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第2章  都市の政策課題

新時代の都市政策

2  都市の政策課題
1 課題の全体的認識
全国市長会では、この意見の取りまとめに当たって参考にすることを意図しつつ、全国約1000名の有識者を対象に「21世紀の都市及び都市政策に関する調査」をデルファイ法のアンケート調査によって行った。2回目のアンケート調査では、全市長も対象として意見を求めた。調査結果の詳細は別途の調査報告書に明らかであるが、ここでは、この調査の回答のうち、これからの都市自治体における政策課題に関するものを紹介しつつ、都市の政策課題を展望したい。
第一章において都市自治をめぐる諸環境について述べたが、政策課題はこのような環境変化への対応として生ずる面があり、従って、アンケート調査においてもそのような回答が多数を占めている。
市長の回答において、これからの都市政策として重要視されているものは、まず、
「高齢者や障害者の自立を進める福祉政策」
である。これは、有識者の回答においても同様であるが、いうまでもなく、急激な高齢化の進行により、市民に身近な行政主体の立場から最も重視しなければならない課題として認識されている。また、
「市街地の安全性を高める防災政策」
「病気の予防と適切な治療が受けられる保健医療政策」
も上位にある。このような項目に共通するのは安全、安心というテーマである。阪神・淡路大震災を契機とする防災意識の高まり等がこのような回答に反映されているのであろう。
次に、特に市長の回答が多いのが
「道路、下水道等の都市基盤整備政策」
であり、これにいろいろな面でかかわりを持つと見られるものとして、
「社会資本の更新と整備を進める市街地再生政策」
「街並みの修復整備を進める都市景観政策」
「緑を増やす都市緑化政策」
が挙げられる。有識者の回答のなかではこれらの項目のうち、都市景観、都市緑化が市長の回答よりやや多くなっている点に特徴がある。
これらのテーマは、都市づくりを進めるに当たって、市民から最も要望の強いハード面の基盤整備である。
これらとはやや異なるものであるが、
「創造性を伸ばす教育政策」
「多様な市民文化を創る文化政策」
も重要視されている。最近しばしば見られる少年犯罪への危機感のほか、文化活動の充実を都市の魅力要素の一つとしてみるからであろう。
また、「2025年における望ましい都市づくりのキーワード」を問う別の設問においては、市長も有識者も「環境・リサイクル」が断然トップの回答となっている。これが将来の人類の生存にもかかわる地球規模の重要課題と考えられていることを示すものであろう。
さらに、地域経済の活性化に関する設問においては、市長は、既存の製造業等の再生政策を重視しながら、それ以上に「新たな成長産業を育てる新規産業創業政策」を重要と考えている。既存の地域産業が厳しい状況に置かれていることを意識しつつ、時代の変化に即応した何らかの新しい産業の創出が地域の重要課題と考えられているのであろう。
さて、アンケート調査の結果のあらましは以上のようになっている。都市が当面する政策課題はここに挙げられたもの以外にも多数あるが、この調査結果のなかに、主なものが示されていると考えられる。以下においては、これらを参考にしながら都市自治に特にかかわりの深いいくつかの個別の課題についてその概要を記すこととする。
 
2 都市基盤の整備
街路、下水道、公園等のいわゆる都市基盤施設については、年々整備が進んでいるが、整備の歴史がなお浅く、さらに都市の発展とともに新たな施設需要が生じているため、欧米諸国に比べ相対的に立ち遅れている。そのため、今なお基盤整備に対する市民の要望は強く、都市自治体はこれにこたえるために懸命に努力をしている状況であるが、最近、国、地方を通じて財政が危機的な状況にあり、さらに高齢化の進展等によって、わが国の投資余力がさらに減少すると見込まれること等から、これからの整備の推進に懸念が抱かれるようになっている。
都市基盤の整備は、街路の整備等による都市の交通体系の方向づけ、土地区画整理事業による市街地の面的整備、これに伴う中心市街地の魅力向上等のように都市形成の基本的なあり方に大きな影響を与える。また、社会経済の進展に伴い、魅力ある都市として必要と考えられる都市基盤施設は、高齢化や情報化に伴う施設等一層多様化してきている。従って、今後とも基盤整備を推進していく必要がある。
また、これからの都市基盤施設の整備については、量的な拡大のみでなく、質的な向上が求められる。個々の基盤施設の整備について言えば、例えば道路整備の場合、特定の地点から地点への移動手段としての役割を果たしさえすればよいというものではなく、周辺環境への配慮、公園整備や花かざり等とも一体となった美しい景観、歩道へのくつろぎのスペースの確保、ポケットパークの整備等による快適性、高齢者や障害者のための福祉的配慮等多くの複合的な側面を持つことが望まれるようになった。また、さまざまなニーズがより強くなっている。例えば、都市防災については、都市生活の安全性を向上させるために公園、学校、公民館等の公共施設を防災拠点として整備するとともに、河川や急傾斜地の整備等により災害に強い都市構造を形成する等防災対策を総合的かつ計画的に推進することが求められるようになった。
