(中心市街地の活性化対策に関する意見) 事例6 F市 人口28万人
1 中心市街地の現状
今、多くの地方都市は、中心市街地の空洞化により大きな問題 を抱えている。特にその現象の顕著なものは、居住人口の減少である。東北の県庁所在地である本市を例にとると、昭和30年代約6万人有していた中心市街地の居住人口が現在3万人を割り込み、同じく小学校の児童生徒の推移を見ても8,100人から2,100人と約4分の1まで減少している。 また、市街地の外縁化に伴い、大規模な商業施設の郊外立地に 対し中心市街地の商業機能の流失も大きな問題になっている。かつて繁盛した専門商店街もシャッターを下ろした店や建物が取り 壊され空き地になった所が点在し、商店街の賑わいも薄れてきている。また、その都市を代表する大通りに面したデパートも、来客数の減少やお客ニ−ズの変化に対応できなくなり撤退し、空きビルのまま放置され、外壁はいたずら書きやモルタルの剥離崩落等も見られ、危険で汚い。公共施設の郊外移転も問題である。 昭和40年代から、施設の老朽化等の理由により様々な施設が郊外に移転していった。昭和45年には都心部にあった商業高校の移転、46年に路面電車の廃止、49年に卸売り市場の移転、52年にバスターミナルの廃止、56年に国立大学の学部統合による郊外移転、61年に県内農協を統括する農協会館の移転、62年から63年にかけて県立医科大学とその付属病院の移転等、来客性が高く関連業務の広い施設が次々に移転していった。 この様に居住、商業業務に代表される中心市街地の機能が郊外等に移転する一方、中心部の整備は点的な施設整備に終始した結果、中心市街地の生活基盤施設や都市施設の整備は大きく立ち後れた。 <中心市街地の現状> ・ 人口の空洞化 ・ 高齢化と単身世帯 ・ 児童生徒の減少 ・ 公共施設の遊休化 ・ 空き地空き店舗の発生 ・ 老朽化した空きビルの残存 ・ 駐車場の不足 ・ 町内会を始めとする地域コミュニティの崩壊 ・ 高校、大学等の郊外移転 ・ 大型百貨店の郊外移転 ・ 病院、文化施設などの郊外移転 ・ 商店街などの商業の停滞 2 中心市街地活性化施策の概要と実施上の問題点 中心市街地の空洞化に対し、都市活力の再活性化を図るには、今までのような中心市街地でいいのか、新しい課題や役割はないのかを考える必要がある。そして新しい中心市街地整備の理念を確立した上で、その理念、目標に向かって、各種事業を展開すべきである。 まず、中心市街地の活性化施策としては、居住人口の回復と流出した都市機能の再整備が必要であり、そのため、今までの中心市街地が商業業務を主体にした低密分散型の士地利用から、住居系を主体にしながらコンパクトな商業や教育、文化、健康、福祉等の新しい生活支援施設を組み合わせた土地利用が必要である。 このため、大規模な空きビルの撤去や空き地の集合化等を進め、新たな土地利用や施設整備が行いやすい条件整備をタイムリーに進めることが必要である。この様な事業には、土地区画整理事業や再開発事業などが有効であるが、現在の事業手法は、都市計画 決定や事業計画の立案、事業認可など手続きに時間を要したり、関係行政機関との調整にも大きな労力を要するなど問題も多い。 また、空きビルや空き店舗のクリアランスを進めるにも、これらを解体撤去する補助制度なども手薄である。 また、急激に高騰した地価は、下落傾向にあるが居住地としては税も高く住み続けるにしても条件はよくない。 新たな居住者を中心市街地に呼び込むにも、現在の住宅政策は郊外型であり、新たな都心居住の仕組みとして住宅に店舗や医療、健康施設が複合した新しい都心型の住宅の提供なども必要である。 また、地価の高い都心部での住宅政策は民間の高層住宅のみに依存するのでなく、公共住宅の推進や公共と民間の合併事業なども必要である。 しかし、これらを推進しようとすると今までの事業制度が硬直していたり、国や県等の縦割りの弊害もあり、複合事業の組み立てや柔軟な事業の推進は困難性を有している。 <施策実施上の問題点> ・ 土地区画整理事業や再開発事業が事業認可の手続きなどでタイムリーに活用しにくい。 ・ 権利者の意向に配慮したきめの細かい事業を推進するには補助制度や事業メニューが少ない。 ・ 大型の空きビルの解体撤去を誘導できない。 ・ 面的開発は権利者も多く、必ずしも全員が事業意思を有していない。 ・ 国の各省庁の施策を組み合わせて行うには手続きの調整に多大な労力を要する。 ・ 中心市街地に居住したい者に対応していない公共住宅。 ・ 固定資産税など都心居住の推進に厳しい税制度。 ・ 中心市街地の整備は総合政策であるが政策推進の担当部局の未整備や人材育成の立ち後れ。 ・ 地方の特色ある中心市街地整備を進めるには脆弱な財政基盤 ・ 安全安心なまちづくりに向けての支援施策の不足。 |