ページ内を移動するためのリンクです。

理事会を開催(平成16年4月14日)

 4月14日、全国都市会館において理事会を開催した。
 山出会長あいさつの後、議事に入り、鈴木事務総長から①諸会議の開催状況等、②各支部市長会議の開催予定、③新市紹介、④市長の就退任、⑤平成16年度本会海外都市行政調査団の派遣、⑥日中交流事業について報告があり、これらを了承した。
 続いて協議に入り、「真の三位一体改革の推進に関する緊急決議」(別記1)及び「介護保険制度の基本的見直しに関する意見」(別記2)について協議し、これを原案のとおり決定した。
 次に、「分権のための三位一体改革の実現-自主・自立できる都市税財政基盤の確立を目指して」をテーマにNHK解説委員の水城武彦氏をコーディネーターとして、山出会長、本禄北広島市長、阿部川崎市長、根本野田市長、江島下関市長、横浜国立大学教授の金澤史男氏、地方財政審議会委員の木村陽子氏、島根県立大学教授の田嶋義介氏によるパネルディスカッションが行われ、活発な意見交換を行った。最後に「三位一体改革の推進に関する緊急アピール」(別記3)を参加市長一同で採択した。なお、パネルディスカッションについては、自治体衛星通信機構により4月20日午後1時並びに4月26日午後12時30分から放映することとしている。
 また、理事会に先立ち、正副会長会議を開催し、会議の運営等について協議した。

 

(別 記1)
真の三位一体改革の推進に関する緊急決議

 都市自治体の財政は危機的な状況にある。
 我々は、人件費の抑制、経費の節減、事務事業の見直しなど徹底した行財政改革により歳出の削減に努めるとともに、地域の様々な課題に的確に対応し、住民生活に不可欠なサービスを確保するため懸命の努力をしてきた。
 全国市長会としては、この危機を乗り越え、税源移譲により地方税財政基盤の確立を図り、真の分権型社会を実現するため、「税源移譲と国庫補助負担金の廃止・縮減に関する緊急提言」を都市の総意としてとりまとめるなど、分権の理念に即した三位一体改革が早期に実現されるよう積極的に対処し、また、期待もしてきた。
 三位一体改革の初年度である平成16年度政府予算は、暫定措置ではあるが、基幹税である所得税の一部が所得譲与税として移譲され、本格的な税源移譲に向け一歩前進を見たが、約1兆円の国庫補助負担金の廃止・縮減額のうち税源移譲に結びつかないものが過半を占めているなど課題も多い。特に、補助金の見直しや税源移譲が不十分な中で、地方交付税等を大幅に削減するという突出した見直しが行われたことは、地方分権を推進するという三位一体改革の目的にもとるばかりか、都市の行財政運営に致命的な打撃を与えるものである。各都市の平成16年度予算編成は、従来にも増しての更なる行財政改革への努力と最後の財源ともいうべき基金の取崩しによって、ようやく危機を凌げたところであるが、来年度以降もこのような地方交付税の削減が続けば、住民の生活を守るという都市自治体の責任を果たすことが極めて困難となることは必至である。
 よって、国は三位一体改革の原点に立ち返り、国の財政再建を優先して地方に負担を押し付けるのではなく、真の地方分権を推進することを基本として、下記事項を実現するよう強く要請する。

 


1 国から地方への税源移譲は、地方分権を支えるために不可欠なものであり、地方の歳出規模と地方税収入の乖離を縮小するという観点に立ち、基幹税による税源移譲を実施し、税収が安定的で、かつ、税源の偏在性が少ない地方税体系を構築することが必要である。そのため、当面、国税対地方税の割合、1対1の実現を目指し、暫定的な措置ではなく、所得税から個人住民税、消費税から地方消費税への税源移譲を本格的に、直ちに実現すること。

2 国庫補助負担金については、生活保護をはじめ国による統一的な措置が必要なもの等、一部を除き原則廃止すること。その際、同時に基幹税による税源移譲を確実に行うとともに、国の法令等による基準を弾力化するなど国の関与を廃止・縮小し、都市自治体の自由度の拡大が図られるようにすること。