このように、都市基盤整備にはこれまでの基礎的な課題と新たなニーズの双方に的確に対応した快適で安全な質の高いものが求められており、基盤整備はいわば都市形成の総合戦略のもとで進められている。これらが全体として、都市整備の総体的な基本構想のもとで進められることは当然であるが、さらに、具体的な整備に当たって、それぞれの施設が複合的・総合的な機能を果たすように配慮するとともに、一方、学校施設における空き教室の利用のように既存の施設に多様な機能を追加し、あるいは新しい施設を整備する時は最初から多目的な総合施設として計画する等さまざまな努力が払われている。
そのようにして都市基盤整備を進めるに当たって重要なことは、市民、民間企業等との協力連携である。計画、実施等それぞれの段階に応じた市民の適切な参加により、市民の理解を得るとともに民間の知恵の導入を図ることも必要である。さらに、施設の機能等に応じた民間資金の活用や土地区画整理事業等で地権者の協力を得やすくする方策についても検討する必要があろう。
また、いうまでもなく都市基盤整備については、都市自治体の責務が大きい。以上のように、市民の理解協力を得ながら都市形成への総合戦略のもとで整備を進めるについては、都市自治体が中心的な役割を果たすべきものであろう。
最近、都市の顔としてこれまでにさまざまな役割を果たしてきた中心市街地においては、居住人口の減少、モータリゼーションの進展、各種施設の郊外移転等により、空き地、空き店舗が発生する等いわゆる空洞化が進行し、その活性化が大きな課題になっている。全国市長会はこのことを重要な問題と受けとめ、市長を委員とする中心市街地活性化対策研究会を設置して検討を重ね、「中心市街地の活性化に関する意見」(平成912月)として結果を取りまとめたところである。その意見にも記されているように、市街地の活性化のためには、散在する用地の集約等により利用の促進を図る土地区画整理事業や市街地再開発事業の手法を活用した基盤整備が必要であるとともに、それだけでなく、これまで蓄積されてきた施設の有効活用、商店経営者と連携した商業振興対策の実施、住宅の整備、土地の有効利用の促進等市民と一体となった総合的な対策が必要である。従って、市街地活性化対策等は、その都市の実情に即しながら都市自治体が中心的な役割を果たすこととし、これを国等が支援する仕組みとすることが適当である。このように、都市基盤整備は総合的な都市形成戦略として推進する必要があるので、地方分権や財政制度をめぐる論議においては、そのような趣旨が実現されるよう検討が進められるべきである。
また、都市基盤整備については広域的な連携も重要である。日常生活圏として一体化している地域等では、個々の市町村ごとに完結的に発想するのでなく、広域的に連携しながら計画的に整備を進め、より多様な、より質の高い施設を効率的に整備することを目指す必要がある。
 
3 安全・安心の確保
市民生活の安全を守り、安心できる生活の条件を整えることは最も基礎的な課題である。具体的には防災・防犯政策や福祉政策として考えられるのが典型だが、都市計画事業等いろいろな施策のなかにもこの視点が求められる。
また、これからの安全・安心の確保には、行政の役割はもちろんのこと、市民一人ひとりの役割も重要であり、さらには市民相互の、あるいは市民と行政とのパートナーシップが重要な要素となる。
 
安全な生活の確保
わが国は、地震、台風等の自然災害が多く、加えて、都市空間の高度・広範な利用、さらに技術の高度化や施設の大型化が加わり、いったん災害が起こった場合の被害の規模も大きくなり質も変化している。災害に強い都市づくりのためには、避難場所の確保、急傾斜地の崩壊防止、建物の耐震化、不燃化をはじめとする都市改造等のハード面の整備と、防災教育、防災システム等ソフト面の整備を並行して進めなければならない。
阪神・淡路大震災で明らかになったように、特に、都市型災害では、防災情報・危機管理情報の提供と、避難空間の整備や救護のシステムを確立する必要がある。また、防災や災害対策さらには災害復旧のための都市間協力体制をはじめ、広域防災・災害対策システムの確立も急がれる。
そうしたシステムの確立に加えて、市民による地域の自主的な防災体制の構築が必要であり、さらに災害時にはボランティアを巻き込んだ市民による活動が重要となる。
災害対策のなかでも特に配慮しておかなければならないのは、いわゆる「災害弱者」の問題である。このために日頃から、一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯や、心身に障害を持つ人々等の所在を把握しておくとともに、非常の場合にそれらの人々との連絡がとれるような仕組みを用意しておく必要がある。そして地域福祉活動のなかに、このような非日常的な事態への対応を可能にする地域の組織化がなされていることが重要である。また、外国人を考慮した災害時の情報システムも望まれる。なお、このような活動を行政がすべて行うことは困難であるだけに、町内会、自治会を始めとする地域の市民の自主的な活動や各種の民間団体、ボランティアの協力、参加がとりわけ重要である。
