都市と廃棄物管理に関する調査研究報告


第3章 緊急課題への基本的対処方向
  
 本章では、現在、都市自治体が抱えている様々な課題のうち、特に緊要であると思われ、また、その根本的解決には総合的・政策的見地から検討・対応していくことが重要と考えられる、容器包装リサイクル法(「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」)、ダイオキシン及び産業廃棄物に関する3つの問題を取り上げてみたい。なお、その対処方向を示すに当たっては、都市アンケート調査結果等から見い出される都市自治体の実情や現実、さらには本報告の第1章及び第2章において指摘されている視点を踏まえつつ、将来的に制度等の枠組みの変革を求めることに主眼を置いて述べることとする。
 
1.容器包装リサイクル法への対応
 
(1)現状と課題
 @現況
 容器包装リサイクル法は、ドイツ(「包装廃棄物の回避に関する政令」)、フランス(「包装廃棄物に関する政令」)等のリサイクルシステムがEUはじめ各国に拡大しつつある趨勢を受け、一般廃棄物の減量、資源の有効利用等を目的として平成7年6月に制定された。そして、これに基づく分別収集及び再商品化が、平成9年4月より開始されている。この法律は、市町村のみが一般廃棄物に関する責任を負うといった従来の仕組みを改め、消費者、市町村、事業者の役割・責任を明記し、分担と協力の仕組みを築き上げた点で、協働を基調にした循環型社会実現への大きな前進とされている。しかし、都市アンケート調査(設問11参照)によれば、この法律・制度を積極的に評価する都市自治体は5%に過ぎず、大半の都市自治体は、何らかの制度の改善や大幅な見直しを望んでいるのが実情である。
 
A課題
 都市アンケート調査(設問10参照)を用いて、都市自治体で現出している主な問題からこのシステムの課題的特徴・要素を探れば、大きく次のように整理できる。
 第1に、「分別収集」「選別・保管」に要するコストが過大なことである(回答率はそれぞれ63.4%、60.5%。以下、%の数値は回答率を示す。)。容器包装廃棄物の排出からリサイクルまでの、分別収集、選別・保管、再商品化までの3段階のうち、市町村の義務とされる分別収集から選別・保管までで、一般にトータルコストの7〜8割を占めるといわれている。わが国では、これらの費用負担が事業者に一切転嫁されていない。すなわち、事業者においては如何なる製品を製造し、又は容器包装を利用しようとも、その負担はトータルコストの2〜3割に過ぎず、また再商品化に要する費用は最終的に消費者へ転嫁されることが多いため、生産・流通段階でのリターナブル化や過剰包装の自粛など、事業者に与える発生抑制のインセンティブが働きにくくなっている。
 第2に、指定法人に再商品化を委託することで、かえって処理費用の増大をもたらしている自治体がある(26.6%)。これは、特定の中小事業者等の再商品化義務が猶予又は適用除外され、その負担が市町村に求められていることが大きな要因だが、法律に基づいたルートを選択することで不経済な面があることを指摘する回答である。また、法律では、空き缶類、紙パックについては有償又は無償での譲渡が明らかであると想定し、事業者の引き取り義務を課していないが、実際には市場で逆有償も起きている(それぞれ10.5%、7.8%)。こうした実態や将来的不安から、分別収集計画の策定に消極的な自治体、指定法人を介さずに独自に売却、処理、再生等を行う自治体も少なくない。
 第3に、平成12年度から新たに対象となる、プラスチックや紙容器の分別収集が困難とする都市自治体が、3分の1に上る(36.5%)。これは、分別基準がまだ示されていないためもあるが、現行品目の分別基準自体が自治体にとって極めて厳しく、実情に合わないものであること(19.6%)、その上でこれらの分別収集を実施することは一層の業務量、財政負担を伴うものであること、包括的な分類であるだけ容器包装適否の判断が難しい面をもっていることなど、様々な問題に起因しており、都市自治体の苦悩と限界が表明されていると言える。
 第4に、消費者(市民)には分別排出という基本的な役割しか課せられていないにも関わらず、市民の十分な協力が得られていない(22.1%)。別言すれば、より協力を得るためには、容器包装の発生抑制・排出抑制に果たす市民の役割を一層明確化するとともに、市民が日常生活の中で意識せざるを得ないような施策を行政が効果的・戦略的に講じていくことが求められていると言える。
 
