理事会決定(H23.4.6)


 

 

 


東日本大震災に関する緊急決議

 

 3月11日に発生した我が国観測史上最大のマグニチュード9.0という東北地方太平洋沖地震とその後に襲った大津波は、東北地方から関東地方にかけての広域にわたり、沿岸部を中心に多数の死傷者や行方不明者を出し、各地に甚大な被害をもたらした。
 家屋や田畑も一瞬にして津波に飲み込まれ、集落や市街地は消失し、大規模な地盤沈下を引き起こし、道路・橋梁、鉄道、港湾・漁港・空港、上下水道・ガス・電気等の生活産業基盤等に想像を絶する損害をもたらした。
 被災地においては、懸命の救援・救助活動が行われており、全国各地から続々と支援の手が差し伸べられているが、いまだ生活必需品や医薬品、ガソリン・軽油・重油・灯油等の物資や要員は絶対的に不足しており、大変厳しい避難生活を強いられている状況である。
 これら地震・津波という自然災害による未曾有の被害に加え、東京電力福島第一原子力発電所においては、放射性物質の放出により初めて原子力緊急事態宣言が発せられ、避難指示、屋内退避指示や自主避難要請により県外への避難や町を挙げての集団避難も行われ、さらには放射性物質により農畜産物の出荷や水道水の使用が制限されるなど、一向に事態が収束する兆しも見えず、誠に憂慮すべき事態となっている。
 さらには計画停電により、首都圏等の社会経済活動にも甚大かつ長期的な影響を与えており、我が国全体の経済活動の停滞が懸念されている。
 このように、今回の災害は、大地震・大津波による広域的かつ甚大な自然災害と、これに起因する原子力災害が加わった大規模広域複合災害であり、現行の災害対策法制の想定をはるかに超えており、国が全力を挙げて取り組むべき国家的危機となっている。
 よって、国においては、こうした被害の実態を直視し、国家的危機管理として、下記事項について、既存の法制等にとらわれることなく、迅速かつ万全の措置を講じるよう強く要請する。

 

1 地震・津波災害に対する緊急対策


(1)被災者に対する支援の強化
行方不明者の捜索に全力を挙げるとともに、不便な避難生活をおくる膨大な避難を余儀なくされている住民に対する支援を強化するため、次の措置を講じること。

 


@ 避難生活に必要な水・食料、衣類・寝具などの物資やこれらを調達し配給する要員及び通信連絡手段の確保


A 医師・看護師等の医療スタッフと医薬品の確保


B 高齢者や障害者、傷病者、妊産婦、子どもなどに対する健康管理と精神的ケアの充実


C 感染症予防をはじめとする生活環境・衛生対策の充実


D 輸送用、暖房用、自家発電用、災害復興作業用等のガソリン・軽油・重油・灯油等の確保


E 応急仮設住宅の早期供給


F 福祉避難所開設期間の延長


G 被災した社会福祉施設等から他施設に避難している障害者や高齢者に対する支援の充実確保

(2)ライフラインをはじめとする生活産業基盤の早期復旧・復興
 電気・ガス・上下水道、道路・橋梁、鉄道、通信等のライフライン施設の早期復旧及び港湾・漁港・空港等の公共土木施設、医療施設、福祉施設、文教施設、農林水産業基盤、工場・石油コンビナート等の生産基盤等の早期復旧・復興を図るとともに、国による全面的な財政支援措置を講じること。

(3)被災者の生活再建、農林水産業・中小企業等の経営再建に対する支援
 被災者の生活再建、農林水産業や中小企業等の経営再建等のため、以下のとおり思い切った抜本的な支援措置を講じること。

 


@ 被災者の生活再建、農林水産業や中小企業等の経営再建等のため、既存の法制等にとらわれず、国家的危機管理の観点から、国による思い切った財政支援や税制金融上の措置を講じること。


A 災害救助法、被災者生活再建制度を抜本的に見直して被災者支援措置を大幅に拡充し、非住宅(工場、店舗、倉庫、作業場等)等の私有財産もその対象とすること。


B 地震等による原材料の供給途絶等により生産流通活動に支障を生じている農林水産業者・畜産業者や中小企業者等に対して財政支援措置を講じること。


C 被災者等に対する生活支援の観点から、万全の雇用対策を講じること。


D 離島が甚大な被害を被ったうえ、交通手段が途絶し、孤立状態にあることから、離島に対する災害復興支援について、特段の支援措置を講じること。

(4) 災害廃棄物の処理
 被災住民への物資の輸送や被災地域の復旧・復興が迅速に行うことができるよう、被災地全体に散乱するがれきや車両・船舶などの災害廃棄物を早急に撤去するため、国の責任において広域的な処理体制を確立するとともに、財産権等に関する特例措置等の弾力的運用を図るほか、処理費用については全額国で負担すること。

 

2 被災自治体及び支援を行う自治体に対する国による全面的な財政支援

@ 被災自治体に対して、地域の実情に応じて適時適切な復旧・復興対策を臨機応変に講じることができるよう、これらに要する経費に包括的に充てることができる特別の交付金を創設すること。
また、普通交付税・特別交付税を早急かつ重点的に配分するとともに、増大する財政需要に対応した別枠での地方交付税総額の増額を図ること。


A 被災自治体に人的・物的な災害支援を行っている自治体や避難を余儀なくされている住民を受け入れている自治体に対して、国の負担で思い切った財政措置を講じること。


3 災害復旧・復興のための特別法の制定


 今回の地震・津波災害は、東北地方から関東地方にかけての広域にわたり壊滅的な被害をもたらし、我が国の社会経済に深刻かつ長期的な影響を与える大災害であり、その迅速な復興再生は我が国の経済社会の再生にとって不可欠である。
 よって、国家的危機管理と地域再生の観点から、被災者の生活再建、被災産業の経営再建、社会生活産業全般にわたる基盤整備、また復興再生の主体となる被災自治体に対する行財政上の支援措置等全般にわたり、国を挙げて迅速かつ集中的に取り組むため、わが国の英知を結集しつつ、地域の特性と主体性を生かした総合的かつ包括的な特別法を制定すること。
 特別法の制定に当たっては、特に次の事項を盛り込むこと。

 


@ 地域の再生復興を迅速かつ総合的に行うためには、地域の特性を生かしつつ地域が主体となって職住機能や防災機能に優れた総合的なまちづくり・地域づくりを進める必要がある。そこで個別事業を積み上げる縦割的発想を排し、地域が連携しながら一体となって主体的に地域全体の将来像や土地利用の在り方等を考える仕組みを構築するとともに、その事業実施に当たっては国は全面的な行財政上の支援を講じること。


A 復興再生を担う自治体が、地域の実情に応じて弾力的かつ迅速に事業執行ができるよう、柔軟で弾力的かつ包括的な復旧・復興交付金の創設など財政上の支援制度を構築すること。


B 被災者の生活再建や農林水産業、中小企業等の経営再建に十分な資金を提供できる新たな基金を国により創設するとともに、住宅に限らず、生産施設設備等の私有財産も含め支援対象とし、迅速かつ総合的な復興再生を図ること。


C ライフライン施設、公共土木施設、公共施設、市街地や農地等の生活産業基盤の復旧・復興は、我が国社会経済の再生に直結するものであり、その再生を迅速かつ公平に行うため、規制の緩和措置や所有権等の私権の調整の特例等を含め、円滑な事業実施ができるようにすること。

 平成23年4月6日

全 国 市 長 会