交通安全対策においては、交通事故の犠牲者としてだけではなく、加害者となる危険もある高齢者への対策に配慮する必要がある。交通事故の被害者とならないための環境整備、ドライバーへの注意喚起等のほかに、高齢者への啓発活動あるいは老人クラブ等の人々による交通安全活動への参加等が望まれる。
また、高齢者や障害者向けの自動車の開発等も検討される必要があろう。
なお、市街地における車社会のあり方については、環境への影響、中心市街地の空洞化、高齢者や障害者にとっての住みやすさ等いろいろな面から、今後検討する必要が生じてこよう。
市民生活の安全については、犯罪の増加、凶悪化、低年齢化を見過ごすことはできない。地下鉄サリン事件のように思いもよらない事件も生じている。こうした問題は犯罪の取り締まりだけで防ぎきれるものではなく、人間を大切にし、規律を守って地域で共生していく、都市生活の社会的・文化的基盤の熟成・強化が重要であり、コミュニティー活動のなかでも取り組んでいく必要がある。
働く人々が男女を問わず、企業等の場だけでなく家庭や地域のなかでも人々との触れ合いや交流を深め、次代を担う子供たちの育成や地域づくり等さまざまな活動に参加することが望まれるが、これは広い意味での防犯対策としても意味がある。
 
安心できる暮しの実現
(1) 福祉供給システムの整備
福祉政策のなかでも、所得保障や医療保障等ナショナル・ミニマムにかかわる施策の推進は国の役割として考えられるべきであるが、高齢者や障害者や児童家庭等に対する介護を含む福祉サービスは、地域に密着したものとして、それぞれの都市において、その地域の特性に応じた供給システムやその運営のあり方に工夫を凝らしていかなければならない。特に、介護ニーズの拡大と普遍化が進むなかで、そのニーズに対応する施設やサービスについては、一方では保健、医療サイドからの施設・サービスの供給の広がりが考えられ、他方では多様な民間組織や事業者の役割が重要となってきている。その際に、いわゆるシルバービジネス等の介護関連サービスへの参加とともに、市民の自主的、主体的参加を土台とする多様なサービス提供組織の役割が注目されることになろう。
このようなサービス利用形態を実効あるものとするためには、第一に利用者の身近に多様なニーズに即応できる施設・サービスが整備されていることであり、第二に利用可能な施設やサービスの内容、利用方法等の情報が開示され、広く提供されていることである。第三に、どのような施設やサービスを利用することがより効果的であるか等についての相談を行い、必要な助言を得たり、また利用したサービスについての不満、苦情等を受け止める仕組みが用意されることが重要である。
このような利用者の意向を重視したサービス提供が現実に機能していくためには、人的、経済的な面で十分な条件整備が必要なことはいうまでもない。また、そのためには時間的段階も必要となろう。
また、諸般の理由によって個人の意志や能力で解決することのできない問題も少なくない。それらについては、行政を含む社会が全体として支えることによって、個人の自立を図っていかなければならない。市民が安心して生活していくために、国民の最低生活あるいは基本的生活を維持していくための行政の役割は重要であり、今後の保健・福祉サービスの利用に当たっても、行政責任で対応すべき仕組みから、利用者の自由選択によってニーズの充足を図るものまで、多様な利用形態が必要であろう。
(2) 統合的福祉システムの構築
健康で安らぎのある市民生活を保持していくため、保健、医療、福祉を総合的にとらえ、充実させていく必要があるとともに、まちづくり等他の施策との連携を強化することがこれからの課題となろう。
また、これからの少子高齢化社会を考えれば、保健、医療、福祉に限らず自治行政全体のなかに福祉的感覚ないし福祉的視点が必要になる。例えば住宅政策や建築政策その他をみても福祉の視点がこれからは重要な意味を持つ。
これを進めるための一つの方策は、保健・福祉行政の計画化である。現在、対象者別、課題別に保健、福祉その他の関連施策の連携や総合化がそれぞれの計画を通して行われてきている。今後、これら対象別、課題別の計画をさらに、都市における地域福祉計画として統合化することも課題となろう。さらにこれらの計画がニーズ充足に必要な施設、サービスとそのための資源調達の目標を明示した行政計画の域を超えて、市民参加、民間事業者の育成等を含めた計画とすることができるかどうかも課題の一つとなろう。なお、今後の施策においては、寝たきりの予防等各種の予防施策が重要であり、今後は予防の観点に一層の重点を置く必要がある。保健、医療、福祉の統合化を進める場合でも、自立支援、社会的統合、社会参加ということを念頭に置きながら、予防の観点からこの施策を構築していく必要がある。
