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社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会中間報告(案)に対する意見(平成14年7月17日)

全国市長会は、平成14年7月17日に、パブリックコメントに付されていた「社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会中間報告(案)」に対して、国土交通省へ意見を提出いたしました。
(参考)社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会中間報告(案) (pdf)

 
社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会
中間報告(案)に対する意見
 
平成14年7月
全国市長会
 
本会では、今般、標記中間報告(案)が示されたことから、都市自治体に対して意見を求めた。
提出のあった意見の概要は別添のとおりであったが、これらの意見を基に、現段階での基本的な考え方を次のとおり表明する。
今後とも、必要に応じ、さらに意見を申し述べていく考えである。
 
1.道路整備の必要性について
国道の一次的な改良という意味において一定のストックは形成されたとしているが、地方においては、主として以下のような点から道路整備は未だ重要な課題となっている。
  道路は、社会・経済活動を支えている基幹的な社会資本であり、地域連携や地域振興のために必要不可欠なものである。
  地方においては、幹線道路の不足、生活道路の未整備、都市計画道路整備率の低迷、狭隘屈折道路の未改良、通学路への歩道の未設置等、道路は質・量ともに十分ではなく、大都市圏と地方とでは道路の整備に大きな格差が生じている。
  市街地等においては、慢性的な渋滞の発生などによって、多大な経済的損失や生活環境の悪化を招いている。
  災害の発生等によって交通の分断が懸念される地域も未だ少なくなく、救急活動の障害ともなるため、代替性の高い道路の整備は推進しなければならない重要な課題である。
  地方には、公共交通機関が未発達で、生活を自動車交通に依存している地域も多く存在しており、これら地域においては、道路のさらなる整備は住民生活に直結した大きな課題である。
  地方圏においては、道路の広域物流に果たす役割は大きく、さらには観光資源の活用が可能となるなど、地域経済の活性化にも重要な位置を占めていることから、今後においても道路整備による効果は多大なものがある。
 
道路は、住民生活の安全性、快適性を確保する上でも、また、それぞれの地域の活性化という観点からも、必要な社会的インフラであり、単に経済性のみでその整備の必要性を判断すべきではなく、それぞれの地域における道路整備の必要性を総合的に勘案した上で判断すべきものと考える。
地方における道路整備の現状は、上記のように未だ十分なものとは言えない状況にあるものであり、今後、高規格幹線道路から生活道路に至る道路交通ネットワークや環状道路の早急な整備を推進することが必要である。
 
2.道路特定財源について
地方における道路整備率が低いことや、生活者重視の施策の展開等のため、道路整備費は今後とも大きな需要が見込まれる。
また、道路特定財源制度は、公平性、安定性、合理性の観点から、目的税として納税者の理解を得ているものであり、地域のニーズを十分勘案し、これを堅持すべきである。
さらに、市町村道の整備水準及び市町村道に係る特定財源比率は、国に比べ依然として低い状況であることから、自動車重量譲与税等の市町村への配分割合を引き上げるなど、市町村道路財源の充実強化を図ることが必要である。
 
3.有料道路について
道路関係四公団が事業主体となっている有料道路については、道路関係四公団民営化推進委員会での審議事項となっているため、ここでは具体的な意見は述べないが、この問題については、大都市在住の人の意見ばかりでなく、地方の意見を真摯に聞き、それを反映すべきであるという意見があることを付言しておくものである。ここでは、その他の有料道路についてのみ意見を述べることとする。
有料道路の整備は、これまで、大都市において優先的に実施されてきたため、地方においては未だ十分な整備が進んでいない状況である。
今後、各市町村においては、それぞれの地域の個性に合わせたまちづくりをさらに推進していくこととなるが、その場合、経済効率性等の観点から、都市圏内の各市町村で生活に必要な基礎的サービスを相互補完しあうなど、地域連携が活発化し、住民の生活圏はさらに拡大していくことが予測される。都市間の円滑な移動を確保するという観点から、有料道路等は地域にとって不可欠のものとなるため、その整備を促進していく必要がある。
また、今後の有料道路の整備を考えるにあたっては、採算性のみならず、道路が有する公共的性格をも考慮し、公的負担のあり方について検討していく必要がある。
 
4.今後の道路整備について
今後の道路整備においては、これまでの自動車交通への対応という観点のみならず、歩行者・生活者への施策の充実を図っていくことが重要となっていることから、道路交通ネットワークの構築や環状道路の整備とあわせ、バリアフリーに配慮した歩道の拡幅や沿道環境改善の推進、沿道との連携の促進、交通事故防止等交通安全施策の拡充などが必要である。
この一方で、道路の整備において、効率化を図ることも重要な視点である。今後においては、既存ストックの有効活用とともに、地域の実情に則した多様な道路構造の採用がなされるべきである。
また、効率的、効果的な道路整備を行うためには、成果重視への早急な移行がなされるべきである。しかし、それぞれの道路が有している目的・役割は、当該道路が存する地域の実情によって異なるものであり、成果の評価指標・方法は、それぞれの地域の実情が反映されるものとしなければならない。また、道路ユーザーである国民、地域住民の意見を反映させることが必要であることは言うまでもない。
また、違法路上駐停車の排除等により、既存ストックの有効活用が図られると考えられるが、これと併せて、駐車場や駐車場案内システムの整備などを図ることも必要である。
なお、新たな道路整備によって既成の中心市街地の空洞化がさらに進行するとの意見があるが、中心市街地の空洞化は複合的な要因で生じているものである。
 
5.地方分権型社会における道路整備について
地方分権型社会の到来にあわせ、地域で必要なものは地域で決定して整備できるよう財源を移譲し、地域の声を反映させた着実な道路整備を促進していくことが重要である。
また、現在、全国各地において市町村合併の検討がなされているが、これらの地域の合併を促進するためにも、既存の市町村におけるそれぞれの中心部間、郊外と中心部間の連絡道路等、地域内におけるネットワーク化のための道路整備を行う必要がある。
こうしたことから、道路整備について、権限面、財源面の両面において、地方分権をさらに進める必要がある。