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中心市街地の活性化対策に関する意見(平成9年12月1日)

全国市長会 中心市街地活性化対策研究会
平成912
  

1 地域が一体となった活性化対策の推進
(1)行政と地域の連携
(2)事業実施への総合的支援
2 中心市街地の活性化に向けた基盤整備
(1)基盤整備への支援
(2)土地区画整理事業等の推進
(3)住宅整備の推進
(4)土地の有効利用の促進
3 商店街等の活性化
(1)中小商店に対する支援措置の拡充
(2)商店街の競争力の強化
(3)商業施設の整備に係る税制措置・支援措置等の拡充
(4)空き店舗対策の推進
(5)大規模小売店舗との調整
事例1 事例2 事例3 事例4 事例5 事例6 事例7 事例8

 


都市の中心市街地は、ショッピングや賑わい、交流の場となり、いわば都市の顔として重要な役割を果たしてきた。
 しかし、近年、地域内の居住人口の減少、モータリゼーションの進展、各種施設の郊外移転、大型店の郊外展開等により、空き店舗の発生などいわゆる空洞化が進行し、その活性化が喫緊の課題となっている。
 これは、人口の大小を問わない全国的な問題となっており、先に、本会が実施した全国の市長に対するアンケート調査の結果においても、都市施策を実施するにあたり中心市街地衰退の問題が重要な課題であるとする意見が最も多数となっている。
 このため、本会としても、中心市街地活性化対策は早急に取り組むべき重要な課題であるとの認識のもとに、本会経済分科会に中心市街地活性化対策研究会を設置して協議を重ねてきたが、今般、その検討結果を次のとおり取りまとめた。
よって、国及び関係機関におかれては、中心市街地活性化対策の重要性を深く認識され、下記の事項を実現されるよう強く要請する。 

 

 
1 地域が一体となった活性化対策の推進
中心市街地の活性化施策を具体的に進めるにあたっては、行政と地域住民が連携し、地元商店街等において気運の醸成を図ることが重要であり、次の事項に対する積極的な対応が必要である。
 
(1)行政と地域の連携
 中心市街地の活性化を効果的・効率的に推進するためには、地域の実情に基づいて柔軟な対応が図られるよう都市自治体が中心的な役割を果たしながら、国・地方公共団体・商店街等が一体となって取り組んでいく必要がある。

例えば、現在中心市街地を活性化させるため、関係省庁において、事業者支援や都市整備などに様々な支援策が講じられているが、各省庁にわたって類似の施策が輻輳していることが問題としてあげられる。特に、福祉・文化・居住など多様な機能を導入するにあたっては、用地確保などに多額の事業費を要することから、これらを一体的・複合的機能として整備することが必要である。
しかし、複合施設の建設については、各省庁によるタテ割り行 政等が弊害となり、地域の実情にあった自主的、主体的な事業の実施が進まないことがあり、今後、事業を効率的に進めるため、関係省庁等の窓口を可能な限り一本化する必要がある。

 また、中心市街地活性化のためには、地元商業者の自助努力も 必要であり、地元商業者を主体としたまちづくりを推進するとと もに、これと連携しながら自治体が、地元のまちづくり団体や商 業者のみでは実施することが困難な駐車場や環境整備などの基盤 整備事業を推進するなど、官民一体となったまちづくりを進めることが不可欠である。

 中小商業者に危機感が乏しく、高齢化等により個々の事業者のまちづくりへの一体感や組織力が不足しているケースもある。商業者それぞれの意識、経済力、経営方針の違いがある中で、いかにまちづくりへの参画意識を持ち、共通の理念づくりや一体感を確立していくかということが課題となっている。

 また、中心市街地での土地・建物の所有、居住、営業等の権利 関係は複雑であり、これらの権利を整理、調整しながら市民の気運醸成と合意形成を図っていくことが事業の推進のため必要である。したがって、小規模・自発的な住民主導のまちづくり組織の活動や、イベントの活用などにより、市民の意識と気運の醸成を図るための支援策が必要である。

 また、中心市街地の活性化については、気運醸成や合意形成に 相当な時間を要するケースもあることから、この場合には性急な 計画の策定や事業化を強いることなく、日頃の活性化への取組みを支援することが必要である。