(3) 市民のパートナーシップ
これからは、必ずしも行政主導ではなく、市民とともに、あるいは時には市民が中心となっていく参加型の福祉社会の構築を目指されなければならないであろう。近年、行政では有効に対応できない、そうかといって民間活動だけでは対応できない分野が広がっており、例えばごみ処理問題、環境保全等の分野にみられるように、行政と民間、市民、地域がパートナーシップを組むことが不可欠となっているものがある。
最近の高齢者の寝たきり予防や介護、障害者の支援、子育てのような課題もそのような性格を持つようになってきている。しかも、これらの活動は市民が日常的に生活している場において展開されることが望まれる。このような活動は従来の行政とは異なるものであり、ひいては地域連帯を醸成し、新しいコミュニティーづくりにもつながる可能性を持つであろう。利用者中心のサービス・システムをもとにした市民とのパートナーシップによる保健福祉のサービス利用システムが今後の重要な課題となろう。
(4) 広域的福祉システムの構築
市民が安心して生活するための基礎サービスとしての保健・福祉サービスについても必要な施設やサービスのすべてを一都市内でのみ充足させる必要はない。例えば介護サービスについても、一方では当該市町村の財政力の制約があり、また、施設サービスによってはより広域的な対応が適当な場合もある。 また、民間事業者によるサービスはスケールメリットという観点から、より広域に展開することが多いものと思われる。まして多様なニーズを持つ障害者に対する保健・福祉サービスでは、専門的機能を持つ規模の比較的大きい施設は広域的な利用が不可欠であろう。このため地域の実情に応じて、適切な圏域の設定、市町村連合方式や中心都市への事業委託契約等多様な形態による都市と周辺町村との連携に留意する必要があろう。
 
第4節 廃棄物対策の推進
廃棄物処理対策のあり方
大量生産、大量消費、大量廃棄の社会状況を反映して、廃棄物の不法投棄、焼却処分に伴うダイオキシンの発生、最終処分場の逼迫等の問題が深刻となっている。都市にとって、廃棄物処理は市民の健康を確保する公衆衛生上の問題であるとともに、快適かつ高質な都市環境の形成の点からも重要な課題となっている。
全国市長会は、平成9年1月に廃棄物処理対策特別委員会を設置して、廃棄物処理問題についての体制を整えた。それとともに、財団法人日本都市センターに廃棄物管理のあり方等に関する調査研究を委託し、同センターを通じて全都市へのアンケート調査「都市における廃棄物管理に関する調査」(全都市悉皆調査、以下「都市廃棄物調査」という)を実施した。
廃棄物処理問題については、これらを踏まえながら引き続き全国市長会として必要な対応をしていくが、いずれにしろ、都市の廃棄物問題の解決には廃棄段階だけではなく、生産・流通・消費の段階にまでさかのぼって対応する必要があり、また、市民の日常生活のあり方もこれには大きなかかわりがある。
廃棄物対策については、例えばドイツの「循環経済・廃棄物法」の制定(1994年)等にみられるように、国際的にも国内的にも1990年代になって大きく転換しつつあるといわれ、排出された廃棄物の処理・処分という従来の型の対応から進んで、企業、市民、行政を問わず、廃棄物の発生抑制を最優先とした戦略的視点と政策の体系化が求められている。例えば、「都市廃棄物調査」の結果においても、これからの廃棄物対策において優先すべき課題として、「廃棄物の発生抑制」を掲げる都市が459市(68.6%)に及んでいる。すなわち、これからの廃棄物対策では処理段階における対応以前に、廃棄物そのものを社会に発生させないことが基本であり、それでもやむを得ず発生したものについては、リサイクル活動等による資源回収を行い、それらを通じても残ったものをできる限り減量して処理処分するという基本的考え方の徹底が重要である。このことは、市民の生活スタイルや地域社会のいろいろな仕組みに大きくかかわるものであり、市民の理解と協力が極めて重要である。
ごみの減量化と資源リサイクルについては、まずは製品をつくり、社会に投入する生産、流通の事業者のかかわりが大きい。安全な原料等によるリサイクルを可能とする製品そのものがつくられなければならないし、市場に流通されなければならない。また、製品等の特性に対応したリサイクルシステムが形成されることも必要である。それらに加えて、リサイクルシステムがコンスタントに機能するように、リサイクル需要を高めることも必要である。それらの点では、生産者や流通事業者の役割、責務は極めて大きく、その行動様式がリサイクル文化の担い手としてのものに変わっていくことが望まれる。
その上で、消費者や市民は、生活資材のうちからリサイクルに適切ではないものを除去しつつ、一定のルールに従って、リサイクル市場等へ持ち込むという役割を担うことになる。また、これらのシステムが円滑に機能するよう、国には必要な制度を定める等の役割があり、都市自治体もこれに呼応しつつ、地域の状況に応じて適切に対応していかなければならない。
