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森会長 平成22年 年頭のご挨拶(機関誌「市政」平成22年1月号より)

 

平成22年 年頭のご挨拶 

 

 

第28代 全国市長会 会長
(平成21年6月3日~ 
長岡市長   森     民  夫
 
 

 年頭に当たりまして、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 また、全国市長会の運営および諸活動につきまして、旧年中に賜りましたご理解とご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。
 1月4日に全国市長会の会員数は807になりました。それぞれの市の置かれている状況は気候や地勢をはじめ、人口、面積、財政規模から歴史や産業構造まで様々であり、抱える課題も千差万別です。しかし、全国共通の課題として急激な少子高齢社会への対応があります。我が国は、平成17年を境に世界的にも類を見ない人口減少社会へ突入しました。とりわけ、生産年齢人口の減少が大きな問題となっており、国内総生産(GDP)の成長も停滞しております。全国市長会においても昨秋、熊本市で全国都市問題会議を開催し、「人口減少社会の都市経営」をテーマに、持続可能な社会へ向けた議論を重ね、分権社会の必要性を再確認したところです。
 我々全国市長会が取り組むべき最重要課題である「地方分権改革」。申すまでもなく、これは、今までの日本の経済成長を支えた中央集権制度を見直すことであり、日本の閉塞感を打ち破る大きなパラダイムの転換と言えます。基礎自治体が地域の必要性に応じて政策の優先順位を決められるよう、財源や権限を地方に移すというのが分権の第一歩です。そして、市民力・地域力を活かした住民自治型の行政へと脱皮し、市民のニーズを受けとめて、例えば、道路か、学校か、福祉なのかという、政策の選択と集中を自ら判断していくことこそ、分権の目的だと思っております。
 第2期地方分権改革では、昨年の11月にも政府の地方分権改革推進委員会から最終の第4次勧告がなされました。しかしながら、これまでの委員会の勧告事項に対する各省庁の対応は、誠に不十分なものであります。
 振り返りますと昨年は、政権選択を最大の争点とした8月末の総選挙により、民主党を中心とした3党連立の鳩山内閣が誕生した、歴史的な年でありました。鳩山内閣は住民に一番身近な基礎自治体を重視した「地域主権」を掲げ、国全体の活力を取り戻すために、真の地方分権を確立するとしています。
 新内閣発足後、初めての「国と地方の協議の場」が昨年11月に開かれ、鳩山総理大臣をはじめ主要閣僚が出席されました。この協議の場は、いずれ法律に基づく正式な協議機関となりますが、これは地方6団体の悲願であったものです。協議の場で鳩山総理は「民主党の地域主権、決して生半可な気持ちで申し上げているわけではない。自分の政治哲学の根幹をなす大切な理念だ。」とおっしゃいました。また、その理由として「これからの日本には、市民の自主的な活動を育て真の意味での市民協働型社会を実現する必要がある。そのためには、市民に一番近い位置にいる自治体が主役になることが必要不可欠である。」と断言されました。これは、地域主権の意義を深く理解されている的を射た発言であると思います。また、新たに設置された「地域主権戦略会議」は、鳩山総理を議長とし、関係閣僚や自治体首長、有識者をメンバーに加え、改革のエンジンとして従来の仕組みそのものの変革に取り組むとのことで、大いに期待しております。
 予算編成にあたり、事業仕分けの導入は、従来のブラックボックスのような予算決定の仕組みと比べ、すべてをガラス張りにしたことへの意義は大きいと考えております。今後、国と地方の協議の中で、今回の結果が地方分権の推進に生きるような形にすることが重要だと思います。
 具体的な政策決定の過程においては、現場に即したものとなるように、引き続き強力に地方の実情を訴え提案していく必要があります。
 そこで全国市長会では、真の地方分権改革を実現するため、新内閣発足に合わせて正副会長や支部長などで構成する政策推進委員会が中心となって、主要課題への対処方針等を適宜、関係大臣に提言してきたところであります。国と地方の協議の場の早期法制化、子ども手当の支給や高校授業料の無償化は全額国庫負担、加えて、授業料の無償化では市町村を事業主体とはしない旨を強く要請してまいりました。
 一方、来年度の地方交付税が対前年度比1.1兆円増額されるとともに、臨時財政対策債と合わせた実質的な地方交付税が過去最大の24.6兆円と3.6兆円も増額されることが決定されました。極めて厳しい財政状況の中、このような地方に配慮した対策を実現された原口総務大臣をはじめとする関係各位の真摯なご尽力に深く感謝します。
 今後、地域主権推進一括法案や地域主権戦略大綱の作成、地方税制改正、補助金の一括交付金化、子ども手当の制度設計や税財源配分の見直しが迫っております。まさに今年が国と地方の新しい役割を決める重要な一年であり、我々にとりましても正念場の年となります。
 私は、昨年の6月に第28代会長に選任をいただきましたが、国と地方の関係を根本から作り直す機会に直面し、身が引き締まる思いです。年が改まりました本年も807都市の代表として、会員各位のご意見に耳を傾けながら、あらゆる場面で全国の都市の現状を訴え、力を尽くす所存であります。
 住民の幸福のための地方分権の確立、全国市長会の発展のため、皆さまの一層のご理解とご協力を切にお願い申し上げ、新年のごあいさつといたします。

( 市政 平成22年1月号より )