3 今回、公共事業関係の国庫補助負担金や奨励的補助金等の削減については、国が一方的に事業量の減によるものであるなどとして、その全額が税源移譲の対象とされていないが、引き続き地方が実施しなければならない事業もあり、こうした措置は、実質上国の財政再建の地方への負担転嫁であることから、確実に税源移譲すること。
 また、平成16年度予算編成に当たって、生活保護費負担金等の負担割合の引下げが提案されたが、このような補助率の引下げや補助対象の縮減など、一方的な地方への負担転嫁はあってはならないこと。

4 地方交付税については、国の財政再建を優先した一方的な総額の削減を前提とした見直しを行うのではなく、現に地方公共団体が実施している医療、福祉、教育など住民生活に不可欠な行政サービスの実態を的確に捉え、地方財政計画にこれを反映させ、必要な地方交付税総額を確保すること。その際、地方の財源不足額については、交付税率の引上げを含め、都市財政運営に支障が生ずることのないよう、万全の措置を講ずること。
 また、税源移譲に伴って地方公共団体間の財政力格差の拡大が予想されるため、税源の乏しい団体でも適切な行政運営が確保できるよう、地方交付税の機能を強化すること。

5 今後、都市自治体の行財政運営に大きな混乱を招かないためにも、三位一体改革の全体像を明らかにするとともに、年度別内容・規模などの工程表を早急に提示すること。その際は、都市自治体の意向を十分反映すること。

6 地方一般財源の大幅な減額に伴い、地域再生事業債の新設や財政健全化債の弾力的運用などの措置が講じられたところであるが、平成16年度における各都市自治体の財政運営に支障が生じないよう、個々の実情に即した措置をとること。

 以上決議する。

 

平成16年4月14日
全 国 市 長 会 

                                                                

(別 記2)
介護保険制度の基本的見直しに関する意見                                                                     

 介護保険法施行5年後の制度見直しの検討が、本年6月を目途に国の社会保障審議会介護保険部会において進められている。
 本会においては、昨年4月に介護保険制度検討小委員会を設置し、この一年間、同小委員会を中心に制度見直しに向けた検討を重ねてきた。その間、全都市を対象に書面調査を実施するとともに、昨年10月には、介護保険制度の持続的かつ安定的運営の視点に立って「介護保険制度の基本的見直しに関する意見」を取りまとめ、関係方面に提出している。
 今般、更なる意見提出を行うべく、これまで本会が要請してきた事項を含め、制度の基本的見直しについての検討を行い、下記のとおり意見を取りまとめた。
 国におかれては、本意見を尊重し、その趣旨を今後作成する制度見直し案に十分反映されるよう強く要請する。

 



1 保険財政

(1) 介護給付費負担金については、各保険者に対し給付費の25%を確実に配分し、現行の調整交付金は別枠化すること。
(2) 財政安定化基金の原資については、国及び都道府県の負担とすること。

2 低所得者対策
 国が実施している低所得者対策は、保険料及び利用料の軽減策が十分でないことから、国の制度として、財政措置を含めて総合的かつ統一的な対策を講じるよう、抜本的な見直しを行うこと。


3 保険料

(1) 現行の第1号保険料の区分については、第2段階の対象者における収入の較差が大きく、所得水準の低い者にとって負担が大きいので、住民の所得状況に応じた多段階制の採用等、よりきめ細かい保険料段階区分を設定すること。
(2) 第1号保険料については、世帯単位で比較すると所得がより少ない世帯の保険料が高くなる場合もある現状にかんがみ、不公平感が生じることのないよう、世帯概念を用いている賦課方法の在り方について更に検討すること。
(3) 第1号保険料について、保険料納付の利便性、徴収事務の効率化及び徴収率の向上を図るため、全ての年金を特別徴収の対象とすること。