ところで、廃棄物処理に関しては、これまでにも生ごみのたい肥化や資源ごみからのリサイクル製品生産等、いろいろな工夫がされており、固形燃料化(RDF)、灰熔融、ガス化熔融技術、エコセメント生産、プラスチック類の油化、ごみ焼却発電等の技術も開発され実用化されているが、さらに、リサイクルの推進、ダイオキシン問題への対応、最終廃棄物の減量等に向けた新しい技術開発が望まれる。
 都市自治体においては、処理施設の整備や管理にあたり、プラントメーカー等との協力のもとにそれぞれ開発を行ってきているが、国の関係機関による研究開発の推進やこれに対する自治体の協力等、いろいろな形での技術開発への努力が求められる。
また、このような技術開発の成果を生かしつつ、廃棄物行政が単に廃棄物の処分に終わるのではなく、都市の景観を一層高める施設となるよう工夫したり、あるいは一般市民の利用対象となるスポーツレクリエーション施設を併設する等廃棄物処理施設の整備、運営が都市の快適性を一層増すように配慮することも必要である。
また、「都市廃棄物調査」の結果によれば、指定袋・ステッカーの配布等を含む有料化は、事業系ごみで464市(69.4%)、家庭系ごみで235市(35.1%)によって実施されている。全国市長会は平成5年6月に家庭系ごみの有料化を提言しているが、この4年間でごみの有料化は着実に進んでいる。
 ごみの有料化については、ごみの減量化やリサイクルを促進するインセンティブとしての効果のみならず、市民と自治体がごみの問題についてともに学び、理解を深める機会ともなっているが、いずれにしろ有料制の導入に関して、市民と自治体が払った努力は極めて大きい。
今後、増加が見込まれるごみの処理コストの負担方法については、廃棄物の発生抑制や資源リサイクルの推進という視点からも大きな課題となることが考えられる。そのために、ごみの処理コストの状況を市民に明らかにしつつ、国の財政措置と併せて、商品価格への上乗せ、ごみ処理費用の有料制等、全体として費用を調達することができる仕組みを、市民の共感と支持を得ながら確立しなければならない。
また、廃棄物処理の地域的な広がりも大きな問題である。「自区内処理」が一般的な原則として考えられてきた反面、市町村の区域を超えた広域的な処理が必要となる場合もある。特に産業廃棄物の処理には広域的な対応が必要となるので、現行制度にもあるように、都道府県が中心となってその役割を分担する必要がある。
廃棄物対策には、上述のようにさまざまな問題があり、国民生活のあり方や商品の生産、流通、消費までを含む総合的体系的な対策がさらに必要である。
 
地球環境問題への対応
近年、オゾン層の破壊、地球温暖化とそれに伴う気候異変、有害物質の越境移動、海洋汚染、野生生物の種の減少、熱帯林の減少、砂漠化等の地球環境をめぐる問題が取上げられており、地球温暖化防止のための国際会議開催等が行われている。
自治体においても国等の動向に呼応しつつ、大量消費、大量廃棄社会からの転換を図り、次世代のための持続的発展可能な地球社会づくりを目指していかなければならない。 そのためには環境負荷を軽減する都市構造の実現が課題である。一般的なリサイクル、省エネルギー等の推進のほか、これからの都市においては、それぞれの施設にも廃棄物処理機能や省エネルギー機能が組み込まれることになったり、交通システムについても、これまでの車中心のシステムが見直され、路面電車、エコバス等、環境と省エネルギーに配慮した交通機関の利用が検討対象となろう。
市民の環境保全やごみ処理等に関するモラルは決して低くない。生産者、流通事業者、消費者等が緊密なパートナーシップのもとに、それぞれの活動において、環境への負荷を軽減し、環境にやさしい循環システムを支える役割を果たしていくことが望まれる。
都市自治体は、そのような状況のもとで、廃棄物行政に限らず、都市行政全体のなかで環境問題に十分配慮した取組みを進めるとともに、市民との、あるいは市民相互のパートナーシップの進展に向けて調整機能を果たしていく必要があろう。
 
第5節 地域産業の活性化
地域経済の問題点
地域の活発な経済活動は、市民の生活を支えるものであるとともに、文化的な諸活動等都市の魅力を形成する上でも重要な基盤となる。第2次大戦後、わが国経済は飛躍的な復興、発展を遂げ、世界トップクラスの経済力を有するに至った。この間、各都市はそれぞれの自然的、社会経済的条件に応じながら経済活性化の努力を続けてきており、国の政策としても新産都市・工業整備特別地域の整備等による製造業の育成、農林水産業の振興等、いろいろな施策が講じられてきた。
しかしながら、一方、産業には時代とともに成長するものだけでなく停滞・衰退を余儀なくされるものが生じ、また、過疎・過密問題が発生する等、国内各地域間で相当大きな経済事情の相違、アンバランスも明らかになってきた。そして、最近は、金融不安等による不況のほか、特に次のような難しい事情も生じてきている。
