ページ内を移動するためのリンクです。

国民の保護のための法制に関する要望(平成16年3月29日)

全国市長会では、3月29日、井上有事法制担当大臣並びに麻生総務大臣等に対し、提出しました。
(pdfファイルはこちら



国民の保護のための法制に関する要望

平成16年3月29日
全 国 市 長 会

 都市自治体は、住民に最も身近な自治体として、平時においても、住民の安全、安心を守るため、最大限の取組みを行っているところである。
 武力攻撃事態等に際しての「国民の保護のための法制」に基づく都市自治体の役割については、いかに住民の安全を確保していくかを最優先の課題として捉え、今後、「保護に関する計画の策定」、「避難に関する措置」、「救援に関する措置」等に関し、住民の理解と協力を得つつ、具体の対応を検討していく必要があると考える。
 よって、国は、国民の保護のための法制のより実効性を高めるため、次の事項について、積極的かつ適切な措置を講じられたい。
 

1.財政上の措置等について
(1) 地方公共団体が実施する国民の保護のための措置に係る費用については、原則として、国の負担とされているが、地方公共団体の負担とされる人件費や管理及び行政事務の執行に要する費用等についても、国の責任において必要な財政措置を講じること。
(2) 平時から必要となる①計画の策定 ②協議会の設置及び運営 ③訓練の実施 ④資機材の整備等に要する経費についても、原則、国の負担とすること。
  また、応急の復旧についても、国の負担とすること。
(3) 武力攻撃事態及び緊急対処事態の態様及び規模を国において具体的に想定し、シミュレーションの形で地方公共団体に提示すること。
 また、自衛隊、米軍、都道府県の区域を越えた地方公共団体等との連携を含めた訓練を国において企画、実施すること。
 なお、その費用については、全額国が負担すること。
(4) 国民保護法制に基づく対処措置の実施により住民等が被った損失や損害に対する補償については、国が全額財政負担すること。
 

2.国民の保護に関する基本指針等について
(1) 国は、「国民の保護に関する基本指針」を早期に定めるとともに、地方公共団体が全国的に整合性がとれた「国民の保護に関する計画」を速やかに作成できるよう、具体的な策定基準を提示すること。なお、「基本指針」等の作成に当たっては、地方公共団体の意見を十分に反映させること。
(2) 離島等地理的条件不利地域における避難の手段及び避難住民の誘導に係る関係職員の配置等について、国が的確かつ迅速な支援を行うことを「基本指針」等に明確に位置づけること。
(3) 大都市における多数、広範囲な住民避難は、物理的・時間的に非常に困難なものとなる可能性があるため、国において、その基準を具体的に示すとともに、昼間流入者(通勤・通学、観光等)に対する避難指示・誘導内容を「基本指針」等において明確にすること。
(4) 原子力発電所の安全確保については、警備・警戒体制の構築等を含め、「基本指針」に明確に位置付けるとともに、国の責任において万全の措置を講じること。
(5) 大規模施設等(水力発電施設や火力発電所、石油コンビナート等)が、武力攻撃や大規模テロで破壊されたり、水源となる重要な湖・河川等が生物・化学兵器等による攻撃で汚染された場合、その被害は甚大となり国民生活に与える影響も大きいことから、安全確保及び汚染除去等についての対応策を「基本指針」に位置づけること。
(6) 地方公共団体は、国民保護計画・避難マニュアルの作成や普及・啓発、訓練の実施等を行うため、組織体制を整備することとなるが、これに必要な平時からの人員体制等の基準を早期に提示すること。
(7) 武力攻撃事態及び緊急対処事態の態様の想定及びその被害の最小化のための措置については、専門的知識が必要であることから、平時において自衛隊と地方公共団体が円滑に連携・協力できる体制を整備すること。
(8) 国は、様々なテロ事態を想定し、地方公共団体の危機管理担当者に対する専門的研修の実施、対応マニュアルの整備、図上訓練の実施、テロ対策資機材の整備等について、地方公共団体の意見を十分踏まえた上で早急に進めること。
 

3.情報の共有について
(1) 国・都道府県・市町村が情報を共有し、避難・救援等の保護措置を円滑に実施するため、国において全国的な情報共有システムを構築すること。
 また、特定公共施設等の利用及び提供についても、地方公共団体への迅速な情報伝達方法を明確にすること。
(2) 政府は、武力攻撃事態等における米軍の行動に関する状況及び行動関連措置の実施状況について国民に必要な情報提供を行うこととしているが、基地が所在する関係地方公共団体に対しても的確かつ必要な情報提供を迅速に行うこと。


4.避難・誘導について
(1) 国民の協力は自発的な意思に委ねられていることから、市町村長が行う避難・誘導の実効性を確保するため、国の責任において、国民の意識啓発を図ること。
(2) 住民の避難誘導を的確かつ円滑に実施するため、消防団や自主防災組織の自発的活動をさらに充実強化させるとともに、その支援育成を図ること。
(3) 都道府県の区域を越える広域的な住民避難について、国は、避難住民を受入れる都道府県との十分な調整を図ること。また、避難住民を受入れる都道府県、受入関係市町村に対し十分な情報提供及び支援を行うこと。
(4) 市町村が避難住民を誘導する際、避難住民を避難地域まで運送する車両と、防衛出動した自衛隊の戦車や車両とが路上で交錯し、混乱状態とならないよう、国が責任をもって避難路を指定し、情報提供するなどの適切な対処方策を確立すること。
(5) 道路・港湾施設等特定公共施設の利用については、武力攻撃事態等対策本部長が、その総合的な調整を図り、利用に関する指針の策定その他の必要な事項を定めるとされているが、利用指針の策定等に当たっては、避難・誘導に責任をもつ市町村長の意見を十分尊重し、調整を図ること。
 

5.その他
(1) 大都市の特例により指定都市が行うこととなっている救援措置について、その実施に必要な指示系統、費用支弁のあり方などについて、国、都道府県、指定都市の関係を明確にすること。
 なお、国、都道府県、指定都市の関係を明確にする際、都道府県の区域内における国民の保護に関する措置は、原則として都道府県知事の総合調整のもとで行うものとし、また、大都市の特例により指定都市が処理する事務に係る経費については、指定都市に財政上の措置を講じるものとすること。
(2) 国民の保護のための措置を実施する際に、私権の制限が行われる場合の国民の権利利益の救済や私権の制限に係る事務手続き等については、国民の十分な理解が得られるよう具体的な要件、処理基準等を明確にすること。
(3) 武力攻撃事態における国民の保護の措置に関する法律等について、今後の社会情勢等を十分踏まえ、法施行後、必要に応じた見直しを適時行うこと。