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農業の振興に関する要望

全国市長会の主張  -要望- H20.11


 

農業の振興に関する要望

 

 
 農業の持続的発展と長期的な安定を図るため、国は、地域の事情を勘案しつつ、次の事項について積極的な措置を講じられたい。

1.米政策の推進について

(1)米価の下落を阻止するため、政府備蓄米の備蓄水準を引き上げるなど抜本的な対策を講じること。
 また、米価下落時に大きな影響を受ける農家の経営安定を図るため、無利子の緊急資金貸付制度等の支援策を講じること。
(2)生産調整目標達成のため、生産調整の取組みとして扱う米穀に醸造用玄米を含めること。
 また、転作農産物の生産にかかる技術指導を行うこと。
(3)地域自らが作成する地域水田農業ビジョンの実現に向けて実施する産地づくり対策のための「産地確立対策交付金」(現「産地づくり交付金」)については、所要額を確保すること。
(4)一般農家を対象とした稲作構造改革促進交付金については、制度を拡充し、平成22年度以降も継続すること。
(5)我が国の食料供給力を強化するため、食料自給率・自給力の向上に結びつく新規需要米(米粉・飼料用米等)の生産拡大に向けた支援策を講じること。
(6)中山間地域における耕作放棄地の解消を図るため、地域の実態に応じた措置を講じること。

2.水田・畑作経営所得安定対策について

(1)水田・畑作経営所得安定対策の推進に当たっては、円滑かつ着実な推進を図るとともに、集落営農組織等への支援強化を図ること。
 また、対象品目の拡大を図るとともに、多様な形態の農家が取り組むことができるよう加入要件の緩和を図ること。
(2)収入減少影響緩和対策及び生産条件不利補正対策については、加入者メリットが図られるよう、算定基準の見直しを行うこと。

3. 原油価格高騰対策について

(1)農業生産資材の安定供給及び価格の安定を図るとともに、原油価格高騰の影響を受ける農林水産事業者に対する支援措置の拡充を図ること。
(2)施設園芸等農家の経営の健全化を図るため、省エネルギー型農業機械等緊急整備対策を継続すること。
 また、原油高騰の影響の少ない国内産肥料の開発及び省エネルギー技術の普及指導を図ること。
(3)省エネルギーや代替エネルギー導入に対する支援の充実強化を図ること。
(4)農林水産業従事者が軽油引取税免税制度を効果的に活用できるよう、事務手続きの簡素化を図ること。

4.農家に対し、肥料コスト増加分の一部を支援する「肥料・燃油高騰対応緊急対策事業」については十分な財源を確保すること。
 また当該事業の実施期間及び内容については、肥料価格の動向や農業者の経営状況等を踏まえ弾力的に対応すること。
 さらに肥料コストを低減する新しい施肥技術体系への転換や肥料自給率の向上に向けた取り組みを促進すること。

5.木質ペレットなどバイオマス利活用の推進・普及を図るため、技術開発支援や実証プラントの整備支援等を行うとともに、地域バイオマス利活用交付金制度の拡充を図ること。

6. 食料自給率向上対策について     

(1)学校給食等による食育の推進を通じ、米をはじめとした農産物の消費拡大を図るなど関係者が一体となった取組を推進すること。
(2)食料自給率の向上のため、地産地消の推進に必要な支援措置を講じること。

7.農業振興地域の指定に係る専門的知識・技術を市が備えている場合は、都道府県から市へ指定の権限を移譲すること。
  また、農地転用許可の権限を都道府県から受けている市については、農用地区域の指定・変更に係る都道府県の同意及び農地転用許可事務に係る都道府県農業会議への諮問を、それぞれ不要とするよう必要な措置を講じること。併せて、地域の実情等に応じた土地の有効利用が図られるよう、農地転用の許可基準を見直すこと。
 さらに土地開発公社が行う農地転用について、その許可の範囲を拡大すること。

8.生産緑地法に基づく生産緑地の買取り申し出に対して柔軟な対応が可能となるよう特例措置を追加するとともに、同申し出に対応するための措置を講じること。
 また、市民農園等に相続が発生した場合には、相続税納税猶予など税制上の優遇措置を講じること。

9.遊休農地等を解消し農地の集積を図るため、任意営農組織においても農用地の利用権の設定が可能となるよう、農業経営基盤強化促進法の改正を図ること。

10.農業の持続的発展に必要な土地改良事業を円滑に推進するため、土地改良事業に係る償還金軽減対策の拡充や土地改良施設維持管理適正化事業の採択基準の引下げなど、必要な措置を講じること。