まず、経済活動のボーダーレス化に伴う影響である。情報通信システムはもとより、輸送手段の改善向上等により、経済活動はグローバルな規模でボーダーレス化してきた。そのため、製造業においては、企業はよりコストの低い地域へと拠点を移動させることとなり、コスト高の国内各地からコストの低いアジア地域への工場の移転が進み、いわゆる地域経済の空洞化の問題が生じるに至った。
国際的な影響は第一次産業でも深刻である。農業は、ウルグアイ・ラウンド合意後の農産物輸入増加により、一層厳しい国際競争にさらされることとなった。林業も経営コストの上昇に加えて外材輸入の増加があり、水産業も200海里水域や公海上の漁業規制等により影響を受けている。さらに、国内的には大都市への人口移動等を背景に、第一次産業や伝統産業で後継者の確保が困難になっている面がある。
このような状況であるが、市民の生活安定等のためには地域経済の活性化を図っていく必要があり、都市自治においてもこれが重要な課題の一つである。そのための具体的な施策については都市自治体のみではなく、国、県はもとより、経済界等の幅広い取組みが必要であるが、ここでは都市自治体にとって比較的かかわりが深い事項を取り上げることとする。
地域経済の活性化方策
 これまでにも各都市においてさまざまな努力がなされているが、ほぼ共通している点の一つは、その都市の持つ特徴を生かすことであろう。都市はそれぞれの自然的条件、社会経済的条件を持つ。農山村地域における特産品の加工等は最も一般的に行われているが、都市の場合は、加えて固有の歴史を持ち、固有の文化、技術等を持つ場合が多い。
 従って、都市にあってはそれらをどう生かすかが重要なポイントの一つとなるであろう。それには、古くからのものをそのまま残して貴重な資源とすることもあろうし、伝統的な文化や技術が活用されて新しい製造業へと発展することもあろう。さらに、これらは都市圏域内の自然景観等と合わせて、有力な観光資源になる。ヨーロッパの諸都市を例に挙げるまでもなく、都市観光は、観光コースのなかの重要なスポットである。
 このように都市の特徴を生かしながら活性化対策を進めるに当たっては、いろいろな知恵、工夫が必要であり、先端技術等の活用が必要である。情報処理や情報通信の技術、魅力的デザイン、新素材やバイオテクノロジー等は、生産技術の向上だけでなく、最新のファッション情報をいかしたデザイン水準の向上、より質の高い製品づくり等に活用される可能性があり、それは地域経済の活性化につながっていくであろう。
 また、このような先端技術等は都市において育ちやすい。都市の持つ機能には、高等教育機関、高度な研究開発機能、自由な発想を生かした精神文化等があるが、これらをさらに充実させ、人材を育成していく、言い換えれば都市機能の一層の向上を図っていくことはそのような面でも意義を持つであろう。また、先端技術等の活用には、異分野、異業種の交流が活発に行われる必要がある。生産、販売関係者はもとより、情報関係等多方面の知識経験を持つ人々、高等教育機関や民間企業等いろいろな立場で活躍している人々の交流が行われることは、新たな創意工夫を生む可能性を広げることになろう。
 このような交流の機会を設けることについて、都市自治体がつなぎ役としての役割を果たすこともあろう。
また、前述のように農業も厳しい国際競争にさらされており、そのような状況を背景として今後の農業、農村をめぐる基本的な政策のあり方についての論議が行われている。食料の国内供給等基本的な問題を踏まえながら、真剣な検討がなされなければならないが、いずれにしても、地域としては、農業だけの経営問題のように限定した対応によって考えるのではなく、他の産業活動との複合化・総合化を進め、総体としての地域経済の経営を改善していくようにすべきであろう。都市の区域の内には農業等が重要な産業となっているものがあるが、このような総合的対応についても都市自治体の役割が見出されるであろう。
 なお、特に情報化機能の活用は、消費地等との間の距離的時間的な制約を克服する可能性を持つ。情報化戦略は、そのような展開の具体化によって国内各地域の均衡ある発展に貢献することが期待される。
 都市市民の生活は新たなニーズを生み出す面がある。地域固有の社会経済、自然、環境等に応じながら、その都市圏域において、地域教育、地域情報、高齢者等の介護、福祉、環境保全等で生まれる新たな地域産業の芽に注目する必要もあろう。
 前述のように活発な地域経済活動は、市民生活の重要な基盤である。都市自治体としてもこれを政策課題の一つとして明確に位置づけながら、国、県、民間企業等との連携のもとに、都市の総合的な施策の展開のなかで取り組んでいく必要がある。
 
6 文化環境の整備
都市の魅力
文化とは、人々の生活、生き方、考え方そのものの表現であり、人々が自由に集まり、交流し、自らを自由に表現する舞台を提供するところに都市の特質があり、魅力があると言えよう。すなわち、都市は異質な人々が多数集合し、自由に生き生きと、自らの理想や欲求に従って行動し交流するところにその魅力がある。このことから、都市はまず開かれたものであることが重要である。開かれていることにより多くの人々が集まり、物品を持ち込み、市場も成り立ち、アイデアや新しい情報を伝え、それを基にさらに多様・ハイレベルな新しい考えが創造されるといったいわば相互作用が働き、そのことがさらに都市の魅力を高めていくのである。