(2)対応方向
 @容器包装リサイクル法の見直し
容器包装リサイクル法の真価が問われるのは、法律が全面施行となる平成12年度からであり、評価には慎重を期さざるを得ないが、国においては前述した問題、課題等を踏まえつつ、少なくとも現段階から法制度の改善に向け、検討を進める必要がある。検討に当たっての視点・留意点として、(ア)容器包装の発生抑制・排出抑制に効果的な制度とすること、(イ)自治体の責任範囲を軽減し、事業者による回収チャネルを拡大すること、(ウ)適切な費用負担の仕組みを取り入れることにより、新たなリサイクルシステムや費用負担制度を確立するべきである。もちろんその際は、課徴金・税等の新たな経済的手法の導入についても、併せて検討する必要がある。
 元来、法律で掲げた容器包装廃棄物は、再生利用、再商品化を前提とした資源物・有価物であり、最終的に処分されることを想定した一般の廃棄物とは、性質的・性格的に異なるものである。そもそも、自治体がその回収、選別等を行わねばならないものであろうか。また、実績や効率性を考慮して、これらが自治体に委ねられたにしても、処理と費用負担の主体は同一である必要はなく、別の次元で検討されるべきであろう。事業者には、市場原理の活用により、社会経済的なトータルコストの低減が図られるよう十分な発生源管理のインセンティブを与え、一方、市民も、そこから生ずる製品価格への内部化等により、消費者・排出者として応分の責任を負うことで意識の転換が図られるような、費用負担制度が早期に確立されることが重要である。さらに、再商品化義務の猶予・適用除外事業者に係わる財政負担についても、制度の趣旨に鑑みれば、その費用は国で全額措置することが必要である。
 大阪市では、ペットボトル等について、事業者による店頭回収、運搬、再商品化のシステムを独自に試みている。処理、費用負担の面で事業者に協力を求めるこうした例は、今後も注目を集めるものであり、併せて、消費者にも応分の責任・負担を求めるという点では、現在立法化が進められている家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)案の精神とも適合させていくことが望まれる。
 
A安定した再生資源市場の確立
 製造者には、ごみにならないか、少なくともリサイクル可能な商品の開発が求められる。さらには、リサイクルを促進するためにも、安定した再生資源市場の確立が望まれる。
 そのためには、ごみにならない分別基準適合物等の譲渡価格の引き上げ、市場価格の安定化が図られる必要があり、それによって資源が安定的に回収され、円滑に循環・流通する仕組みを市場につくり出すことが不可欠である。また、再生資源市場の拡大・活性化、効率的な資源回収・再資源化ルートの確立等に向けて、市民・事業者・行政がそれぞれの立場から積極的に取り組む必要がある。身近な例では、地域活動としての市民による集団回収、事業者による店頭等での自主回収、再生紙をはじめとした再生製品の使用など様々なものがあるが、こうした地道な取り組みから始めることが大切である。
また、フランスでは、事業者の「最低引き取り価格」を定めている。現在のわが国では、ここまでの行政介入は市場の混乱を及ぼしかねない面もあるが、採算が維持可能で強固な市場が確立された段階では、市町村の財政負担の軽減等に効果のあるものである。国は、他に与える影響を十分考慮しつつ、譲渡価格等への支援策について検討を行うべきである。
併せて、回収された分別基準適合物が、何にどう利用・再商品化されるかも重要である。資源の有効利用、環境負荷等の面からは、再利用に次ぐものとしてマテリアル・リサイクル(物質から物質への再生)を極力追求する必要があるが、特に紙製品などは、現在のリサイクルシステムでは対応できにくくなっている状況にある。事業者、業界団体はリサイクルのプライオリティ(優先順位)を踏まえつつ、技術水準の向上や他用途・多用途利用の開発等に努め、国はそれを支援し、促進させる法制度の整備、条件整備を進める必要がある。
 
 
2.ダイオキシン問題への対応
 
(1)現状と課題
 @現況
 わが国のダイオキシン類総排出量の8〜9割は、ごみ焼却炉によるものとされている。また、都市アンケート調査(設問22参照)によれば、焼却施設の設備面、技術面での改良・改善課題として、ダイオキシン類等の発生抑制を挙げる市は8割にも及んでおり、焼却施設から排出されるダイオキシン類の削減は、昨今の廃棄物行政の喫緊の課題となっている。
その主な原因としては、構造的にその抑制技術・能力を持たない小規模で老朽化した施設が多いことが、一般に指摘されている。現に、都市自治体が自ら又は共同で所有する焼却施設の規模は、処理能力100t/日に満たないものが4割を占め、また、供用開始から10年以上経過した施設が6割を超えている(都市アンケート調査:設問21−2(4)及び(5)参照)。
こうした状況のもと、都市自治体は、厚生省によるダイオキシン類発生防止に係わる新ガイドラインの策定(平成9年1月)、大気汚染防止法の政令改正・廃掃法の政省令改正(平成9年8月)等を受け、新設炉における基準値への適合に加え、既設炉の場合も大規模な改造や構造・維持管理の強化、さらには小規模な施設の大規模全連続炉への集約化等を求められている。
 
