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平成13年度都市税制改正に関する意見(平成12年10月1日)

 
平成12年10月
全国市長会


 都市財政は、不況による税収の落込みに加え、経済対策としての減税、公共事業等の実施が重なり、その危機的状況は一段と深刻化している。
 また、連続する巨額の財源不足を地方債の増発や地方交付税特別会計の借入れを中心として補ってきた結果、個々の地方公共団体の財政構造が急激に悪化したほか、地方交付税特別会計の借入れが平成12年度末で38兆円に達するなど、地方財政全体としての構造的な問題が重大となっている。
 一方、都市自治体は、介護保険や国民健康保険の運営、ダイオキシン対策・リサイクル推進・地球温暖化対策などの廃棄物・環境対策、中心市街地の活性化、多方面にわたる都市基盤の整備、さらには高度情報化への対応など、数多くの課題に直面している。また、地方分権推進一括法が施行され、地方分権が一段と現実味を増すにつれ、都市自治体の責務は益々重要なものとなる。
 今後都市自治体が住民との協働の下にこのような責務を果たしていくためには、必要な施策を実施していくための安定的な税財源の確保が不可欠である。
 また、都市税制の基本及びこれに伴う税収は、国の法律によって決定される仕組みであり、いわゆる課税自主権の行使のみによって必要な財源を確保できるものではない。
 したがって、国においては、平成13年度の税制改正に当たり、地方財政の危機的状況を十分認識しつつ、都市自治体が自ら行政改革を徹底するなかで、介護保険その他円滑な自治運営を行っていくことができるよう、都市税源の安定確保のため、国・地方の役割分担を踏まえた税源配分の見直しなどを含め、下記事項について必要な措置を講ずるよう要請する。
 


 

1 税源移譲等による都市税源の充実強化について
 地方分権の進展に伴う都市自治体の役割の高まりを視野に入れつつ、地方の歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、所得税から個人住民税への、また、消費税から地方消費税への税源移譲等を含む抜本的な税制改正を進め、都市税源の充実強化を図ること。

2 個人住民税の充実確保について
(1)市町村の基幹税目である個人住民税は、これにより地域社会の費用を住民が広く応能・応益負担している税であり、安定性と伸長性を有する極めて重要な税であることを踏まえてその充実を図ること。
(2)株式等譲渡益に係る申告分離課税方式への一本化については、改正済みの法律の規定どおり、平成13年4月1日から実施すること。
(3)個人住民税均等割の税率を引き上げること。また、個人住民税均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻に対する均等割など均等割の非課税措置を見直すこと。
(4)生命保険料控除及び損害保険料控除については、その創設目的に鑑み廃止を含めた見直しを行うこと。
(5)利子・配当所得に対する課税のあり方については、税負担の公平を図る見地から、適切な見直しを行うこと。

3 法人住民税の充実確保について
(1)法人所得課税については、都市行政との関わりの大きさ、都市税源としての重要性等を考慮し、法人住民税としての市町村への配分割合を充実すること。また、地方税全体としての安定確保のため、これまで地方六団体が要望している法人事業税の外形標準課税の導入を早期に実現するとともに、導入に当たっては法人住民税等関連する税制の取扱いについても十分配慮すること。
(2)法人住民税均等割の税率を引き上げること。
(3)日本銀行については、国庫納付金が所得の算定上損金に算入することとされているため国庫納付金の多寡によって法人住民税の税収に大幅な変動を来たすなどの問題があるので、これらについて根本的な見直しを行い、安定した税収入を確保できるように措置すること。

4 固定資産税の安定的確保等について
(1) 固定資産税については、都市の基幹税目であることから厳しい都市財政の状況を踏まえその安定的確保を図ること。
(2)土地評価の均衡化・適正化を図り、適切な評価を行うため、地価公示地点の標準地点数をさらに拡充するとともに、その設定に当たっては、市町村の意見を十分に反映させること。
 また、都道府県地価調査における基準地点数についても拡充を図ること。
(3)固定資産税に係る評価・課税制度について、納税者がより理解しやすい仕組みにするとともに、税務事務の円滑化に資するよう更に配慮すること。

5 ゴルフ場利用税の充実強化について
 ゴルフ場所在都市にあっては、ゴルフ場関連の財政需要もあり、ゴルフ場利用税は貴重な財源であることから、その充実強化を図ること。

6 事業所税の充実について
 事業所税については、都市環境の整備を推進するための重要な財源であることから資産割の税率を引き上げるとともに、新増設分については、免税点の引下げなどその見直しを行うこと。

7 軽自動車税の充実改善について
 軽自動車税については、相当長期にわたり税率が据え置かれていることや自動車税との間の負担の均衡を考慮し、税率を引き上げること。
 なお、原動機付自転車については、徴税効率が極めて低いことに鑑み、課税方法、課税対象等について、早急に実態に見合った見直しを行うこと。

8 特別地方消費税の廃止に伴う措置について
 特別地方消費税の廃止に伴い、これに代わる適切な税制上の措置を講じること。

9 環境税制の導入について
 いわゆる環境税制の導入に当たっては、環境施策において都市自治体の果たしている役割及び財政負担を十分勘案した地方税とすること。

10 市町村道路財源の充実強化について
 市町村道の整備水準及び市町村道に係る特定財源比率は、国に比し依然として低い現状に鑑み、自動車重量譲与税等の市町村への配分割合を引き上げるなど市町村道路財源の充実強化を図ること。
11 定額課税の見直しについて
 入湯税及び特別とん税については、相当期間にわたって税率が据え置かれていることから税負担の均衡、物価水準の推移等を勘案し、税率を引き上げること。

12 非課税措置等の整理合理化について
 地方税における非課税等特別措置については、税負担の公平確保の見地からより一層の整理合理化を図ること。
 特に、固定資産税等の非課税措置、課税標準の特例措置については、引き続き見直しを行うこと。
 また、国税における租税特別措置についても、引き続き見直しを行い、地方税収を確保すること。

13 政令指定都市等に対する税制上の措置について
 政令指定都市については、国・道府県道の管理その他の事務配分の特例が設けられていることからこれらに見合う税制上の特例措置を充実すること。
 また、中核市及び特例市についても、事務配分の特例等実態に即した税制上の特例措置を設けること。

14 航空機燃料譲与税の充実について
 空港関係市町村における航空機騒音対策事業、周辺整備事業等に要する経費が増大していることに鑑み、航空機燃料税の税率を引き上げるとともに、市町村に対する配分を充実すること。

15 税制の簡素化及び税務事務の効率化について
 都市税制に対する住民の理解と信頼をより確かなものにしていくためには、税負担の公平を確保するとともに、住民に分かりやすい簡素な制度とし、併せて納税者の事務負担の軽減等を図り、税務執行の効率化を図ることが必要である。
 こうした観点から、引き続き、税制上必要な措置を講じるほか、関係省庁(国税庁、社会保険庁、法務局等)・都道府県との税務行政運営上の協力体制を充実すること。
 

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