また、できるだけ異質な事柄への許容が都市の魅力の一つでもあろう。異なった考え、アイデア、風俗、習慣を許容することが、都市を豊かにし賑わいを高める。また、都市の魅力には、多くの人が集合することから生じる匿名性があり、そこから生ずる精神の解放感がある。そしてこのような都市の匿名性や解放感のゆえに、人々は新しいアイデア、試みに挑戦し、そのことがまた人々を都市に引き付けたのである。
多様な人々が自らの興味、欲求の実現を図るためのハード・ソフト両面のさまざまな施設や手段・方法が存在し、働き、学び、遊び、買い物、映画、音楽や美術の鑑賞、スポーツ・レクリエーション活動に参加することによって、時代の先端の雰囲気を個人に感じさせることも、都市の持つ魅力と言えよう。都市に暮らすことによって、都市の持つトータルなたたずまいのなかで、自己実現が可能となることこそ、人々が都市に期待するものと言えよう。
(1) 社会環境の変化
今後の都市の文化環境を考える際には、日本の社会がこれから直面する変化を踏まえる必要がある。少子高齢化と人口の減少、国際化の進展による人・物の交流の活発化、情報化の一層の進展、右肩上がりが期待できない安定成長、環境問題等が、人々の考え方、生き方に与える影響や、また、そのことが都市のあり方、特に都市の文化環境のあり方に与える影響を考えることが必要になってくる。そのなかで、例えば、高齢者がその健康度・体力に応じて社会の重要な一員として、引き続き豊かな都市生活を楽しむことができるようにすることが求められる。高齢であっても元気な人は多く、社会に参加する意欲のある人は多い。高齢化社会の到来により介護問題等多くのマン・パワーも必要とされている。元気な高齢者の経験やノウハウを生かすためにも、こうした人々が容易に社会参加ができるようにハード・ソフトの両面にわたった工夫が必要となろう。
(2) 都市の個性
また、その都市の持つ個性を生かすことが重要であろう。都市の個性とは他の都市とは異なるその都市らしさである。その都市の自然環境、歴史的、文化的遺産、都市の景観や人々の風俗、お祭り等のイベント、特産品等がその地域独自の文化を育み、その都市の個性となる。わが国のような永い歴史の国においては、その程度の差はあれ歴史や伝統が全くない都市はない。ただ単に古いものだけでは個性にはならないが、それを再評価し、保全し、人々が大切にすることで新しい個性として輝く。交通の発達によりどの都市も似たようなものになってきた、ともいわれる。いわば没個性的な画一的な都市である。このような都市では、人々を引きつけ交流を呼び起こすことは難しいし、何よりもその都市に暮らしている人々が、自らの都市に愛着や誇りを持ちにくい。その都市独自の個性を持つことの重要性が認識される。
(3)「人間」の重要さ
また、都市の文化を考える時には、「人間」を中心に考える必要がある。都市の文化環境の整備という場合に、ハードに重点を置きやすい。もちろん施設整備も必要であるが、そこに住み、働き、学ぶ人々がいきいきとし、都市に住むことを楽しんでいることこそ、その都市を魅力あるものとしているのである。文化ホールが立派であるだけでは魅力的な都市とは言い難い。人々の生活の場、生活のいろいろな場面において、人々の欲求を満たすことができる都市ほど人々が魅力を感ずるであろう。社会的弱者といわれる子供や、高齢者、障害者等が学校で、家庭で、社会でいきいきと生活していることが必要であり、そのための工夫が求められよう。
文化環境の整備方策
(1)交流
都市は内外に開かれたものであるところに本質があるから、交流を活発にすることが都市の魅力を増すことになる。その点で交流を進める機能や施設の整備は都市の活性化をもたらす。各地に展示場、会議場、ホテル等の宿泊施設が整備されてきている。このような施設やスポーツ施設を利用して、オリンピック等の大規模なイベントやサミットをはじめ、国際会議、学会を誘致し、都市の活性化を図る戦略的な活用を推進する必要があろう。また、こうしたコンベンション施設の整備は重要であるが、それを周辺諸条件と組み合わせながら十分に活用するソフトが重要である。コンベンション情報の収集・発信をインターネット等により効果的に行うことが考えられる。
また、日常生活を離れ、未知の自然や都市、人、文化に触れることで、人は心身をリフレッシュし新たな充実感を得ることができる。観光は交流の一形態でもある。観光は、都市の産業振興や雇用の増大につながるだけではなく、観光を通して自らの価値を再発見・再認識することにもなる。国内外の観光客を対象として、観光振興のための舞台・資源の整備を進めることも必要となろう。
(2) 文化施設の整備・利用
