第72回全国市長会議 決議



都市税財源の充実確保に関する決議


 地方財政は、長引く景気低迷による税収の停滞や国の景気対策による公共事業の実施等によって巨額の財源不足が連続する状態の下、本年度は昨年の二倍を超える赤字地方債の発行を余儀なくされるなど、まさに構造的な危機状況に陥っている。
 都市自治体は、このような状況の下、本格的な少子高齢社会に備えた福祉基盤の整備、国民健康保険や介護保険の運営、廃棄物・リサイクル対策、広範な社会資本の整備、中心市街地の活性化、地域経済対策、IT革命への対応など住民生活に直結する数々の行政需要に対処するため、一層の行財政改革を進めながら、自主的な財源の確保に努めているが、主要な自主財源である地方税、地方交付税を国が決定するという現行の仕組みの下では自ずと限界があり、各都市自治体の努力だけでは、このような危機的状況を打開することは困難である。
 全国市長会は、これまでも重ねて国から地方への税源移譲や地方交付税所要総額の確保等を要請してきたが、未だ十分な成果は得られていない。住民生活に直結する行政を担当する都市自治体がその責任を十分に果たしていくためには、都市自治行政の実態に見合った安定的な税財源の確保が是非とも必要である。
 このような中、片山総務大臣から、「自助と自律」にふさわしい歳入基盤の確立に向けた「地方財政の構造改革と税源移譲について」の試案が示され、税源移譲の議論が本格化しつつあるが、更にその実現への道筋を明確にする必要がある。
 よって、国においては、このような状況を十分認識し、下記事項について適切な措置を講じられるよう強く要請する。



    1.地方分権の進展に伴う都市自治体の役割の高まりを視野に入れつつ、地方の歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、所得税から個人住民税への、また、消費税から地方消費税への税源移譲等、抜本的な税制改正を早期に進め、都市税源の充実強化を図ること。

    2. 法定5税分の地方交付税が著しく不足する状態が続いているため、膨大な地方交付税特別会計の借入れに加えて、多額の赤字地方債を発行する事態となっているので、地方交付税率の引上げ等により、地方交付税の所要総額を安定的に確保すること。
     また、地方交付税制度の見直しに当たっては、激変緩和等所要の措置を講じるなど、財政運営に支障を来たさないよう措置するとともに、各都市の地方交付税の算定に当たっては、その実情を的確に反映させること。

    3.地方債資金については、長期・低利の良質な公的資金の安定的確保を図ること。特に、政府保証制度を活用した公営企業金融公庫による低利の資金供給は引き続き確保すること。
     なお、政府系資金の繰上償還については、これまでも一部措置がなされているが、更に拡充した措置を講じることなどにより、公債費負担を軽減し、財政の健全性の確保を図ること。

    4.都市自治体では、指定金融機関の指定や中小企業等への制度融資に係る預託等に当たっては、地域経済対策の一環として地元金融機関を選択し、公金の保管等に努めている。
     したがって、ペイオフの全面解禁に当たっては、収納代理機関等における公金の収納金を含む地方公共団体の公金預金の公益性にかんがみ、金融機関の健全性を確保することはもとより、金融機関の経営状況の把握に不可欠な情報の開示の徹底等を進めるとともに、このような都市自治体の置かれている現状について十分に配慮し、各都市自治体の行政執行に支障が生じることのないよう適切な措置を講じること。

 以上決議する。
 平成14年6月6日
第72回全国市長会議