ページ内を移動するためのリンクです。

電子自治体推進に関する提言(平成15年3月25日)

全国市長会は、平成15年3月25日、青木会長(立川市長)並びに沢田電子自治体推進部会長(横須賀市長)が、「電子自治体推進に関する提言」の実現方について、片山総務大臣並びに細田IT担当大臣等に対し面談要請を行った。
 


電子自治体推進に関する提言

平成15年3月25日
全 国 市 長 会


 電子自治体は、まず第一に「顧客」である住民の利便性の向上を目指すべきものであり、加えて行政の効率化、情報のオープン化による行政の透明化、参加協働型行政の推進、民主主義の高度化など多角的な効果を期待し推進すべきものである。
 しかしながら現行の行政組織や仕事のやり方をそのままにしては、本格的な効果は得られない。所期の効果を得るためには、個々の自治体はもとより国、都道府県、市町村を通じた行政組織全般にわたる根本的な経営改革の取り組みが必要不可欠である。
 全国市長会は平成14年11月、行政委員会の中に電子自治体推進専門部会を設置し、上記視点で種々検討を行ってきたが、本会として市町村業務の標準化、国、都道府県、市町村を通じた情報の共有や市町村における人材育成など自治体の電子化を加速させるための取り組みを積極的に進めることとしたところである。ついては、下記のとおり全国市長会として、電子自治体推進に向けての提言を緊急に取りまとめたので、現在、国において進めておられるe-Japan重点計画の見直しの中にも反映させていただいた上で、本提言の実現を早急に図られたい。

 
 
1 行政組織全般の再構築
 電子政府、電子自治体推進を契機として、国、都道府県、市町村を通じて行政項目ごとの事務処理のあり方を徹底的に見直し、極力無駄を無くすという観点から行政組織全体の再構築を図る必要がある。市町村の側から見て、行政事務の処理構造そのものに大きな無駄があるものがあり、中には組織自体を廃止しても差し支えないと思われる中間的な組織もある。電子化の効果を最大限のものにするためには、その大前提として事務処理体制の見直しに基づく行政組織の抜本的な改革が必須であり、中間的な組織を可能な限り減らし、スリム化を図ることが原則となるべきである。既存の組織・機構に手を付けず、事務処理のあり方もそのままにして電子化導入だけを図っても大きな効果は期待できず、かえってその導入費用だけが追加的に嵩むこととなる。
 また、行政組織の再構築にあたっては、電子化されたサービスを利用することとなる「顧客」としての個々の住民の視点から組み立て直しを図るということが特に重要であると考える。
 以上のような観点を整理し、本会として、電子自治体推進のための行政事務の処理体制及び行政組織の再構築にあたっての基本的な考え方を示すと次のとおりである。


(1) 真に必要な行政サービスや行政手続のメニューを洗い直し、民間でできるものは民間に任せること
 
(2) 補完性の原理に基づき、行政事務については、第一義的に住民に一番身近な市町村に権限及び財源を付与する方向で、国・都道府県・市町村の役割分担を根本的に見直し、権限・財源ともに再配分すること
 
(3) 国・都道府県・市町村を通じて内部事務(バックヤード)の業務を電子化し、組織を越えて集約統合することにより情報の共有化を図り、手続きを大幅に簡略化すること

2 国、都道府県、市町村を通じた情報共有の促進と官々手続きの見直し
 国、都道府県、市町村を通じた情報共有を進めることにより、二度手間、手戻り、取次ぎミス、再確認などを排除するとともに、出張や会議等を減らすことなど、事務の効率化を格段に進める必要がある。
 そのために、行政機関相互に関連する業務(社会保険、税など)のデータ連携を進め、転記や再入力などの無駄を一切無くすようにすべきである。このように、行政手続について、電子化と併せて、手続きそのものを再度根本的に見直し、可能な限り簡略化するとともに手続事務の標準化を直ちに実施されたい。

3 業務等の標準化に対する支援等
 広域連携等により規模のメリットを得るためには、事務事業や手続、業務組織から帳票類に至るまでの徹底的な標準化が必須であり、全国市長会としては、市町村職員等による合同検討チームを編成し、市町村業務の標準化について積極的に取り組むこととしたいと考えている。
 ついては、標準化の作業及び標準システムの構築にあたり、技術的な助言や諸調整についての支援をお願いしたい。

4 国の各省のネットワークの集約統合の促進
 国の各省庁、都道府県の各部局、市町村の担当部局を接続するネットワークは、業務ごと組織ごとに整備運用されているのが実態であり、それぞれのシステムごとに個別に回線を引き、市の出先にもその業務ごとの端末を配置しなければならない。セキュリティやプライバシー保護に配慮しつつ、可能な限りLGWAN等への集約統合を図ることを提案する。

5 国の電子化政策に市町村の意見を反映
 国の電子化政策の中で市町村に関わるもの、とりわけ複数の行政機関等が関与する制度等について、個々の住民の視点、市町村の現場の視点でとらえ直し、トータルメリットが最大化するような仕組みを再構築する必要がある。このため、電子化関係の施策のうち市町村に関連するものについては、実証実験の段階で始めて参加させるのではなく、国の各省における政策形成段階から市町村代表を参加させ、現場の実情や意見を適切に反映させる仕組を制度化されたい。

6 電子自治体推進におけるセキュリティの確保と国民の理解形成
 住民基本台帳ネットワーク、公的個人認証サービス、オンライン手続き等の電子化政策について、個人情報保護の観点から安全な運用がなされるよう、個々の市町村が常時検証努力を行うべきと考えるが、国としてその検証のための標準的なモデルを示されたい。さらに、これらのシステムに関し、国の行政機関等おいて適正な利用がなされているかどうかを第三者機関が常時検証し、定期的に国民にその結果を公表するような恒久的な仕組を設けられたい。
 さらに、このような電子化政策について、国民の十分な理解を得られるよう、広報や説明の充実を図られたい。

7 行政情報基盤の一層の整備促進
 市町村の行政情報基盤の整備状況は十分とはいえず、一層の整備推進を図るため、市町村の実情に応じて財政支援措置を充実されたい。

8 「電子政府・電子自治体推進のための国・都道府県・市町村協議会(仮称)」の設置
 国、都道府県、市町村を通じた具体的な事務処理体制のあり方や組織の再構築などについて具体的な協議をするため、国の関係省庁と知事会、市長会、町村会の代表からなる実務者レベルの「電子政府・電子自治体推進のための国、都道府県、市町村協議会(仮称)」について、今般のe-Japan重点計画の見直しのなかでも位置付けていただき、早急に設置されたい。