地域の風俗慣習や伝統芸能、美術工芸品、歴史的な街並み等の文化遺産、自然景観等はその地域に固有の魅力を与える。このような観点から、近年、各都市においてもこれらの伝統的な文化の保存が行われてきたが、都市の個性化はますます重要性を増すことから、今後とも地域の伝統的な文化の活用が求められよう。また、優れた芸術が多くの人にさまざまな感動や喜び、安らぎを与え、豊かな日常生活の支えとなることから、地域の芸術・文化活動の拠点となる施設の整備が進められてきたが、ハードの整備とともにソフト面の充実が必要となっている。企画力や財政面から単独で事業実施が難しい場合には、これら芸術・文化施設の全国的な連携、協力が必要となろう。また、情報のデータベース化、内外からのアクセスについても考慮する必要があろう。生活のなかで気軽に芸術文化活動が楽しめることが望ましく、これらの施設ができるだけ人々に利用しやすいようにする工夫が求められる。
(3) 広域的な連携
都市には、人々が自らの興味、欲求の実現を図るために、さまざまな施設や手段が存在することが望ましい。学術・研究、教育・学習、専門的な技術のための学校や遊び、買い物、映画、音楽や美術の鑑賞、スポーツ・レクリエーション活動のためのさまざまな施設があれば、その都市は一層魅力的であろう。しかしながら、都市の規模によってはすべてを自前で揃えることが不可能な都市も多いし、また、その必要もないであろう。情報のグローバル化、交通手段の発達による人々の往来の容易さを考えれば、今後の都市づくりでは、広域的な観点やグローバルな視点が一段と必要となっている。都市を中心として周辺町村を加えた都市圏が形成され、このなかで都市と町村がそれぞれ便益を与えるといった相互の役割の補完が行われてきている。このような状況下では、都市圏中心の広域連携を進め、単独の自治体だけでは実現が難しい高次の都市機能を整備することにより、都市およびその周辺の魅力を向上させることができよう。さらに進んで情報手段の発達により、国内外の知識を集め、技術やデザイン等の知的交流を盛んにすることが求められる。トップクラスの人材や世界的なリーダーに接することが従来に比して容易になっている。また、情報手段の発達が、必ずしも大都会に住まなくてもグローバルな仕事や活動を可能にした。優れた技術やノウハウを持つ人々が地方に住み、そのことが都市の伝統や文化に新たな刺激を与え、さらに優れた個性ある都市へと発展させることも期待できよう。
(4) 都市の景観とアメニティ
都市生活の基礎的な基盤が整備されるにともなって、美しさとゆとりのある都市を形成することがますます求められよう。歴史や伝統に基づき、景観やアメニティに配慮した都市空間を形成することがますます求められよう。個々の建物のみならず、周辺等の状況も含め総体的な美しい空間づくりが求められている。そのためには面的整備手法である都市計画がより重要になるであろう。多くの権利者がかかわり、長期にわたる区画整理や再開発は難題も多いが、魅力ある都市づくりのために必要となろう。また、街路灯、案内板等の統一をはじめとして、形状や色彩の周辺環境との調和や高齢者や障害者に配慮したバリアフリーの視点も求められよう。電線類の地中化の推進や無秩序な屋外広告等を規制する必要がある。まちづくり協定や景観条例、地区計画等が一層重要となってくる。総合的な計画のもとに、緑豊かな公園や水辺、河川の散策路を整備し、ゆとりと潤いのある空間を形成することが求められよう。
(5) 人々の参加と自治体の役割
都市は市民と行政とがお互いに連携してつくり上げていくものであり、その意味で、都市は市民と行政の共同作品と言えよう。都市はそこに住む人々によって形成され、都市の品格も雰囲気も市民により具現化される。人々に自らの都市づくりに参加を促す仕掛けが必要である。森の緑の保存等に人々の参加を求めることによって、その都市への関心を高めることも必要であろう。福祉、環境、教育等において地域が抱える問題を人々とともに考える仕組みが必要となろう。また、人々が社会参加を通して自己実現を図ろうとする動きが盛んであり、福祉、ボランティア活動を一層推進するための施策が求められよう。また、育児休業をはじめ女性が子供を産み育てるための環境の整備をさらに進め、女性の選択や行動の自由を一層拡大することが求められよう。さらに、企業の文化活動も企業が都市の重要な一員であるとの認識をもとにますます充実する必要がある。
このような市民の参加を高めていくためには、市民が生涯にわたりさまざまな学習を重ねていくことが望ましい。基礎的な学習は学校教育で行うとしても、それぞれの関心や必要等に応じながら、福祉、保健、環境、教育、防災、国際交流等市民の日常生活や地域社会にかかわる事柄について学習し、これらについての理解を深め、さらにこれが市民の地域的な活動等に結びついていくことは、一人ひとりの市民の生活充実につながるとともに、快適で豊かな都市づくりのためにも有意義である。都市自治体は、これまでも生涯学習などの形でこのような学習活動を推進しているが、ますますその重要性が高まることを考えれば、さらにいろいろな側面での役割を果たすことが求められるであろう。
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