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はじめに

はじめに

 本報告書は、(財)日本都市センターに設置された「廃棄物に関する都市政策研究会」における、平成9年度及び同10年度の2ヵ年にわたる調査研究の最終報告である。
 廃棄物をめぐる環境が大きく変化する中で、都市自治体には、資源循環型社会構築のために、新しい考え方に立脚した廃棄物政策を確立することが求められている。このような認識のもとに、(財)日本都市センターでは全国市長会の委託を受けて、中長期的視点による総合的な都市環境管理の観点から、廃棄物管理の政策的枠組みと政策の基本的方針に関する検討・提言を行うため、「都市と廃棄物管理に関する調査研究」を実施することとした。「廃棄物に関する都市政策研究会」は、その具体的な検討と審議をお願いするための調査研究委員会であり、座長の寄本勝美・早稲田大学政治経済学部教授をはじめとする、廃棄物政策に精通する委員及び専門委員の参加を得て、資源循環型社会を構築するための廃棄物管理に関する研究活動を行っていただいた。
 研究会では、平成9年度には、全国市長会による、ごみ有料化提言といわれる「廃棄物問題を中心とした都市の環境問題に関する提言」(平成5年6月)以降の関連法律の制定・改正や諸施策の取り組み動向について整理を行うとともに、都市自治体における廃棄物管理に関する実態や政策動向等の把握のため、全国の都市を対象としたアンケート調査を実施した。 このような調査や検討を踏まえて、 平成9年度の調査研究の成果として、 平成
10年3月には、「都市と廃棄物管理に関する調査研究報告」(「平成9年度研究会報告」)を作成し、公表した。同報告では、資源循環型社会を構築するにあたっての基本的枠組みと政策のポイントを明らかにし、これらの理念のもとに新しい制度的枠組みとして、日本版の「循環経済・廃棄物法」の制定が必須であることを提言した。
 平成10年度においては、平成9年度報告にもられた諸課題を踏まえて、さらに効果的・具体的にそれらが実現されるよう、資源循環型社会構築に向けた法律の制定・整備、リサイクルの一層の促進、及びごみ有料化の導入・促進の3点に焦点を当てて研究を深め、その成果を提言することとした。また、家庭系一般ごみの有料化に関して、平成9年度のアンケート調査結果をもとに補足調査を実施した。 
 最終報告をまとめるにあたっては、平成9年5月から平成10年12月までの間に、準備会を含め12回にわたり研究会を開催するとともに、山本委員及び専門委員と当センターの研究室長及び研究スタッフとからなる専門委員会を13回にわたって開催した。また、本年度の研究会においては、ドイツの循環経済・廃棄物法の法体系や先行的な都市自治体の政策に関して、ご専門の方々から所見報告をしていただくとともに、各委員には最終提言の内容について、誠に熱心かつ真摯にご審議を賜り、数多くの貴重なご提言・ご助言をいただいた。
 本最終報告においては、資源循環型社会の構築と地球環境時代の進展のために必要な、総合的、包括的な「資源循環・廃棄物法」(仮称)の制定の必要性とその基本的枠組みを都市自治体のサイドから具体的に提示し、さらには、リサイクルの一層の促進及びごみ有料化の導入・促進についての実践的な方法を示すことによって、新しい廃棄物政策と制度のあり方を提言することができたのではないかと考えている。現在、全国市長会においては廃棄物政策に関する意見について、また、国においては廃棄物政策に係る制度の枠組みづくりについて、それぞれ検討が進められているやに仄聞しているところであるが、本提言がそれらの活動にいささかでも寄与できれば幸甚である。また、全国の都市自治体における廃棄物政策の指針づくりにあたっても、本提言が広く活用されることを期待している。
 最後に、本調査研究の実施、取りまとめにあたり、2ヵ年にわたってご指導、ご協力を賜った、寄本座長をはじめとする委員・専門委員各位、さらには研究会にご参加をいただき、ご助言を賜った方々、コメントをいただいた北村喜宣・横浜国立大学助教授、広くご支援をいただいた全国の都市自治体の方々、そして本調査研究の委託者である全国市長会の関係各位に、心から感謝と御礼を申し上げたい。

  平成11年1月

                     財団法人 日本都市センター
                        理 事 長 原   曻