11. 将来的な農地利用計画等に支障を来すことがないよう、携帯電話中継基地局を農地内に設置しようとする事業者に対し、農業委員会等との事前協議を義務付けること。
 また、農業委員会選挙における立候補者の負担が軽減されるよう、公職選挙法の準用項目を見直すこと。

12.農地・水・環境保全向上対策を強力に推進し、平成24年度以降も継続すること。
 また、農用地区域以外の農地の面積を活動支援交付金の対象に算入することや地方財政措置の充実など、同対策に係る支援措置の拡充を図ること。

13.湖沼、河川の水質浄化対策の強化と事業効率の向上に向けて農業集落排水事業を効率的・効果的に推進するため、農業集落排水施設を公共下水道に接続させる場合における財政支援制度の創設や、地域再生法に基づく汚水処理施設整備交付金の交付対象要件の緩和を図ること。
 また、農業集落排水施設に係る災害復旧事業に対し、財政措置が確実に講じられるよう、当該施設を公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の対象施設に指定すること。
さらに農業上及び地域防災上の観点から、「ため池」の整備・改修等に係る財政措置を強化すること。

14.グリーン(ブルー)・ツーリズムや農林漁業体験活動など都市と農山漁村の交流を推進する施策や農商工連携施策を強力に推進し、国内産農林水産物の消費拡大と地域経済の活性化を図ること。

15.中山間地域等直接支払制度については、平成22年度以降も継続するとともに、手続きの簡素化や要件の緩和、地方財政措置の充実強化など制度の更なる見直し・拡充を行うこと。
 また過疎化や高齢化が進行している、いわゆる「水源の里」において、農林畜産業等の振興や集落の活性化等が図られるよう積極的な財政措置を講じること。

16.畜産・酪農経営安定対策について

(1) 配合飼料価格安定基金制度については、基金への農家負担の軽減のため、必要な措置を講じること。
 また、継続的な経営安定のため、抜本的な対策を講じること。
(2)国産飼料の増産を図るため、耕畜連携水田活用対策事業の助成対象者要件の緩和や財政措置の拡充を図るとともに、耕作放棄地への飼料作付けに対する財政措置を講じること。
(3)農家の飼料購入に対し財政措置を講じること。
 また、飼料生産を担う受託組織の育成に対し支援を図ること。

17. 家畜排せつ物処理施設の整備のため、平成21年度以降も必要な財政措置を講じること。

18.牛海綿状脳症(BSE)対策については、再発防止のための万全な対策を講じるとともに、安全確保対策を継続すること。

19. 野生鳥獣による農林作物の被害が激増しているため、駆除・防除対策の調査研究を行うとともに、防除に必要な技術支援や駆除・防除等に係る必要な財政措置を拡充すること。
 また、鳥獣害防止総合支援事業の事務手続きの簡素化に努めること。

20.食の安全・安心確保対策について

(1)食品被害拡大防止のため、国民及び地方自治体等に対し、正確な情報を迅速に提供すること。
(2)外食産業や加工食品等に対する原産地表示の義務付けなど、原料原産地表示制度の充実・強化を図るとともに、食品安全GAPなどの工程管理システムやトレーサビリティ・システムなど、食の安全・安心の確保に資する手法の導入支援や普及・定着を推進すること。
(3)輸入食品に関する検疫体制を強化するとともに、安全性に問題のある食品を輸出した国に対しては毅然とした対応を取ること。
 また、食品安全に関する立入検査・監視体制について、実効性が担保されるよう抜本的な見直しを行うこと。
(4)食品事故の被害者等に対する十分な支援措置を講じるとともに、再発防止策の早期確立を図ること。

21.農産物価格については、生産コスト上昇分が販売価格に反映されるよう、消費者等の理解醸成のための情報提供を行うとともに、価格安定対策を講じること。

22.担い手・ 新たな就農者を確保するため、技術指導、経営資金融資、農地の集積など経営安定に資する事業の充実を図ること。

23.強い農業づくり交付金事業(集落営農育成・確保緊急整備支援)の採択条件は、新規・既存組織ともに同一とするよう見直しを行うこと。
 また、強い農業づくり交付金事業については、平成22年度以降も継続すること。

24. 国民的議論のもと農業振興策の中長期ビジョンを策定し、これに基づき積極的な施策を講じること。

25.WTO農業交渉及びFTA農業交渉にあたっては、非貿易的関心事項への配慮など、日本提案の実現を目指す従来の基本方針を堅持するとともに、上限関税設定の導入の阻止、重要品目の数の十分な確保など適切な国境措置を確保すること。

26.日豪EPA・FTA交渉に当たっては、米、麦、牛肉、乳製品、砂糖など我が国の重要品目である農産物について、関税撤廃の対象から除外または再協議の対象となるよう粘り強く交渉すること。