A取り組み動向
ダイオキシン対策として、あるいはその一環として、国、都道府県、都市自治体では様々な取り組みを進めている。国では、高度処理や集約化の促進、固形燃料化(RDF)施設の普及促進等に重点を置いた廃棄物処理施設の整備について、予算の拡充を図るとともに、環境保全対策等の強化に努めている。また、平成10年度からは、国庫補助対象外となる小規模施設の建設に対し、地方財政措置が講じられることとなっている。
 他方、自治体においても、県立・市町村立学校をはじめ公共施設の小型焼却炉を廃止する方針を相次いで打ち出しているほか、都道府県では、広域化計画の策定、検討委員会等の設置、発生源対策や環境対策等の施策の総合化、法を上回る独自基準の設定、市町村の施設整備に対する独自の助成措置等の方策が講じられている。また、都市自治体においてもこれらの要請に応えつつ、施設の構造強化等を進めるとともに、固形燃料化、ガス化溶融等の新しい処理システムの導入にも強い関心を示し、検討を進めている(都市アンケート調査:設問23参照)。一部には、ダイオキシンに関する専門組織や対策本部の設置、ダイオキシン規制条例の制定、ダイオキシンの主な発生源とされるプラスチック類全ての分別収集等を行う自治体もある。
 
B課題
しかし、ダイオキシン問題が益々深刻化し、その対策の徹底を迫られる中で、都市自治体においては、とりわけ施設改修等の整備に伴う財政負担が廃棄物処理事業経費の増大を招き、自治体財政の大きな逼迫要因となっている。先に述べたように、全国自治体における、ごみ処理事業経費、とりわけ建設改良費がこの数年間で急速に増大している状況にあって、国、都道府県からの財政支援措置も強化されているが、都市自治体等にとって十分な状況にはない。
 また、国の構想する大型炉への集約化についても、処理面積、人口密度、受け入れ地域住民のコンセンサス、既存あるいは整備中の施設の取り扱い等の問題があり、広域化計画の策定に難航する地域も少なくない。法令による規制、構想どおりに一連の計画が順調に進めば、数年後には、ダイオキシン類の総排出量の大半が削減可能と予測されているが、一方では、自治体の行政運営に少なからず影響を及ぼす恐れのある問題も山積しており、基本に返って、ダイオキシン類を根源から絶つという発想に立った検討を併せ進めることも必要ではなかろうか。
 
(2)対応方向
 @事業者責任等の強化・明確化
ダイオキシン問題の責任を川下である焼却施設にのみ転嫁し、その対策として操業停止・改修・大規模広域化等を求めるのは、当面の緊急指導としては理解されるものの、本来的な解決にはあたらないのではないかと考えられる。本来的には、国は、発生メカニズムの解明を急ぎ、かつてPCBやフロン等にとった対応策と同様、事業者責任を明らかにすることが重要であり、その主な発生原因とされる塩化ビニール等塩素含有物質の製造・使用の規制、又は流通段階で製品にそうした物質を使用していることの表示を義務づけるなどの措置を、川上でまず講じるべきであろう。国際的にも、ダイオキシン類やPCB等による環境汚染を未然に防止するため、有害化学物質の生産や使用規制に対する国際的枠組みづくりが、緊急に要請されているところであり、真剣な対応が望まれる。
 また、いずれの場合においても、消費者の意識を高めることはもとより、ごみ排出時における徹底的な分別を促すシステムを併せて開発、考案していくことが大切である。もちろん、これには、分別収集の強化や具体的な行動計画等の策定など、都市自治体の果たすべき役割も大きいが、ダイオキシン対策を専ら自治体のみに担わせるのでなく、国の主導のもと、生産事業者・流通事業者・市民等も自らの問題と認識し、総力を上げて取り組むことが必要である。
 