  以上の観点から、次の項目について積極的な対応が必要である。

○ 各省庁における類似施策の連携の強化、総合的な支援策の創設
支援策を効率的、迅速に進めるため、各省庁及び都道府県の窓口を可能な限り一本化
現行のまちづくり組織に対する直接・間接の助成制度の拡充、特に、長期にわたる補助が可能となるよう拡充強化
地元商業者が行うイベントや各種事業、比較的少人数で行うソフト事業に対する支援の充実
民間活力を誘発し、商業者等が主体となった商店街の活性化のため、補助制度、無利子貸付制度の充実、税制優遇措置
 

(2)事業実施への総合的支援
中心市街地活性化施策を推進するため、都市自治体が主導的な立場に立って、自主的な判断により地域の特性や実態に即し、新 たなライフスタイルに対応した魅力ある商業集積の形成や、街なみの整備をはじめとする都市基盤の整備、社会福祉施設等の公共 施設の整備等を総合的かつ継続的に推進することが必要である。

また、都市自治体とともに地域住民と地元商工業者が一体となって取り組んでいくための組織づくりが重要である。

 以上の観点から、次の項目について積極的な対応が必要である。

都市自治体が、自主的な判断により地域の特性や実態に即して実施する各般の施策に対する支援
総合的な活性化策を自主的に企画、運営する商業者等の組織に対する支援
中心市街地活性化に関する方策決定やコーディネートのため、中長期にわたる専門家の起用や派遣に対する支援
○ 地域振興整備公団による事業(メニュー、金額)の拡充市街地活性化施策を推進する第3セクターが行う計画・調査等の事業に対する補助制度の創設
第3セクターの設立に賛同して、出捐金、賛助会費を支出する民間企業に対する税制上の優遇措置の充実
 


2 中心市街地の活性化に向けた基盤整備

 中心市街地の活性化を図るためには、その基盤を整備する必要があり、そのため次の事項に対する積極的な対応が必要である。


(1)基盤整備への支援
  中心市街地の活性化のためには、これまでに蓄積されてきた社会資本の有効利用を図りつつ、今後の高齢化や市民ニーズの多様 化等時代の変化を踏まえながら各都市の魅力を生かしたまちづくりを行う必要がある。

 このためには、商業・業務機能はもちろんのこと、アミューズメント等を含む文化・教育、福祉・医療、居住等の都市機能の充実を図るとともに、これを支える道路、駐車場、公園、河川等の基盤施設や鉄道、バス等の公共交通手段の整備・充実を図ることが重要である。

  また、これらの整備の際には、歩行者、障害者、高齢者、自転車等に配慮したまちづくりや歴史的街並みをはじめとする景観や積雪寒冷等の地域特性を活かすなど、都市の実情に合わせたきめ細かな整備を行うことができるよう配慮する必要がある。

 さらに、高額な地価、零細で複雑な権利関係、自治体の財政力や商業者等民間の資金力、事業の期間・タイミング等の問題もあり、これらを踏まえた弾力的な支援策が必要となる。

 以上の観点から、次の項目について、国は、積極的に対応する必要がある。
 
人口規模等の一律の基準にとらわれない、地域の実情に応じた柔軟な支援措置の実施
地域の実情に即した長期的継続的な計画に基づく事業への支援
中心市街地における街路や環状道路等のアクセス道路の整備
○ 駐車場、駐輪場等の整備
鉄道、バス、路面電車等の公共交通手段の整備・運営、パーク・アンド・ライドシステム等公共交通手段の利用促進及び総合的な交通需要管理対策の推進
商業・業務、文化・教育、福祉・医療、居住等の機能の中心市街地への導入促進
公共・公益施設等の整備の際における複合的機能の導入や既存施設の弾力的・効率的運用による機能の複合化
民間都市開発推進機構等を活用した民間機能導入による基盤整備の促進
中心市街地の環境整備に資する公園、河川の整備、歴史的街並み保存や景観形成事業の実施
中心市街地における歩行者・自転車のネットワークの形成及び利便性向上策
○ 中心市街地の防災拠点としての公園、避難路などの整備
これらの項目に関する高齢者、障害者等への配慮や積雪寒冷などの地域特性等多様な地域の事情に応じた弾力的できめ細かな対応策の実施

