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森会長 平成23年 年頭のご挨拶(機関誌「市政」平成23年1月号より)

 

平成23年 年頭のご挨拶 

 
第28代 全国市長会 会長
(平成21年6月3日~ 
長岡市長   森     民  夫
 
 

 明けましておめでとうございます。年頭にあたり、昨年の反省を踏まえ、新しい年の課題について述べさせていただきます。
(新政権と向き合った2010年)
 昨年は、民主党政権と常に緊張感を持って向き合う1年でした。その際、常に目標としてきたことは、我々が持つ現場力を正当に評価して、政策の企画・立案段階から参画できる仕組みを作るということでした。市民に密着した政策を培ってきた我々だからこそ、十分に役割を果たせるという自信と誇りがあるからです。
  私は、国と地方の協議の場をはじめ、あらゆる機会を利用して、我々を政策の企画・立案のパートナーとして活用すべきであるということを主張し続けました。そして、地方を尊重する姿勢があれば協調し、軽視すれば対決するという基本姿勢を堅持してきました。
  政府の中には、我々の主張を真摯に受け止めてくれる方から現場の実情をほとんどご存じない方まで、色々な方がいらっしゃいます。私の苦心は、地域主権の大切さについてあまりご理解がない方に対して、わかりやすく、かつ、強く主張することにより、地域主権の大切さを理解できる方の発言権が政府部内において増加するように努めることにありました。
 子ども手当をめぐる顛末を例に、具体的に述べてみます。私は、子ども手当をめぐる動きが混乱した理由は二つあると考えていました。第一に、抜本的な制度の構築のために早期に地方と協議する必要があったにもかかわらず、首相交代、参議院議員選挙、民主党代表選挙と続いた4カ月にも及ぶ空白があり、協議の時間が失われたことです。第二に、国・地方を通じての総合的な子育て支援施策の充実について、本来パートナーである我々との協議の重要性を十分認識していない幹部がいて、11月ごろまで、真剣な協議ができなかったということです。
  そこで、我々は、11月18日の理事・評議員合同会議において、「地方軽視の一方的な 決定がなされる場合は事務の返上も辞さない」という強い決議をしました。この決議の ポイントは、国と地方との財政負担の問題としてのみアピールするのではなく、子育 て支援の現場を預かってきた我々の「誇り」にかかわる問題であることを、国民やマスコミにアピールすることにありました。
 結果として、11月22日の国と地方の協議の場、12月8日の細川厚生労働大臣との協議、12月16日の総務大臣との協議と続き、12月20日に5大臣合意がなされました。私は、子ども手当の問題点の根源は、次の二点にあると考え、これらの協議の場で主張し続けました。第一に、少子化施策全般にわたる的確なビジョンもないままに巨額の財源を要する現金給付にこだわり、現場を預かる我々が培ってきた保育サービス等の現物給付の重要性を軽視したということ、第二に、その我々との調整を図ることなく、一方的に決定がなされてきたことの二点です。
  子ども手当に関する5大臣合意では、未納の保育料等を徴収することができる仕組みの導入や、地方の子育て支援サービス拡充のための新たな交付金制度の創設等に言及しています。しかし、政策の企画立案のパートナーを自負する我々として最も重要なことは、「平成24年度以降の子ども手当の制度設計に当たっては、関係府省と地方公共団体の代表者による会議の場を設け、子ども手当及びそれに関連する現物サービスに係る国と地方の役割分担及び経費負担のあり方を含め、地方の意見を真摯に受け止め、国と地方が十分な協議を行い、結論を得る」と合意されたことではないかと思います。
 さっそく、昨年末に、玄葉国家戦略担当大臣及び細川厚生労働大臣に対して、総合的な子育て支援策を議題とした国と地方の会議の場を早急に設置するよう申し入れました。両大臣からは「地方の意見を十分お聞きするため、早急かつ真摯に対応したい」という返事をいただきました。
(2011年の課題)
  子ども手当は、むしろ、これからの1年が正念場になります。国と地方の会議の場において、我々の主張を十分に反映した総合的な子育て施策を構築することを目指すことこそ、我々の最終的な共通目標です。
地域主権関連三法案は、昨年の臨時国会でも成立しないという遺憾な結果に終わりましたが、国と地方の協議の場で、菅総理大臣は、「残念ながら臨時国会での成立に至らなかったことをお詫びし、次期通常国会の中での成立を期したい」と決意を表明しました。今後とも、早期成立に向け強く働きかけていかなければなりません。
一括交付金については、平成23年度は5120億円で都道府県分を対象としてスタートし、平成24年度に1兆円規模に増額して市町村を交付対象にする方針が発表されました。我々としては、総額の確保と自由度が高い制度となるよう、国に働きかけていかなければなりません。
  来年度の地方交付税については、対前年度比0・5兆円増の17・37兆円という額が国から示されました。同時に、地方財政の一般財源総額を前年度並みの59・5兆円確保した上で、臨時財政対策債を大幅に縮減、さらに交付税特別会計借入金を5年ぶりに償還する方針が打ち出されました。国が本格的に地方財政運営の安定化に取り組む姿勢を示した点は評価できますが、さらに地方財政への理解を深める努力をしていかなければなりません。
  昨年、全国市長会の会員数は809となりました。人口、面積、財政規模、そしてそれぞれの市が抱える課題は千差万別です。それにもかかわらず、一致団結できるのは、我々こそ市民ニーズと向き合った血の通った政策を培ってきたという自信と誇りがあるからです。その団結があるからこそ、国や国民に対して強い立場で主張できるのだと確信しています。
 全国の都市自治体の代表として、誠心誠意努力してまいる所存です。会員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、新年のごあいさつといたします。

( 市政 平成23年1月号より )