Aそのうえでの川下対応
企業責任、市民の分別等を徹底した上で、なおダイオキシン類の排出抑制が川下においても課題となる場合にあっては、国は、現行の廃棄物処理や施設規模の実態、高度処理の必要性等を考慮しつつ、特に小規模施設でのダイオキシン類削減技術や高度な焼却技術の研究・開発、固形燃料化をはじめ新たな処理システムに係わる研究・開発とその促進方策の検討、ダイオキシン類の測定基準や測定方法の明確化等に努めるとともに、施設・設備の種類、規模に関わりなく十分な財政支援措置を講ずる必要がある。もとより、廃棄物処理施設の整備は、廃棄物に係わる諸問題の噴出、深刻化等が進む今日において、社会資本整備、公共投資の中核と位置付けられるべきものであり、国による支援措置等の強化は益々重要な課題となる。併せて、焼却施設の大規模広域化が困難な地域に対しては、適切な配慮が払われなければならない。
 また、廃棄物の種類や規模が多岐にわたる産業廃棄物焼却施設に対しては、国は都道府県と連携し、一般廃棄物以上に周知・指導の徹底を図り、種別に応じ、具体的な改善方策を示すことが大切である。特に、規制対象外とされる小型炉への転換やその林立等が行われることのないよう、必要な場合には規制対象範囲の見直しなど規制の一層の強化を検討するとともに、今後は、市町村に与える影響、一般廃棄物焼却施設の取り扱い等を十分考慮した上で、ゾーニング等による立地規制の必要性についても検討の余地が出てこよう。
 一方、都市自治体においても、市民の健康、安全性の確保を旨とし、都道府県、近隣自治体等との連携・協力のもとに、責任と主体性ある抑制方策や処理方式の確立を目指すことが求められる。なお、その際、焼却施設の改築、新設等を要する場合は、環境アセスメントの実施や市民との合意形成に係る参加手続きの整備とともに、施設の複合化、エネルギーの有効利用、周辺環境整備等による地域住民からのマイナスイメージの払拭に努めることが重要である。さらに、広域処理を図る場合にあっては、自治体相互間での分別区分形態等の調整を行うことも大切である。
 
3.産業廃棄物への対応
 
(1)現状と課題
 
  • @

    産業廃棄物の総排出量は、厚生省の「全国の産業廃棄物の排出及び処理状況」調査結果によれば、ここ数年横ばいの状況にある。その内訳を見ると、汚泥・動物のふん尿・建設廃材が全体の約8割を占め、汚泥が増加の傾向にある。その一方で、中間処理による産業廃棄物の減量化率及びリサイクル率は、一部の業種で進展が見られるものの、全体的には伸び悩んでおり、減量化・リサイクルは停滞している。
    このような状況の中にあって、最終処分場の新規立地は、安全性への懸念等を背景に、ますます困難な様相を見せている。しかも最終処分場の残余容量が、同調査結果によると、平成7年4月現在全国平均では約2.6年分、もっとも逼迫している首都圏においては1年を切る(0.9年分)という厳しい状況にあることから、従来どおりに最終処分を続けていくことは難しいといえる。
    また、産業廃棄物は、その処理が基本的には商行為であることに加え、処理施設等の不足も要因となり、広域移動して処理処分されていることから、生ずる問題に地域差(排出する側と処分する側)がある。その中にあって、不法投棄は全国的に深刻な問題となっており、都市アンケート調査(設問39参照)においても、約4割の都市自治体で、不法投棄の処分に困り、監視が行き届かないとの結果を得ている。
     
    A取り組み動向
    産業廃棄物の問題は複雑多岐にわたるが、国や自治体では、適正処理の確保のために様々な取り組みが行われている。国では、平成9年6月の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正以降、施設設置の手続の明確化やマニフェスト制度の拡充などを図り、産業廃棄物への規制を強化しつつある。
    一方、自治体では、建設業者に産業廃棄物量の事前予測・評価など義務づける廃棄物アセスメント制度の導入や、リサイクル業者にコンピューターで産業廃棄物の情報を仲介することなどにより、減量化・リサイクルの促進に力を入れている。さらに、大きな問題となっている不法投棄対策の強化のため、警察より行政の廃棄物問題担当課へ職員を派遣し、緊密な連携をとっている事例や、条例等を制定し、産業廃棄物搬入や不法投棄を抑止する施策を実施している事例がある。
     