4 保険者の機能強化、サービスの質の確保

(1) 同一のサービス事業者が、複数の市町村に跨って事業所を設置する例も多いことから、効率性の面も考慮し、サービス事業者に対する指定権限は、現行どおり都道府県に置くことが適当である。
 しかし、グループホームや有料老人ホーム等が介護保険事業計画の目標値を超えて急増し、保険財政を圧迫している現状もあることから、都道府県がサービス事業者を指定するに当たり、事前に保険者である市町村と協議する仕組みを確立すること。
(2) 現時点において、都道府県におけるサービス事業者に対する指導・監督が十分に行われているとは言い難いことから、その機能強化を図るとともに、サービスの質の確保、利用者保護の重要性等にかんがみ、都道府県と同程度の調査権限を保険者にも付与し、都道府県と保険者である市町村とが連携する仕組みを確立すること。
(3) 福祉用具購入・住宅改修に係る事業者については、優良な事業者の確保やサービスの質の向上を図る視点に立ち、都道府県による指定制度の採用について、小規模事業者に配慮しつつ、具体的な検討を行うこと。

5 被保険者及び給付対象者の範囲
 被保険者の年齢の範囲の拡大及び障害者施策との統合については、慎重に検討すること。

6 保険給付

(1) 在宅と施設の保険給付については、施設における居住費・食費の徴収範囲の拡大や利用者負担の引上げ等、在宅・施設両サービスの均衡を図る方策を講じること。
(2) 保険給付費の増加傾向に一定の歯止めをかけるためには、軽度要介護者に対する自立支援や重度化の防止に向けた介護予防サービスの提供を積極的に行うことが重要であることから、介護予防サービスの在り方、同サービスに係る人材の確保・育成、事業者のサービス提供体制を含め、より適切なサービスが提供されるよう検討すること。
(3) 特定疾病の範囲について、医学的見地から制度施行後の実績を踏まえ、早急に検討すること。

7 その他

(1) 有料老人ホーム等の特定施設及びグループホームの入所者に対しても住所地特例を適用すること。
(2) ケアマネジャーの中立性・公平性を更に確保するための方策について具体的な検討を行うこと。

平成16年4月14日
全 国 市 長 会 

 

 

(別 記3)
三位一体改革の推進に関する緊急アピール

 平成16年度は三位一体改革の初年度であり、真の地方自治確立のための重要な出発点であったが、政府は、地方分権改革の最大の課題である税源移譲については、極めて不十分な措置に止め、地方交付税のみを突出して削減するなど国の財政再建を優先とした三位一体改革を強行した。
 このため各都市の新年度予算は、これまで以上に徹底した行財政改革や事務事業の抜本的見直しなどにより歳出を削減するとともに、財政調整基金等の取り崩しにより、ようやく収支尻を合わせる非常事態に陥った。
 本年6月、「骨太方針2004」が示されるが、政府はこうした都市自治体の厳しい危機的な状況を十分に認識し、地方分権の理念に立った自主・自立に繋がる三位一体改革を推進されるよう、次の点を強くアピールする。

一、昨年、閣議決定した「骨太方針2003」で示された平成18年度までに3年間で概ね4兆円規模の改革を行うという方針は不十分であり、真の地方分権の確立を図るため、当面、国税対地方税の割合、1対1の実現を目指すこと。その際、個人住民税、地方消費税等の基幹税を早急に税源移譲すること。

一、国庫補助負担金の廃止に当たっては、同時に基幹税による税源移譲を確実に行うとともに、国の法令等による基準を弾力化するなど国の関与を廃止・縮小し、都市自治体の自由度の拡大を図ること。

一、地方交付税については財源調整と財源保障の両機能を強化しつつ、都市が担う行政サービスの実態を的確に反映し、必要な総額を確保することとし、一方的な削減は行わないこと。

一、三位一体改革の全体像、年度別内容・規模など改革の工程表を早急に明らかにすること。その際、都市の意向を十分に反映させること

 

 平成16年4月14日
全 国 市 長 会
パネルディスカッション参加市長一同