ページ内を移動するためのリンクです。

生活保護等の地方への負担転嫁に反対する声明(地方六団体)(平成17年11月4日)

 11月4日、生活保護等に係る厚生労働省見直し案が提示されたことを受けて、地方六団体会長の連名により、「生活保護等の地方への負担転嫁に反対する声明」を公表しました。
pdf形式のファィルはこちら



生活保護等の地方への負担転嫁に反対する声明

(協議会設置の前提)
 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会は、「国庫負担率の引き下げを前提としたものではなく、生活保護制度や児童扶養手当制度の在り方について幅広く議論を行う」ことを前提としていたことから、今回の地方の負担増加を前提とした見直し案の提出は、信義に反する。

(共同作業の結果)
 生活保護費については、国と地方の関係者協議会における共同作業の科学的分析により、保護率の上昇や地域間較差は地方の実施体制の問題ではなく、失業率、高齢化、離婚率等の経済・社会的要因が極めて大きな影響を及ぼしていることが解明された。すなわち、これまで厚生労働省などが求めていた地方負担率の引上げでは、生活保護費の削減にはつながらないことも明確となった。

(厚生労働省の見直し案について)
 本日、厚生労働省が、唐突に生活保護等の見直し案を提案してきたことは、こうした協議会における真摯な協議の経過をも無視するものである。
 見直し案は、生活保護制度が憲法の保障する健康で文化的な生活を保障するものであるにもかかわらず、国の負担を引き下げるため、無理矢理、扶助ごとに分断し、基準設定権限や国庫負担等を単に変更しようとするものである。このような考え方は、本来、総体であるべき人間の暮らしや営みを無視するもので、論外である。
 さらに、生活保護制度においては、国民の最低限度の生活を保障される機会や生活水準の内容が公平・平等でなければならず、地域或いは個人によって実質的な差が生じることがあってはならない。このため、生活扶助、住宅扶助等の生活保護基準は、本来国がその責任において客観的なデータを基に、地域事情を的確に反映させつつ、全国的整合性をもって定められるべきものである。
 厚生労働省は、社会保障審議会において、生活扶助基準等の見直しを求められているにもかかわらず、真剣に取り組むことなく、各扶助基準の設定を地方の裁量として押し付けようとしているが、これは国の責任放棄である。保護基準の設定権限を移譲しても、地方の裁量は拡大しないし、単なる地方への負担転嫁に過ぎないものであり、厚生労働省の生活保護等見直し案は、到底受け入れることができない。
 我々地方自治体は、国民の健康や福祉の増進のため、懸命に努力を傾注しているところである。それにもかかわらず、今回のような見直し案が示されたこと自体、厚生労働行政に対する地方の信頼を根底から揺るがすものである。

(生活保護等の見直しについて)
 生活保護制度は、社会経済構造の変化に伴って、制度の基本に係る様々な課題があるが、その対応のための方策については、我々も協議会において別途「生活保護制度等の基本と検討すべき課題」を提言したところであり、その検討は今後も進められなければならない。また、厚生労働省は、地方の意見に真摯に耳を傾けながら、我が国の社会保障制度全体の在り方を踏まえて、専門的な検討を進めることが必要であり、我々もその解決に向けて協力していく考えである。


 平成17年11月4日

地 方 六 団 体    
   全国知事会会長   麻生   渡
   全国都道府県議会議長会会長   島田   明
   全国市長会会長   山出   保
   全国市議会議長会会長   国松   誠
   全国町村会会長   山本 文男
   全国町村議会議長会会長   川股   博