ページ内を移動するためのリンクです。

廃棄物政策に関する意見 (平成11年1月27日)

平成11年1月27日(水)開催の全国市長会理事・評議員合同会議で決定。
 

廃棄物政策に関する意見

平成11年1月 27日
全 国 市 長 会


 廃棄物をめぐる問題は、地域社会にとって重大であるにとどまらず、今や地球規模の環境や資源のあり方にとってもすみやかに解決すべき重要な課題となっている。
 国においては、近年、廃棄物対策に関連して、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の数次にわたる改正を行っているほか、平成3年再生資源の利用の促進に関する法律、平成5年環境基本法、平成7年容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律、平成10年特定家庭用機器再商品化法をそれぞれ制定する等の対策を講じているが、問題は一層深刻の度を加えつつある。
 全国市長会では、廃棄物問題の重要性から、平成5年、ごみ処理の有料化導入促進等を内容とする「廃棄物問題を中心とした都市の環境問題に関する提言」を取りまとめたほか、平成9年1月に本会内に廃棄物処理対策特別委員会を設置して対応体制を整えるとともに、平成9年度から2ヵ年にわたり(財)日本都市センターに対し、廃棄物対策のあり方に関する調査研究を委託し、このほど同センターから別添のとおり調査研究結果の報告を受けた。
 廃棄物対策については、都市自治体として、ひきつづき全力をあげて対応していかなければならないが、問題解決のためには、単に都市自治体のみでなく、国においてもこれまで以上に幅広い総合的な対応をすることが必要と考えられる。そのような観点から、下記のとおり廃棄物に関する総合的な政策について意見を提出するので、国においてはこれに沿って必要な措置を講ずるよう強く望むものである。


1.現在の廃棄物対策では、排出された廃棄物の処理に追われることがあまりにも多い。今後の基本的な方向としては、まず、廃棄物の発生抑制・排出抑制をより一層徹底させ、廃棄物の減量化を強く推進する必要がある。そのためには、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済構造やライフスタイルを根本的に見直し、資源循環型社会を構築していくことが必要であり、そのことにつながる総合的な政策を展開していかなければならない。

2.現在は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律のほか、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律等のリサイクル関係法が制定されており、いわば廃棄物処理とリサイクル推進の2つの法律体系となっている。しかし、今後は、発生抑制、リサイクル、適正処理を一元的にとらえ、総合的な廃棄物対策を進めることが強く求められている。そのため、地域の廃棄物処理のみでなく、地球環境の保全と適切な資源消費、物質循環の確立をもめざした「資源循環・廃棄物法」(以下「新法」という。)のような総合的な法律の整備を行うべきである。

3.新法においては「責任主体」と「事業主体」の考え方に基づき、まず、廃棄物に関する第一義的な責任は、廃棄物の発生者・排出者(「責任主体」)にあること、費用負担は汚染者負担の原則によるものであることを明らかにするとともに、現実には個々の発生者・排出者によってすべて処理することは、衛生的な処理、環境保全の面で問題が生ずるおそれがあるため、「責任主体」から付託を受けた都市自治体等が「事業主体」として処理するとの基本的な考え方を示すこととする。
  また、この考え方により、生産・流通事業者は、生産・流通のそれぞれの段階で廃棄物の発生を抑制すること、リサイクルを容易にする製品を生産すること等の責任を分担することとする。
  さらに、生産・流通事業者については、使用済製品のリサイクルや適正処理に対して資金的物理的責任を含むという「拡大生産者責任」の考え方が具体化される必要がある。
  もとより、都市自治体の役割がこのような考え方により減ずることはない。都市自治体は、「事業主体」として現実に廃棄物の処理を行うのみでなく、地域における廃棄物の発生・排出抑制、リサイクルさらにはまちづくり政策の中での対応などについて広く「廃棄物管理」ともいうべき役割を負うこととなるものである。

4.リサイクルの推進により増加した再生資源の余剰が問題となる場合があるが、これらの資源の有効な利用などを推進していくためには、新法に基づく廃棄物対策においては、単に法律に基づく規制のみでなく、幅広い経済的な措置も効果的に活用する必要がある。

5.廃棄物対策には処理技術等に関する研究開発が重要である。全国市長会は、平成9年7月のダイオキシン類対策に関する決議において、国は、ダイオキシン類の発生メカニズムの解明及び削減対策の研究をさらに進めるよう求める旨の決議を提出したが、このように、製品の生産から廃棄物の処理に至るまでのすべての段階を通じて、廃棄物の発生抑制や安全かつ効率的な処理を行うための研究開発については、基本的に国の責任のもとに、さらに特段の充実強化を図るべきである。

6.現在の一般廃棄物と産業廃棄物の区分は、廃棄物の性状による区分と処理責任による区分が混在しているが、これを改めることとし、すべての不要物を包括的にとらえ、まず、「リサイクルすべきもの」とそうでないものとに区分し、後者について、「有害性が高く特別な管理が必要なもの」と「その他」の廃棄物に区分し、「その他」について、「通常の処理施設で安全に処分することができるもの」(第一種廃棄物)と「有害物質を生成する等の可能性があり、高度な公害防止装置を有する施設において処分する必要があるもの」(第二種廃棄物)として区分する。
  このような区分のもとで3に述べた「責任主体」と「事業主体」の考え方を適用しつつ、総合的な廃棄物対策を推進することとし、その際、都道府県と市町村の役割分担のあり方についても、第二種廃棄物の処分に関しては、都道府県が「事業主体」となる方途を設けるなど、再検討する必要がある。
  これらの考え方を具体的に例示すれば別記 のとおりである。

7.廃棄物発生から処分までを含む総合的な対策を進めるに当たり、何よりも重要なことは、消費者である一般国民はもとより、生産者、流通事業者等のそれぞれの立場にある国民すべての理解・協力を得ることである。
  また、国と地方公共団体とは緊密、適切な協力関係に立たなければならない。国においては、法制度の整備、研究開発、経済措置、地方公共団体への支援などさまざまな役割があるが、これらを実行するに当たっては、省庁の壁をこえ、政府全体としてさらに一体となった取組みを強化する必要がある。また、その際、廃棄物対策の現場にある都市自治体の意見を重視するべきである。
  地方公共団体においても、都道府県と市町村との間の関係について6に述べたような再検討を加えつつ、協力関係をより強化するとともに、都市自治体が住民に最も身近な行政主体として、廃棄物の問題を含めた総合的なまちづくり政策を展開していくことができるよう、国、都道府県において適切に対応することが望まれる。