去る9月16日、基礎自治体を重視した地域主権を確立するという政権公約を掲げた民主党を中心とする鳩山新内閣が発足した。
鳩山新内閣においては、「本当の国民主権の実現」と「内容の伴った地域主権」を政策の二つの大きな柱として新たな国づくりに取り組むこととしている。そして、地域のことは地域に住む住民が決めるという、活気に満ちた地域社会をつくるため、「地域主権」改革を断行するとともに、国と地方の関係についても対等の立場で対話していける新たなパートナーシップ関係へと、根本的な転換を図ることとしており、大いに期待しているところである。
そのためには、地方の声、現場の声を十分踏まえたうえで、真の地方分権改革の実現に向けて地方の実態に即した各種政策を推進することが必要不可欠である。
ついては、国と地方の信頼関係のもとで内政運営を円滑に行うため、新内閣においては、法律に基づく「国と地方の協議の場」の設置に先立ち、地方自治の根幹にかかわり、地方の行財政運営に大きな影響を及ぼすことが懸念される下記事項等について、対等の立場で地方と誠実かつ真摯に協議を重ね、地方の実態を踏まえた各種政策を推進するよう強く要請する。
記
1.国と地方の協議の場の法制化
地方自治の根幹にかかわる事項について、国と地方の代表者が対等の立場で地方に関する事項を協働して政策を立案し執行に反映させる「国と地方の協議の場」の法制化を早期に実現すること。
2.地方分権の推進
「地方分権」、「地域主権」の理念のもと、国と地方の役割分担の明確化を図り、それに基づいて基礎自治体への権限移譲を推進し、義務付け・枠付けの廃止・縮小と条例制定権の拡大を図るとともに、基礎自治体が担う事務と責任に見合う税源配分を基本に、偏在性が少なく安定的な地方税体系を構築すること。
3.地方税財源の充実
国の平成22年度予算については、都市自治体の財政運営と予算編成に支障をきたすことのないよう、十分な財政措置を講じるとともに、年内に編成すること。
特に、地方財政対策においては、地方交付税の法定率を引き上げ、その復元・増額を図るとともに、地方財政計画に都市自治体の財政需要を適切に反映すること。
なお、平成20年度以降の補正予算等により、臨時・緊急的な措置として講じられた交付金事業等のうち、地域雇用・経済対策や妊産婦健診・出産一時金の拡大等の子育て少子化対策などとして実施され定着している事業については、一過性のものとすることなく、継続的な財政措置を講じること。
4.行政刷新会議における事業仕分け
行政刷新会議における地方自治体に関連する事業の仕分けは、基礎自治体を重視し地域主権を確立するという内閣の大きな方針や、地方の自主財源の充実強化に努めるという総理の所信表明の方針の下に行われるべきものであり、専ら国からみた無駄の排除や国の予算の財源確保という観点からのみ行われるものであってはならないこと。
また、行政刷新会議で議論された地方行財政制度上重要な課題や、事業仕分けにより地方移管、事業廃止等とされた事業については、国と地方の役割分担、地方の行財政運営及び社会資本整備等に大きな影響を及ぼすことから、改めて当該制度や事業のあり方について、地方に対する税財源の移譲措置を含め、国と地方が対等の立場で十分協議したうえで、結論を得るものとすること。
5.自動車関係諸税の暫定税率
自動車関係諸税の暫定税率については、極めて厳しい地方財政の状況、道路整備などの財政需要及び地球温暖化対策などの観点から、代替財源を示すことなく安易に廃止しないこと。
なお、暫定税率の見直しに関連し、いわゆる環境税の検討に際しては、都市自治体の環境施策に果たす役割や財政負担を十分勘案し、地方税としての検討も行うこと。
6.補助金廃止と一括交付金の創設
補助金廃止と一括交付金の創設にあたっては、都市自治体の意見を十分に踏まえ、必要とする事業の執行に支障が生じないよう、その総額確保方策や配分方法とともに、地方交付税制度との整合性にも十分留意して制度設計を行うこと。
7.子ども手当の創設、高校授業料の無償化等
子ども手当の創設にあたっては、都市自治体の意見を十分反映するとともに、これに要する経費は人件費や事務費を含め全額国庫負担とし、都市自治体の事務負担を極力軽減すること。
また、高校授業料の実質無償化については、全額国庫負担とするとともに、市町村を事業主体とはしない間接給付等の方法で実施すること。
8.後期高齢者医療制度等
後期高齢者医療制度の廃止については、現行制度が一定の定着をみていることから、被保険者を始め現場に混乱が生じることのないよう、都市自治体の意見を十分に尊重して検討すること。
また、後期高齢者医療制度を廃止して新たに創設する医療保険制度については、全ての国民を対象とする医療保険制度の一本化に向けて、国または都道府県を保険者とする国民健康保険制度の再編・統合などを早急に検討すること。
9.高速道路の無料化
高速道路の無料化については、公共交通機関等に与える影響や地球温暖化への影響などを十分勘案のうえ慎重に検討されたいこと。
また、地方が必要とする道路の整備に支障が生じないよう、高速道路や一般道路の整備のための財源確保方策についても明確に示すこと。
10.農業の戸別所得補償等
農業の戸別所得補償等については、その詳細を早急に明らかにするとともに、都市自治体の意見を十分踏まえ、事務コストの増加をもたらさない効率的な制度を検討すること。
11.公共事業の見直し
公共事業の見直しにあたっては、地域の実情や事業の必要性などを総合的に勘案のうえ、地域住民や都市自治体の意見を十分尊重すること。
12. 新たな過疎対策法の制定
過疎地域の有する多面的・公益的機能を積極的に評価し、過疎地域の振興と自立促進を図るため、平成22年3月をもって失効する「過疎地域自立促進特別措置法」に続く新たな過疎対策法を制定すること。
|