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20.介護保険に関する要望

○「決議要望事項」[平成10年6月3日 全国市長会創立100周年記念 第68回全国市長会議決定]



介護保険に関する要望
 
 介護保険制度が平成12年度から施行されることに伴い、 国は、 特に次の事項について万全の措置を講ぜられたい。

1. 介護サービス基盤の整備等
(1)介護保険制度の円滑な運営のためには、 制度施行前に介護保険事業計画を作成し、 被保険者となる住民の理解を得る必要があるので、 その基礎となる介護サービスの量の見込みに関する 「参酌標準」 をできる限り早期に明らかにするとともに、 必要なサービス供給体制整備については計画を前倒しに実施することとし、 必要な財政措置を講ずること。
(2)在宅サービスについては、 12種類のサービスから自由に選択する仕組みとなっているが、 需要と供給の関係から要介護者の希望するサービスが十分に供給されない場合や、 各サービスの稼働率に格差が生じ、 事業経営に少なからぬ影響が表れる場合などが想定される。 また、 介護サービス供給体制が十分整っていない場合には、 現実の具体的なサービスの決定については供給体制の実情を踏まえつつ、 何らかの調整を図ることが必要となる。 このような状況に的確に対処できるよう、 必要な仕組みを検討すること。
(3)特別養護老人ホームの入所者のうちには継続入所することができず、 しかも帰宅することが難しいためケアハウス等の施設に移らざるを得ない者もあることが考えられるので、 その受け皿となる施設等の整備についても必要な措置を講ずること。
(4)民間等による介護供給体制の早期整備を進めるため、 施設経営の実情も考慮しつつ、 介護報酬の単価や支給方法等運営に関する基本的な事項の具体的内容を早急に決定し、 明らかにすること。
 なお、 介護報酬単価の設定にあたっては、 重度痴呆などの特殊加算を設け、 できる限り実態に即したものとすること。
(5)現金給付を含め、 家族介護に対する支援策の充実について検討すること。

2. 財政運営
(1)個々の保険者において健全な財政運営を確保することができるかどうかを検証するため、 例えば類型別のモデル市町村を設定して具体的な試算を行い、 その結果を明示すること。
(2)市町村の後期高齢化比率や所得水準によって調整される国の調整交付金について、 その支給方法の具体的内容を早急に明示すること。
(3)財政安定化基金については、 その具体的な交付基準等を早期に明示し、 介護保険財政の安定的な運営のため、 適切な運用を確保すること。
(4)収納率の向上とコスト面での効率化の観点から、 第1号保険料に係る特別徴収の範囲を拡大するとともに、 生活保護費については、 保険料相当額を生活扶助費支給時点において控除することができるよう、 関係法令の改正を含め、 必要な措置を講ずること。
(5)認定された要介護度に応じた介護サービスが国の定める支給限度額の範囲内で供給できない場合、 或いは、 今後設定される介護報酬が現状と乖離した場合、 保険者である市町村において、 いわゆる 「超過負担」 的な負担が生じるおそれがある。 このような事態を避けるためにも、 実態調査等を踏まえ、 実情に即した支給限度額を設定すること。
(6)第1号保険料の住民税課税額による5段階賦課方式については、 地域の状況に応じた一定の弾力的運用を可能とすること。
(7)介護サービスの受給に伴う1割負担について、 市町村が低所得者に対し何らかの負担軽減を図らざるを得ない場合、 これに対し必要な財政措置を講ずること。
(8)介護保険料の上乗せによって国民健康保険の保険料 () の収納率がさらに低下するおそれがあるが、 そのような場合、 国民健康保険財政に対し実情に即した必要な財政措置を講ずること。

3. 要介護認定
(1)要介護認定が公平・迅速に行われるよう、 平成9年度に実施された要介護認定及び介護サービス計画作成にかかる試行的事業の結果を十分に踏まえ、 適切な要介護認定基準を設定するとともに、 要介護判定調査等に携わる介護支援専門員 (ケアマネージャー) の育成対策を積極的に推進すること。
(2)要介護認定に係る不服や介護サービスの供給内容についての苦情等に的確に対処できるよう、 適切な処理体制を確立すること。

4. 事務処理体制等
(1)介護保険制度施行までの間、 各市町村においては、 現行の措置制度に係る事務と介護保険の準備作業とが併存することとなり、 人員・経費の確保に大変苦慮しているところである。 そのため、 国において、 人員の確保に必要な措置を講ずるとともに、 介護保険事業計画作成経費、 電算処理運用方式開発経費等の諸経費について、 必要な財政措置を講ずること。
(2)同制度施行後、 安定的な事務処理体制を維持できるよう、 当該事務に要する人員・経費の確保について、 国において必要な措置を講ずること。

5. その他
(1)介護保険制度運用の具体的な事項を定める政省令等については、 市町村と必要な協議をしながら速やかに決定し、 明らかにすること。
(2)介護保険制度の内容について国民の理解を得るため、 国において十分な広報を行うこと。
(3)介護保険制度の円滑な運営を確保するため、 保険者である市町村において、 介護サービス供給機関からの情報提供等により、 介護サービスの実情を把握することができるよう、 適切に措置すること。
 
 以上要望する。