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介護保険制度の基本的見直しに関する意見(平成15年10月1日)

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介護保険制度の基本的見直しに関する意見

平成15年10月1日
全国市長会


 高齢化の進行、要介護等認定者及びサービス量の増加等により、介護給付費は年々増大している。また、第1号保険料について本会が全都市を対象に実施した調査によると、本年4月からの第2期事業運営期間における基準月額の平均は3,250円となっており、制度導入時に試算されていた保険料を大きく上回っている。
 このようなことから、今後ますます厳しい保険運営を強いられることは必至の状況となっている。
 現在、社会保障審議会介護保険部会を中心に法施行後5年を目途とする制度見直しの検討が進められているが、本会においても、本年3月、介護保険制度検討小委員会を設置し、これまでに本会が要請してきた事項を含め、制度の基本的見直しについての検討を行い、下記のとおり意見を取りまとめた。
 よって、国は、これら意見を尊重し、今後の検討に十分に反映されるよう強く要請する。
 


1 保険財政
(1) 介護給付費負担金については、25%を国の負担とし、調整交付金は別枠とすること。
(2) 保険財政が持続的かつ安定的に運営されるよう、中長期的課題として、国の公費負担割合の引上げについて検討すること。
(3) 財政安定化基金の原資については、国及び都道府県の負担とすること。
(4) 介護保険事務費交付金については、保険者に超過負担が生じているので、実態に見合った交付とすること。

2 低所得者対策
 国が実施している低所得者対策は、保険料及び利用料の軽減策が十分でないことから、抜本的に検討し、国の制度として、財政措置を含めて総合的かつ統一的な対策を講じること。
 なお、社会保障制度間で異なる低所得者定義の一本化に向け、中長期的課題として抜本的な検討を行うこと。

3 保険料
(1) 第1号保険料については、世帯単位で比較すると所得がより少ない世帯の保険料が高くなる場合もあることなどの現状にかんがみ、不公平感が生じることのないよう、世帯概念を排した賦課方式などの検討を行うこと。
(2) 第1号保険料について、保険料納付の利便性、徴収事務の効率化及び徴収率の向上を図るため、全ての年金を特別徴収の対象とすること。

4 保険者
 介護保険財政については、国保財政の二の舞になるという危惧があることから、小規模保険者の実態、広域化を実施している保険者の運営状況、国保の保険者の再編・統合に向けた検討や市町村合併の動向等を踏まえつつ、保険者の在り方について、中長期的課題として検討を行うこと。

5 サービスの質の確保・事業者指導
(1) 介護サービス事業者に対する都道府県の指導・監督業務が十分に機能していない実情にあることから、その機能強化を図るとともに、保険給付の適正化が円滑に進められるよう、国、都道府県と市町村との連携を図る方策を検討すること。
(2) 有料老人ホーム等の特定施設及びグループホームを指定する場合には、高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画との整合性が図られるよう、事前に市町村と協議するなど、指定の在り方について検討すること。
(3) 福祉用具購入・住宅改修に係る事業者については、優良な事業者の確保やサービスの質の向上を図る視点に立ち、都道府県等による指定又は登録制度の採用について、小規模事業者に配慮しつつ、具体的な検討を行うこと。

6 被保険者
(1) 被保険者の年齢の範囲については、様々な意見があり、その引下げを図ることは慎重な検討を要すると考えるが、制度の安定的な運営のため、中長期的視点から、給付と負担の在り方を含め総合的な検討を行うこと。
(2) 有料老人ホーム等の特定施設及びグループホームの入所者に対しても住所地特例を適用すること。

7 保険給付
(1) 在宅と施設の保険給付については、在宅サービスと施設サービスの在り方や利用者の負担の在り方を含め、その均衡を図る方策を検討すること。
(2) 介護保険の対象とされていない若年障害者への対応については、本年4月に創設された支援費制度の実施状況を検証し、地域における福祉サービスの状況を踏まえつつ、中長期的視点から検討を行うこと。
(3) 特定疾病の範囲について、医学的見地から制度施行後3年間の実績を踏まえ、早急に検証を行うこと。

8 その他
(1) ケアマネジャーの中立性・公平性をさらに確保するための方策について、具体的な検討を行うこと。
(2) 要介護認定の有効期間については、実態として、介護認定審査会の意見に基づき12か月としている場合が多いので、原則を現行の6か月から12か月に延長すること。
 また、状態が安定している場合については、さらに有効期間を延長できるようにすること。
(3) 要介護認定の申請件数の増加に伴い、認定事務の負担が増大していることから、認定手続きの簡素・効率化のための必要な措置を講じること。