第81回全国市長会議 決議



真の分権型社会の実現を求める決議

 先般、本会をはじめ地方六団体が、再三にわたってその早期成立を強く求めてきた「国と地方の協議の場に関する法律」など3法が成立した。
 国と地方の協議の場は、国と地方が対等の立場で協議を行い、国・地方を通じて真に効果的な施策を進めていくうえで極めて重要なものであるとともに、第1次一括法において義務付け・枠付けの見直しが行われたことは、真の分権型社会の実現への第一歩であると考える。
 しかし、基礎自治体への権限移譲等を盛り込んだ第2次一括法案は未だ成立しておらず、また、本会が都市自治体における支障事例に基づき提言した事項、地方分権改革推進委員会の勧告事項に係る権限移譲や義務付け・枠付けの見直し、さらには地方が担う事務と責任に見合う税財源配分等の多くの事項が残されている。
 一方、少子高齢社会の重要課題である「社会保障の機能強化」とそれを支える「財政の健全化」に向けた検討が並行して行われており、消費税を含む税制の抜本的な改革について、本年度中に必要な法制上の措置を講じることとされている。
 都市自治体は、年金を除く社会保障給付の多くを担っており、社会保障関係費に係る地方負担の今後の伸びや国・都道府県から基礎自治体への権限移譲の動向を踏まえれば、住民へのサービスを支え、雇用、育児、老後など住民の暮らしの不安を解消できるよう、早急に地方税財政制度を充実強化することが必要である。
 このため、住民生活や地方に関わる事項の制度設計や政策の具体化に際しては、国と地方の協議の場を実効あるものとして運営し、真摯に協議を行うとともに、住民に最も身近な都市自治体の意見に基づき、地域の自主性及び自立性を高めるための改革を強力に推進することが必要である。
 よって、政府においては、真の分権型社会の実現を図るため、下記事項を実現するよう強く要請する。

1.地方の自立に繋がる行政面での改革


(1)第2次一括法案の早期成立
 真の分権型社会を実現するための改革を着実に推進する観点から、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(第2次一括法案)の早期成立を図ること。

(2)都市自治体への権限移譲の推進

 国と都道府県・市町村の役割分担を明確にし、「基礎自治体優先の原則」、「補完性・近接性の原理」に基づき、第2次一括法案に盛り込まれた事項にとどまることなく、総合行政主体としての都市自治体に対して、地方分権改革推進委員会の勧告を上回る制度単位での包括的な権限を移譲し、都市自治体が総合的、一体的に事務事業を実施できるようにするとともに、移譲された事務を円滑に実施するため必要となる財源の確保と専門的な人材育成等の仕組みを構築すること。

(3)義務付け・枠付けの廃止・縮小と条例制定権の拡大
 都市自治体の自主性の強化及び条例制定権の拡大を図る見地から、法令による義務付け・枠付けについては、第1次一括法及び第2次一括法案に盛り込まれた事項にとどまることなく、地方分権改革推進委員会の勧告に沿って廃止を原則とした見直しを行うこと。
  また、都市自治体が条例化等に向けて参酌・検討等が行えるよう、十分な時間的余裕の確保や情報提供など適切な措置を講じること。

(4)国と地方の協議の場の実効ある運営
 真の分権型社会の実現、地方財政対策、東日本大震災の復旧・復興、社会保障と税の一体改革など、早急に国と地方で協議しなければならない課題は山積していることから、先般法制化された「国と地方の協議の場」において、十分に協議を行うこと。
 また、具体的な事項の協議に当たっては、地方からの意見を制度設計等に的確に反映することができるよう、国はあらかじめ十分な時間的余裕を持って提案を行うとともに、分科会等の積極的な活用を図ること。

2.住民自治を可能とする地方税財政制度の構築


(1)地方税財源の充実強化

 

 
@ 地方が担う事務と責任に見合う税財源配分を基本とし、当面、税源移譲による国・地方の税源配分「5:5」の実現を図ることにより、地方の財政自主権を拡充すること。


A 福祉・医療・教育・消防など市民生活に直結する行政サービスを提供している総合行政主体である都市自治体の財政需要の急増と多様化に的確に対応できるよう、一般財源を充実確保する観点から、地方消費税の拡充など税源の偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系を構築すること。

(2)地方交付税総額の確保と法定率の引上げ


@ 都市自治体が直面している福祉、医療、子育て等社会保障、教育・安全などの経常的行政サービスや道路・橋梁、学校等の改修費用など避けることができない財政需要の増嵩を的確に地方財政計画に反映させ、必要な地方交付税総額を確保し、地方交付税の持つ財源調整・財源保障機能の強化を図ること。


A 恒常的な地方交付税の財源不足については、臨時財政対策債によることなく、法定率の引上げ等により対応するとともに、地方自治体の固有財源である「地方交付税」を特会直入とする「地方共有税」を創設すること。


(3)市町村の自由裁量拡大に寄与する地域自主戦略交付金の制度設計

 市町村向けの国庫補助金等の地域自主戦略交付金化に当たっては、市町村の自由裁量拡大に寄与しない義務的な国庫補助金等は対象外とし、従来の国庫補助金等の総額を縮減することなく必要額を確保すること。
 また、配分については、継続事業や団体間・年度間の事業費の変動、条件不利地域等に配慮するとともに、地方交付税制度との整合性に留意し、予算編成等に支障が生じることのないよう、交付額を早期に明示すること。
 なお、具体の制度設計については、先行して実施された都道府県分の運用状況等を踏まえ、国と地方の協議の場等で市町村と十分協議し、合意形成を図ること。

 

 以上決議する。

 平成23年6月8日

全 国 市 長 会