 
(2)土地区画整理事業等の推進
 中心市街地の活性化を図るためには、散在する低・未利用地の入れ替え・集約化等による利用の促進を図りながら、街路・公園 等の基盤施設や公共・民間の多様な機能を導入していくことが必要である。この場合、中心市街地の高額な地価等を考慮すると、面的整備手法である土地区画整理事業や市街地再開発事業は極めて有効な方策である。

 一方、中心市街地においては、零細で複雑な権利関係や保留地・保留床の価格、土地利用に係る合意形成の困難さ、事業実施済地区の内包等事業実施上多くの問題がある。

 したがって、再開発や土地の再編等にあたっては、きめ細かで弾力的な制度・施策が必要である。

 以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
中心市街地における土地区画整理や市街地再開発の手法による街なか再生を図るための面的整備の実施
敷地整序型土地区画整理事業、優良建築物等整備事業等、中心市街地におけるきめ細かで弾力的な土地再編や再開発の実施
事業の実施に際して、基盤施設、公共交通手段、公共・公益施設、教育・文化、福祉・医療、居住機能等の一体的整備、公共・民間による土地取得や保留床・保留地等の活用
事業に係る気運醸成及び合意形成、用地先行取得や地区外転出に係る関係権利者の事業協力の促進、これらに資する税制措置及び関連する地方財政措置、事業内容や期間等について事業推進のため制度運用の弾力化及び省庁の連携の強化
 
(3)住宅整備の推進
 中心市街地からの人口の流出は空洞化、沈滞化の大きな要因となっており、活力や賑わいをもたらすために定住促進が必要である。

 中心市街地は社会資本や多様な機能が集積された質の高い生活空間として、高齢者・障害者等や若者・子育て世代にとっても快適な居住空間となるポテンシャルを有する一方、高い地価や騒音など居住環境の問題等があり、これらを克服しながら生活しやすい環境を確保する必要がある。

  以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
住宅の新設、建替、共同化の促進及びその際の商業、福祉、文化等他機能との複合化
○ 区画整理、再開発等の事業に際しての居住機能の導入
特定優良賃貸住宅促進制度等各種制度を利用した賃貸・分譲住宅供給と入居の促進
中心市街地への定住促進や、居住機能導入に資する税制措置及び関連する地方財政措置
住宅都市整備公団及び地域振興整備公団による中心市街地における住宅供給の促進。また、これらの事業を行うに際しての地域の実情の反映やまちづくりの主体としての機能の確保
 
(4)土地の有効利用の促進
 中心市街地において基盤整備等を進めるためには、土地利用の再編、流動化、高度利用等を促進する必要があるが、その際、高額な地価、複雑な権利関係、低・未利用地の存在が大きな妨げとなっている。

 一方、中心市街地の整備には、総合的かつ複合的な機能の整備やそのための各種事業手法の導入が必要であり、その際の土地対策は総合的かつ弾力的なものが求められている。

  以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
中心市街地の基盤施設等整備のため、公共・民間双方による先行取得を含めた用地等(ビル床を含む)取得の促進、さらに複合的機能の導入に伴う効率的な用地等取得のための方策
用地等の取得・売却・交換の促進に資する税制措置、代替地確保・提供等のための協力の促進
区画整理、再開発等による空き地、未利用地の集約・活用の促進
中心市街地の基盤整備等に際しての国有地等の効果的な活用方策
上記のような土地の流動化・高度利用促進のための住宅都市整備公団及び地域振興整備公団の機能の充実
 


3 商店街等の活性化

 中心市街地の活性化のためには多様な都市機能の充実が必要であるが、とりわけ商店街の活性化が重要であり、次の事項に対する積極的な対応が必要である。
 
(1)中小商店に対する支援措置の拡充
 中心市街地の商業振興・活性化を効果的かつ円滑に推進するためには、まちづくりの主役である市民の理解と、中心市街地活性化の核となる商店街自身の努力が極めて重要である。

