抜本的な地方税制改革を早急に進め、都市税源の充実強化を図ること。

2 個人住民税の充実確保について
(1) 市町村の基幹税目である個人住民税は、これにより地域社会の費用を住民が広く応能・応益負担している税であり、安定性と伸長性を有する極めて重要な税であることを踏まえてその充実を図ること。
(2) 個人住民税均等割については、人口段階毎の税率区分を一本化するとともに税率を引き上げること。また、個人住民税均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻に対する均等割等の非課税措置を見直すこと。
(3) 生命保険料控除及び損害保険料控除については、その創設目的に鑑み廃止を含めた見直しを行うこと。また、配偶者控除など人的控除などについても課税の公平・簡素、男女共同参画などの観点から見直しを行うこと。
(4) 利子・配当所得に対する課税のあり方については、税負担の公平を図る見地から、適切な見直しを行うこと。

3 法人住民税の充実確保について
(1) 法人所得課税については、都市行政との関わりの大きさ、都市税源としての重要性等を考慮し、法人住民税としての市町村への配分割合を充実すること。また、地方税全体としての安定確保のため、これまで地方六団体が要望している法人事業税への外形標準課税の導入を平成15年度税制改正において実現するとともに、導入に当たっては法人住民税等関連する税制の取扱いについても十分配慮すること。
(2) 法人住民税均等割の税率を引き上げること。
(3) 日本銀行については、国庫納付金が所得の算定上損金に算入することとされているため、国庫納付金の多寡によって法人住民税の税収に大幅な変動を来たすなどの問題があるので、これらについて根本的な見直しを行い、安定した税収入を確保できるように措置すること。

4 固定資産税の安定的確保等について
(1) 固定資産税については、都市の基幹税目であることから厳しい都市財政 の状況を踏まえその安定的確保を図ること。また、商業地等の負担水準の上限については、現行の70%を堅持すること。
(2)土地の負担水準について、課税の公平性の観点から、速やかに均衡化が図られるような措置を導入すること。
(3) 固定資産税に係る評価・課税制度について、納税者がより理解しやすい仕組みにするとともに、税務事務の円滑化に資するよう更に配慮すること。
(4)市町村合併により、新たに三大都市圏の市(特定市)になる地域に所在する市街化区域農地について、所要の経過措置を設けること。

5 ゴルフ場利用税の充実強化について
 ゴルフ場所在都市にあっては、ゴルフ場関連の財政需要もあり、ゴルフ場利用税は貴重な財源であることから、その充実強化を図ること。

6 特別土地保有税の堅持について
 特別土地保有税については、土地の有効利用を促進する税制として重要 な役割を果たしており、また、都市の貴重な財源であることから、これを堅持すること。

7 事業所税の充実強化について
 事業所税については、都市環境の整備を推進するための重要な財源であることから、現行制度の堅持はもとより、その充実強化を図ること。また、課税団体の範囲を拡大すること。

8 軽自動車税の充実改善について
 軽自動車税については、相当長期にわたり税率が据え置かれていることや自動車税との負担の均衡を考慮し、税率を引き上げること。
 なお、原動機付自転車については、徴税効率が極めて低いことに鑑み、課税方法、課税対象等について、早急に実態に見合った見直しを行うこと。

9 定額課税の見直しについて
 入湯税、特別とん税等の定額課税については、相当期間にわたって税率が据え置かれていることから税負担の均衡、物価水準の推移等を勘案し、税率を引き上げること。

10 市町村道路財源の充実強化について
 市町村道の整備水準及び市町村道に係る特定財源比率は、国に比し依然として低い現状に鑑み、自動車重量譲与税等の市町村への配分割合を引き上げるなど市町村道路財源の充実強化を図ること。

11 航空機燃料譲与税の充実について
 空港関係市町村における航空機騒音対策事業、周辺整備事業等に要する経費が増大していることに鑑み、航空機燃料税の税率を引き上げるとともに、市町村に対する配分を充実すること。

12 非課税措置等の整理合理化について
 地方税における非課税等特別措置については、税負担の公平確保の見地からより一層の整理合理化を図ること。特に、固定資産税等の非課税措置、課税標準の特例措置については、抜本的な見直しを行うこと。
 また、国税における租税特別措置についても、引き続き見直しを行い、地方税収を確保すること。

13 国家石油備蓄基地を国有資産等所在市町村交付金制度の対象とすることについて
 国家石油備蓄基地の土地・施設については固定資産税が課税されているが、特殊法人等整理合理化計画に基づき、これが国の所有となれば地方税法上非課税となる。
 本事業は、所在市町村の協力が必要不可欠な事業であること、非課税となれば関係自治体の税収に大きな影響を及ぼすことから、引き続き安定的に財源確保できるよう、これら施設等の性格に鑑み、国有資産等所在市町村交付金制度の対象とし、その所要額を確保すること。

14 政令指定都市等に対する税制上の措置について
 政令指定都市については、国・道府県道の管理その他の事務配分の特例が設けられていることから、これらに見合う税制上の特例措置を充実すること。
 また、中核市及び特例市についても、事務配分の特例等実態に即した税制上の特例措置を設けること。

15 環境税制の導入について
 いわゆる環境税制の導入に当たっては、環境施策において都市自治体の果たしている役割及び財政負担を十分勘案した地方税とすること。

16 地方税における電子化の推進について
(1)電子申告システムの検討に当たっては、セキュリティーを確保するとともに、市町村の実態を十分考慮し、納税者の利便性、事務の効率化に資するシステムとすること。
(2)社会保険庁からの公的年金等支払報告、国税庁所管の確定申告データ、法務省所管の不動産登記データ及び軽自動車等登録機関保有の軽自動車税の課税データについては、提供された一覧表等を基に改めて市町村が電算入力を行うなど、多大な労力と費用を費やしていることから、これらのデータ提供については、磁気媒体により行うこととすること。

17 税制の簡素化及び税務事務の効率化について
 都市税制に対する住民の理解と信頼をより確かなものにしていくためには、税負担の公平を確保するとともに、住民に分かりやすい簡素な制度とし、併せて、例えばコンビニエンス・ストアなどで地方税収納事務を行えるようにするなど、納税者の事務負担の軽減等を図り、税務執行の効率化を図ること。
 また、引き続き、税制上必要な措置を講じるほか、関係省庁・都道府県との税務行政運営上の協力体制を充実すること。