    B課 題
    このように様々な対応がとられているが、主要な課題を整理すると、中間処理や最終処分については、既存の施設だけでは対応できなくなることは明らかであり、安易に産業廃棄物として排出し、従来からの焼却及び埋立に依存する処理処分自体を見直していかなくてはならない。また、不法投棄の防止策を強化する一方で、経済的理由やモラル等により不法投棄が起こりがちであるという特徴に着目した対策を講じていく必要がある。もっとも、現在の産業廃棄物の発生から処分において様々な問題が噴出していることを考えると、処理システムそのものの抜本的改善を検討する時期にきていると思われる。また、産業廃棄物に関する権限をほとんど持たない都市自治体は、市民の生活環境を保全する責務を果たすため、どのように関与していくべきかを見極めていかなくてはならない。
     
    (2)対応方向
     
    @減量化・リサイクルの促進と排出者責任の徹底
    国及び自治体は、産業廃棄物の適正処理のために、処理施設の確保や規制及び不法投棄の監視体制の強化等をさらに推進していくことが重要である。加えて、産業活動等において各工程での不要物の発生を抑制し、発生が回避できないものは可能な限りリサイクルに努めることを事業者にさらに求めていくべきであり、特に、汚泥や建設廃材のように再利用率が低く最終処分量が多いものについては、再利用を促進していくことが必要である。国及び自治体自身にあっても、公共工事の建設廃材から再生された材料を道路建設用資材として再利用することなど、産業廃棄物の減量化・リサイクルに関し、積極的に取り組んでいかなくてはならない。
    それでも廃棄物として処理を要する際には、「処理コストの適正な負担」と「排出者責任の徹底」が必要となる。産業廃棄物は、経済活動の中で処理されるため、排出者が適正処理に必要な費用を負担し、またその責任において、適正に処理処分されることを常に確認する体制を取らなくてはならない。なお、不法投棄の約9割が建設廃材であり、うち公共事業関連の比率が半数を超える状況から、建築業者の排出者責任の徹底を期するため、処分確認のための方策を講じることが、国及び自治体の責務ではないか。
     
    A産業廃棄物に関する都市政策
    これまでに都市自治体は、地域の事情に応じ、要綱等により産業廃棄物処理施設の設置手続を定めてきた。今回の廃掃法改正等によって、関係住民や都市自治体の意見聴取や生活環境影響調査の義務づけなどが明確に定められたものの、住民との最終的合意や立地場所についての規制は十分ではない。したがって、地域の生活環境の保全や立地に関わる紛争を減らすために、都市自治体では別の角度からの対応を考えなければならない。そこで、総合的な都市整備を踏まえた都市政策の中に、環境あるいは廃棄物処理の施策を位置づけていくべきである。すなわち、施設の立地や土地利用を都市計画や土地利用計画に組み込み、ゾーニングによる規制により、廃棄物と共生するまちづくりを進めていく必要がある。そして、将来的には、産業廃棄物処理に対する都市自治体を含めた行政の関与のあり方を検討することが求められよう。
    さらに、円滑な廃棄物処理の実現には、これらの都市政策に加えて、国の役割を明確にしていくべきである。産業廃棄物の適正処理や広域処理のためには、国の統一的な運用による廃棄物の管理が不可欠であり、国家的視野に基づくナショナルポリシーによる実現を訴えていくことが必要となる。
     
    B産業廃棄物処理システムの抜本的見直し
    現在の産業廃棄物対策は、廃棄物となった後の処理処分を中心としたものにとどまっており、一般廃棄物と同様に、生産・流通段階及び消費段階からの対応へと転換していくことが望まれる。
    また、産業廃棄物の減量化や適正処理については、国や自治体あるいは産業界において様々な対策が採られているものの、個別的な取り組みとなっている。廃棄物政策の今日的課題である「資源循環型」の産業構造あるいは社会経済システムの実現を目指すためにも、各分野の制度や施策を総合化した、包括的なしくみを構築することが必要であろう。
    そこで、根源的課題である廃棄物の定義や処理責任の区分の見直しに着手することが求められる。そもそも、現在の廃棄物処理の根幹である廃棄物の定義では、同じものであっても排出源により一般廃棄物と産業廃棄物に区分されていることから、時には処理主体・責任が不明確になり、問題が生じている。また、リサイクルを行うにあたり経済的非効率を招き、その進展を妨げる要因になるとの指摘もある。
    したがって、排出源に基づく区分ではなく、適正処理・リサイクルに即した廃棄物の定義や責任区分等を検討していくべきであろう。ただし、その際の処理費用の負担については、汚染者・排出者負担の原則(PPP)が貫徹されることが重要であり、この原則の上に、環境保全を旨とした国及び自治体の廃棄物処理への積極的な関与が望まれる。これらの取り組みから、将来的に廃棄物管理システムの再構築の必要が生じてこよう。


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