 そのためには、商業者等の意識を高める研修などを実施することにより、中心市街地活性化のための長期継続的な取組みに対応できる優れた人材を育成する必要がある。

 そのうえで、行政においては、民間活力を十分に引き出し、また、その取組みが効果的に発揮されるよう条件整備を行う必要があり、官民一体となった取組みが求められている。

 以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。

市民、商店主自らが中心市街地を活性化させようとする気運を醸成するための施策
中心市街地に民間活力を誘導するための制度融資、税制の優遇措置の拡充
優れたリーダー、起業家、経営者を育成するための研修等ソフト施策の充実、研修講師の紹介・派遣や必要経費に対する支援
長期的に活性化に取り組むことができるよう、長期的視点に立った人材の育成と派遣に対する支援
中小商店同士の連携と競争力強化のためのネットワーク構築、インターネットの活用、電子商取引の導入の研究など、商店街の情報化の支援
 
(2)商店街の競争力の強化
 資本主義経済においては様々な形で競争が行われている。大規模小売店舗法の緩和による大型店の相次ぐ出店により、大型店対既存商店街あるいは大型店同士においても熾烈な競争が行われている。中心市街地の既存商店街においても、大型店に負けない、多様な市民ニーズに対応した商店街の構築に向けた商業者の意識改革と自助努力が不可欠である。

 このような状況の中で、個店において積極的な取り組みを行う必要があるが、また、商店街協同組合、商店街振興組合などの組織化を支援する必要があり、そのため、制度融資、税制措置、組合の運営基盤の強化のための支援策を講ずる必要がある。

 また、地域間、都市間の競争も激化しており、それぞれの地区が特色を生かした、個性豊かなまちづくり(ソフト事業としてイベント事業、ハード事業として商業施設建設、インフラ整備、公共施設整備等)が求められている。このため、官民一体となった取組みが必要であるが、資金面においては民間や地方自治体のみでは限界があり、国の助成制度の充実が必要である。

 特に中心市街地においては、施設整備に必要な用地を確保することが難しく、これに対しては国有地の有効活用など、地域事情に応じた対応が必要である。

 以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
商店街協同組合、商店街振興組合などの組織化支援、組合の運営基盤強化のための支援
地域間・都市間の競争力を強化するため、イベントなどのソフト事業や商業施設建設、インフラ整備、公共施設整備等に対する支援
○ 国有地等の有効活用による用地の確保
 
(3)商業施設の整備に係る税制措置・支援措置等の拡充
 従来から特定商業集積法に基づく商業施設整備に関しては、土地等の譲渡所得に係る特別控除、商業基盤施設及び商業施設に係る特別償却のほか、これに関連する地方税の軽減措置などが実施されてきたが、中心市街地における地価は依然として高いので、施設建設に係る採算を確保し易くするための関連税制措置・支援 措置の拡充が必要である。

 以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
中心市街地における土地等の譲渡所得に係る特別控除額の引上げ
中心市街地における商業基盤施設及び商業施設の特別償却制度の充実
商業施設建設に係る地域振興整備公団の業務拡充、補助制度の充実
 
(4)空き店舗対策の推進
 商店街における空き店舗は、商店街全体の活力を奪い、集客力の低下をもたらすこととなる。したがって、空き店舗の発生後できるだけ早期に、これに代わる店舗を誘致する必要がある。また、空き店舗を有効に活用し、商店街内への集客施設として利用することも有効である。

 これらを実施するにあたっては、家賃等に係る負担軽減措置などによる商業者の投資意欲を誘導する施策が必要である。
 以上の観点から、次の項目に関する諸施策の充実強化が必要である。
 
○空き店舗への出店に対する負担軽減措置

空き店舗を集客施設として利用するなど、空き店舗有効活用への支援
 
(5)大規模小売店舗との調整
 大規模小売店舗の出店は、中心市街地の小売商店との関係、交通混雑や騒音、ゴミなどの周辺環境への影響など、中心市街地の 活性化対策と大きな関わりがある。


 したがって、大規模小売店舗の出店問題については、このような事情も含め、地域の実情に十分配慮した対応がなされるようにする必要がある。 
  

 


 

※掲載の資料はシステムの関係上、発表月の1日付としていますが、必ずしも当該の日に発表されたものではありません。